第417話 コンタクト
アーリンローズ海の指定された場所へとへと移動した俺たち。
天気は穏やかそのもで、オリオン号の周囲には蒼海が広がっている。
だが、今の俺たちにはその景色を悠長に楽しんでいる状態ではない。
「・・・・・・ねえ、これってどういうことかしら?」
「うーん・・・・・・とりあえずこういうときは、船長にきくのが一番だろう。セレスティーヌ、どうすればいいんだ?」
俺の問いかけに、セレスティーヌは仏頂面で聞こえる。
「分かんないわよ。というか、こういうときに頼りになるのはレイでしょ?私たちグレートパーティのリーダーなんだから」
「はいはい、分かりました」
仕方ない。ここは俺がひとつ、やるっきゃないか。
でも、どうするべきなんだろうなこの状況。
なんといっても、俺たちのオリオン号の周囲には、優に十隻を越える戦艦が待機していたのだから。
「ねえ。あれって多分、マーレス海軍の旗じゃないのかな」
アリスが指摘する。となると、この艦隊は俺たちの依頼主――マーレス王国のものなのか。だとすれば、するべきことはただ一つ。
「・・・・・・とりあえず、呼びかけてみるか」
俺は【拡声術】で声のボリュームを最大限にまで上げる俺。
『こちらはオリオン号ー!マーレス王国の依頼を受けて、ここアーリンローズ海へと参った。敵意はない!繰り返す・・・・・・』
俺は、精一杯言葉を尽くして、マーレス海軍と思われる艦船に声をかける。
しばしの後、【拡声術】を用いた返事が、辺りに響く。
『こちらはマーレス王国海軍・主席艦ポセイドン号!そなたらは海賊ギルドの依頼を受けたオリオン号だな?いましがた、確認した。しかし、ひとつ質問がある』
『なんだ??』
『そなたら以外の海賊船はどうした?』
ん?どういうことだろうか。
ポセイドン号の説明が続く。
『今回、約二十ほどの海賊船に、依頼を出したのだ。もちろん、すべての海賊船が受注してくれるとは考えていないのだが――まさか、そなたらオリオン号一隻だけということはなかろう?・・・・・・どうなのかな。ひょっとしたら、あまりにも報酬が少なくて他は誰も来なかったのかな。だとしたら、拙者の責任・・・・・・』
最後辺りはひとり言になっているが、おおよそのことを把握する俺。
つまり、俺たち以外の海賊船が来ていないことを不思議に思っている、てわけか。
『了解した。こちらオリオン号は【瞬間移動】で来たため、道中に他の海賊船がいたかは分からない』
『分かった。ううむ・・・・・・どうしたことか』
それっきり、ポセイドン号以下マーレス王国海軍は黙ってしまう。
「レイ、どういうことかしら?」
「分からん。ただ単に、俺たちしか受注しなかったというだけかもしれんが」
「それはちょっと考えづらいわよね。さすがに、あと数隻くらいは来るんじゃないかしら」
「レイさん、【千里眼】を使ってみてはいかがですか?ひょっとしたら、今現在こちらに向かっている可能性もありますし」
「だな」
ルミナからの提案を受けて俺は【千里眼】を発動させる。
青くどこまでも広がる海を、高速で探っていく。
「・・・・・・発見。だけれどこれは・・・・・・」
「どうかしたの?」
「とりあえず、まあみんな見てくれ」
俺は【幻映術】で、リアルタイムの映像を展開する。
三隻の海賊船――俺たちと同じ海賊クエストのものだ――が、大海原で立ち往生している。
なぜ立ち往生しているかって?それは簡単。目の前にイグマディア帝国艦隊が、通せんぼしているからだ。
『だーかーら!何度も言わせるんなよ!俺たちゃ、国際的にも正式に認められている海賊船なんだよ!だからさっさと通しやがれ!』
『この先は、我らイグマディア帝国第二艦隊の管轄海域である。何人たりとも、許可なく通行することは認められない』
『嘘つけ!この先は、マーレス王国の海域だろうが!いつからお前らイグマディアのものになったんだよ!』
『繰り返す。至急お引き取り願いたい』
『だーかーらー!・・・・・・』
「あちゃー・・・・・・他の海賊船たち、イグマディアから妨害されて、足止めされているみたいね・・・・・・」
俺たちは【瞬間移動】で船ごと来たが、皆そうもいかないのだ。
「どうする?レイくん、助けにいかないの?」
「んー・・・・・・セレスティーヌに訊いてくれ。船長なんだからさ」
ソフィアからの質問を右から左へと受け流す俺。
セレスティーヌは、自身満々に胸を張る。
「もちろん、助けにいくわよ、レイ、お願いね」
「おう、任せておけ」
再びオリオン号を【瞬間移動】する俺だった。
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