第104話 アシードダンジョンへ


 アシードダンジョンは、深海の様な暗さだった。いや、本当に深海だったら光も届かず何も見えない状態なのだが、要は深海のイメージがぴったりなダンジョンだということだ。


 ダンジョンといえば、迷宮みたいに秩序だった建築物のごときものを誰しもが創造するだろうが、アシードダンジョンはむしろゴツゴツとした岩肌が特徴的な、洞窟のような場所だった。


「ここが・・・・・・アシードダンジョンか。いざ来てみると、印象が違うわね」

 ミオはため息を漏らす。確かに、薄暗くも深い青を貴重とした色合いに満たされており、深海の神秘みたいなものを感じる。


 実際、ダンジョンが位置している深さで言えば、深海でもなんでもないはずなのだが、なぜかこうなってしまっているらしい。


「あたしもダンジョンは初ですが・・・・・・こう、圧倒されますね」

 結局俺たちに同行することになったルミナが、背後から言う。


「ルミナ、ミオの近くから離れるなよ。ミオもルミナの警護はよろしく頼む」

「了解、任せておきなさい」

 ミオは自慢の愛刀を見せる。


 あの後、俺たち三人はアシード国のギルドにまで出向き、クエストを見繕い受注した。


「ミオ、確認のためにもう一度依頼用紙をいいか?」

「ほい」

 ミオは懐から用紙を取り出し、俺に差し出す。


「依頼内容 討伐

 討伐対象 スキュラーケン

 ダンジョン第五層最奥部に位置するクラゲ型のモンスター・スキュラーケンを至急排除してください。

報酬 七十万リルド 討伐したスキュラーケンから採取出来る素材のすべて」



 ルミナの父の形見のペンダント。それが丁度、この第五層最奥部辺りに今現在落ちていることが判明したのだ。で、丁度ぴったりな場所のクエストがあったので、こうして受注したというわけ。


「七十万リルドなんて、初めてよねこんな高額クエスト。ワクワクする~」

 ミオが意気揚々と言う。


「ん?つい先日百五十万リルドの報酬がもらえただろ?」

「え?でもあれは、ルミナちゃん買って救うのにはたいたから、実質ゼロじゃない」

「ううっ・・・・・・すみません。あたしなんかのために」

 ルミナが落ち込むので、ミオも俺も慌ててフォローする。


「いやいやルミナちゃん、全然気にしていないからさ!」

「まったくだ。人の命一人救えたと思えば、安いものだぜ百五十万くらい」

「そうそう。それにレイが本気出せば、あれくらいすぐ取り返せるんだからね!」

 ミオが完全に他力本願なことを言う。


 そんな俺たちの言葉を受けて、ルミナは柔らかく微笑む。


「はい、お二人ともありがとうございます」

「それじゃ、ダンジョンクエストにレッツゴー」


 ミオのかけ声で、俺たちは歩き始める。

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