第103話 ペンダントの大冒険
ルミナからの頼み事は、探し物だった。ルミナというか、彼女の母親からの依頼。
ルミナは父親を早くに亡くしているという。それで、その父親の形見のペンダントがあったのだが、借金返済のため、何年か前にやむを得ず売ってしまったという。
だが、ルミナが奴隷として売られてお金が入ったことにより、借金は無事返済された。そうなると、やはり形見だったペンダントを取り戻したくなるのは自然の道理。 だが、かつてペンダントを売った質屋を訪ねてみても、とっくに流してしまったので、どこにあるのか分からないとのこと。そこで、なんとか探してくれないかとの依頼だ。
この頼みは、流石に断るわけにはいかなかった。というか断れなかった。俺はすぐにオーケーする。だが――。
「どうやって探したものかね・・・・・・」
俺は頭を抱える。何年も前に売られたペンダントだ。探す手立てがない。
「やっぱり無理なお願いでしたかね・・・・・・」
ルミナは残念そうに肩を落とす。
「いや、ちょっと待て。何か策があるはずだ・・・・・・」
ここで諦めるようでいては、魔力無限の能力が泣く。
そのとき、ミオがふと思い出したように口を挟んでくる。
「ねえ、レイ。【千里眼】でどうにかならないの?」
「そんなもの、どうにもなるわけ・・・・・・あ」
俺の脳裏に、セレスティーヌ誘拐の際の光景が浮かび上がる。
そうだ、あのとき確か【千里眼】で過去の映像も展開出来たじゃないか?
俺は少々得意になり、ルミナの方に目をやる。
「ルミナ、いけるかもしれないぞ。ペンダントが売られた時期と場所は分かるか?」「あ、はい。たぶん家の方に記録はあると思います」
ルミナはアパートに戻る。
ものの五分ほどで、ルミナは売却の記録を持ち出してきた。
「ありました。売ったのは4年前みたいですね。そして質屋の場所は・・・・・・」
ルミナが記録用紙を確認しながら伝えてくれる情報を元に、【千里眼】を発動させる俺。【千里眼】で見たものを、俺は映像として空中に投影する。
4年前。ルミナの母親が質屋にいる。そこから始まる俺の映像。
悲しそうにペンダントを手放すルミナの母親。
それから1年ばかりは、ペンダントは質屋にあった。その後雑貨屋に売り飛ばされて、どこかの役人が購入した。
役人も1年ほどは持っていたらしいが、結局ロクに使われることもなく、また雑貨屋に売り飛ばされる。それから次は、どこかの婦人が購入。婦人はよく身につけていたが、あるとき道ばたに落としてしまう。それを拾ったこどもが遊び道具として半年ほど使っていたが、公園に置き忘れてしまう。それから鳥が口にくわえて、巣に持ち帰る。やがて木の上の巣から落ちて、川に流されて、最後は地下ダンジョンへと到達。
「ペンダント、大冒険していますね・・・・・・」
ルミナは呆れと感心の混ざったような口調で言う。
「で、今現在はこのアシード国地下のダンジョンにある、てわけね」
「ま、場所は分かったことだし、さっさと【瞬間移動】で確保しにいこうぜ」
「あ、ちょっと待ってレイ・・・・・・」
ミオは俺を止める。
「あのさ、せっかくダンジョンに行くんだし、クエストも受注していかない?」
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