第418話 艦隊戦
俺たちがオリオン号を移動させた場所からすぐ先に、イグマディア帝国海洋艦隊と、それに対峙する海賊船が何隻かいた。
「さてと。セレスティーヌ船長、どうやってあの連中をイグマディア艦隊から救い出しますか?」
「うん。レイ、防御系の魔法をオリオン号の周囲に展開してくれないかしら」
「了解。【グレート・シールド】」
シンプルイズベスト。バリアのような無色透明な防御壁を、オリオン号の周りに張る。
セレスティーヌは見回しながら、俺たちに命令する。
「ようし、できたわね。それじゃ、オリオン号、全速で突撃!」
「え?分かったわ・・・・・・」
操舵手のミオが操縦を始める。
ドドドドド、と波をかき分けながらオリオン号はイグマディア艦隊へと突撃を開始する。
『こちら、イグマディア帝国海軍第二艦隊。船籍不明の艦船に告ぐ。貴様らの所属を述べよ』
俺たちオリオン号に気付いたイグマディア艦隊は、悠々と警告をしてくる。あまり慌てた様子もないのは、自分たちの強さに絶対的な自信があるからだろう。ま、世界有数の艦隊とどこぞの馬の骨とも知らない海賊船一隻。そう考えるのも無理はなかろうが。
俺たちは艦隊の警告を無視して、オリオン号を猛進させる。
『船籍不明のそこの海賊船。これは最終警告だ。今すぐその所属を答えよ。さもなくば、砲撃を開始する』
「セレスティーヌ船長、ホントにいいのか?このまま行って・・・・・・」
「なーに、弱気なこと言ってんのよレイ。先手必勝!トリスティアちゃん、【轟爆砲】を撃ってちょうだい」
「はいはーい」
軽やかな返事をして、トリスティアが操作盤をいじる。
ガラガラガラガラと音をあげて、船首の両脇から黒い砲塔が姿を現す。
イグマディア艦隊の声が、海上に響く。
『海賊船たちに告げる。貴様らをこれよりただちに砲撃を開始――』
「撃ってぇぇぇぇぇぇっ!」
セレスティーヌのかけ声を合図に【轟爆砲】が盛大に火炎を噴き、砲弾が連射される。
『なっ――――!』
俺たちからのいきなりの砲撃に、驚いたイグマディア艦隊。大慌てで回避行動をするが、遅い。【轟爆砲】から放たれた砲弾が次々に着弾して、爆炎を噴き上げる。
【轟爆砲】――トリスティアが開発した、対戦艦用の超強力な攻撃手段だ。一発でも当たれば、どんな艦も戦闘不能なほどのダメージだとか。
『ぬぅ・・・・・・卑劣な海賊どもめ!もう容赦はせん、やれえっ!!』
【轟爆砲】を被弾しなかった艦が、オリオン号ほ囲むような陣形になる。各艦の砲塔はしっかりとこちらに向けられている。
『撃てぇっ!』
ドドドドドゥッ!轟音とともに砲弾が雨あられと降り注ぐ。
「【瞬間移動】」
俺はオリオン号を、さっさと移動させる。【念動力】とかで弾き返す方法もあるが、なんか面倒くさくなった。
『む・・・・・・?やったのか?我らの猛攻を前に、跡形もなく沈んだのか・・・・・・?』
俺たちをやっつけたものだと盛大に勘違いするイグマディア艦隊。
「もう、とっとと片付けるか。アリス、あのリーダー艦を頼む」
「はいよ、レイくんっ」
アリスが小走りに船首まで駆けていき、超火力魔導式狙撃銃・リヴァイアサンを構える。
かつてド・モル皇国海軍との戦争で、大活躍した大型狙撃銃の銃口が、イグマディア帝国第二艦隊の旗艦へと向けられる。
「発射――」
爆音をまき散らしながら、リヴァイアサンから放たれた【真・劫火弾EX】は、旗艦へと猛スピードで食らいつく。
あっという間にイグマディア帝国第二艦隊の旗艦の側部に、穴が
『ぐぅ・・・・・・不覚・・・・・・全艦に告ぐ。撤退だ』
「ありゃ?連中去っていくぞ」
世界有数の艦隊だけあり、イグマディア帝国第二艦隊の去り際は、流れるように早かった。
撤退する艦隊を眺めていた俺の隣に、アリスがやってきて呟く。
「さすがはイグマディアの艦船ね。【真・劫火弾EX】を喰らっても、沈まないなんて」
「あ、確かにそうだな」
ド・モル皇国では大型艦船があっさり沈んでいたもんな。イグマディアの艦船は、かなり頑丈なんだろう。
「それに、司令官が優秀よね。私たちに勝ち目はないと判断したら、被害を最小限に抑えるために、さっさと撤退。賢明よ」
セレスティーヌの言葉に、俺は頷く。
「さて、どうするかしらね」
セレスティーヌ船長は、視線を転じる。その先には、イグマディアの脅威が去り、どこかほっとしているような、ギルドメンバーたちが乗る海賊船が、何隻も波に揺られながら、待機していた。
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