第423話 ランチ


 設計局を後にした俺たちは、その後、昼食をとることになる。


「♪~」

 上機嫌に鼻歌を歌いながら、トリスティアは山盛りの魚介類を口に運ぶ。


「トリスティア、いくら何でも食い過ぎだろう」

「えー。いいじゃん、別に~。だって食べ放題なんだからさ」

「そりゃそうだが・・・・・・」

「それに、わたしだけじゃなくって、みんなよく食べているでしょ?」


 トリスティアは室内にいるグレートパーティメンバーを指し示す。


 確かに、トリスティアほどじゃないにせよ、皆そこそこの分量を食べている。


 そもそも俺たちグレートパーティメンバーは、日頃からよく食べる。なんだかんだ、ギルドのクエストをこなしていくと、体力を消耗するのだ。


「ほら、特にミオちゃんなんか、わたしよりずっと食べているわよ」

 トリスティアが指し示す先には、肉、魚、野菜ほか、様々な料理を、皿の上に山のように――いやあれはもうタワーとでも呼ぶべきか――積んだミオの姿があった。


「美味い!さーて、まだまだ序の口といったところね。食べるわよ~」


 ・・・・・・ミオも大概、底なしの胃袋だな。これだけ食べても、あのプロポーションを維持しているのだから、大したものだ。


「なんかすみません。うちのメンバーが、食い意地張って・・・・・・」

「いえいえ。腹が減ってはいくさはできぬと言いますからね」


 なんなとく申し訳なくなって謝る俺に、食堂の責任者と思しき女性が、穏やかに返す。


「さ、あなたも遠慮しないで」

 促されるまま、俺もまた、料理を口に運ぶ。「中々リーティア王国内では見ない食材が多いわね・・・・・・特に海の幸。これ、なにかしら・・・・・・?」


 料理大好きソフィアは、興味津々といった様子で、皿の上に盛られた魚介類をつっついている。


「で、今日は他になにをする?」


 食事をしながら、俺は隣のセレスティーヌに尋ねる。


「そうね・・・・・・司令官の案内は終わったから、今日はもう自由時間なんでしょうけれど・・・・・・」

「わたしはもう一度設計局に行っていいかな?ちょっとまだ、色々と聞いておきたいことがあるっていうか」


 トリスティアがそう言う。


「私たちは、ちょっと武器ショップが気になるわね。このマーレス王国、基本的に海中に生活圏があるから、色々と面白そうな武器・防具を見かけたからね」

 とミオ、アリス、ユリア。


「やっぱりわたしは、食材を見てみたいわねー。本当、リーティアでは手に入らないものばかりよ」

 とソフィア。


「あたしはゆっくり船で休んどきたいです」

「こら、ルミナちゃん。せっかくだから、うちらとどっか行こうよ」

「じゃ、わたしもついていくよ」


 希望を口にする皆を見回しながら、


「それじゃ、各々自由行動、てとこでいいんじゃないかしら?ただし、七時から夕食をとるから、それまではこの食堂にまで帰ること。それでいいわね?」


 まるで皆の母親のような口ぶりで、そう言うセレスティーヌだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る