第421話 マーレス王国案内


 ベルトロン司令にまず連れて行かれたのは、海中に堂々とそびえ立つ宮殿のような建物だった。


「こちらが、マーレス王国政府官邸だ」

「ひゃあ・・・・・・随分とデカいな」


 ふわふわと水中を漂いながら、俺たちは官邸の外観を見物する。


 海底王国の中枢というだけあって、威厳がある。いくつもの球状のドームが積み重なり、その表面のあちらこちらに出入り口と思しき箇所がある。


「続いてはこちら。マーレス随一の規模を誇る、集合住宅街だ」


 さながら海中に建てられた高級マンション街、といったところか。藍色の巨大なタワーが、規則的に並んでいる。重力の影響を受けないため、タワーの下方から上方まで張り巡らされている通路で、多くの人が行き来している。


「それから、こちらは我がマーレス軍の兵器庫です」


 奇妙な形状の、潜水艦のような物体が、並んでいる。


「・・・・・・いいんですか、司令官。こんなの部外者の俺たちに見せて」


 俺の当然の疑問に、ベルトロン司令は弱々しく笑う。


「なに、どのみち一週間後にはイグマディア艦隊との決戦で、お披露目することになります。どのみち、今回の戦いで負ければ、わが国もイグマディア帝国の植民地となるほかないでしょう。だから、いまさらこの程度の情報漏洩なぞ恐れるに足りません」


 そうだろうか・・・・・・。いずれにせよ、マーレスの前途は、俺たちの双肩にかかっているんだよな。


「へえ・・・・・・ベルトロンさん、ちょっとこの潜水艦?をつくっている人たちと、お話してもいいですか?ちょっと気になることがあります」


 トリスティアが質問する。


「ん?別に構わんぞ。確か、設計局はあそこだったはずだが・・・・・・」

「分かりました。ちょっと今から行ってきていいですか?」

「別に構わない。実は今日の案内はここで終了の予定だったからな。気をつけて」


 あっさりと了承してくれたベルトロン司令官の挨拶を背に、俺たちは設計局とやらへと向かう。

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