第97話 クエスト完了&報酬……?


 結果的に、パグラスダンジョン爆破解体クエストには、二日かかった。


 正直な話、大した収穫は望めないということが途中で分かってきたので、後半は駆け足で爆破を繰り返した。


 永久凍土とでも呼ぶべき、ダンジョンの壁を燃やす。メラメラとした炎が白く濁った氷を勢いよく溶かしていく。水がジャバジャバとあふれ出して、水蒸気がもうもうとたちこめる。


 落とし穴、仕掛けが作動すると自動で発射される矢の嵐、電撃装置、毒矢、極低温の沼、その他あらゆるトラップをことごとく盛大に破壊していく。本来ならこういうものをくぐり抜けてボスモンスターにいくはずだったのだろうが、まあよかろう。


 ゴーレムのような、無機物系モンスターたちは、エネルギーの供給を断たれて機能を停止したまま静かに並んでいた。何かに利用できないだろうかとふと思ったが、大したアイデアも思いつかなかったので、そのまま発破解体した。


 いよいよ最後の空間の解体だ。


「ふう・・・・・・二日間、短いようで長かったわね」

 探索の連続で、しかも大した収穫はなかったので、バーティメンバーたちの顔にも少しだけ疲労がにじみ出ていた。


「ああ、そうだな」

「素材とかなんとか、多少は手に入ったすら、成果ゼロってわけじゃないけれどね」

 ちょっぴり残念そうなセレスティーヌ。


「まあまあ、報酬に期待しましょう」

 ソフィアがフォローする。


 俺は皆を見回し、確認する。 


「それでは、いくぞ。超上級魔法【クリムゾン・ビッグバン】」


 紅く、獰猛な爆炎が氷壁を跡形もなく溶かす。この魔法特有の一切爆音のしない静寂が、却って爆発の威力のすさまじさを物語っているようだった。


 瞬く間に、真紅の火炎がすべてを呑み込んだ。


 俺は厳かにパーティメンバーに告げる。


「任務完了。帰投しよう」


 ようやくギルドに帰還して、クエスト室に入る。アリエスさんのいる受付の所へと、急ぎ足で向かう俺たち。さあ、報酬はいくらだ。


 しかしアリエスさんは、俺たちの顔を見た途端、ペコリと頭を下げる。


「申し訳ありません、グレートパーティの皆さん。ただいま報酬の準備に時間がかかっていまして・・・・・・せめて明日までお待ち頂けないでしょうか?」

「「「「「えー!?」」」」」

 一斉に文句を言う俺たち。アリエスさんはひたすら謝り続ける。


「こちらとしましても、心苦しい限りなのですが・・・・・・」

 普段は淡々としているアリエスさんに、小さくなって謝り続けられると、こちらも強くは言えなくなる。


 早くも冷静さを取り戻したセレスティーヌが尋ねる。


「アリエスさん、報酬が用意出来ないというのは、どういうことですか?」

「はい、リーティアダンジョンにあまりにも勇者やら冒険者やらが集まり、結局あの通り・・・・・・」

 アリエスさんは、クエスト室の一角を指し示す。リーティアダンジョンのクエスト掲示板・・・・・・だよな?そこには依頼用紙一枚張られていなかった。


「・・・・・・誰も彼もがわが国・リーティアのダンジョンクエストを受けていったものですから、今や受注可能なクエストはゼロ。膨大な数のクエストがクリアされたため、当ギルドが常備している報酬用の貨幣も底を突き、誰にも報酬が払えない、という状態でして・・・・・・」


 成る程。そうなのか・・・・・・。 


「皆さんの報酬が定まっていないのも、そういう事情なのです・・・・・・皆さん、明日の正午まで待って頂けませんか?」

 俺は頷く。


「分かりました。そういうことなら、明日また来ます」


 そういうことで、報酬はひとまずゼロ。明日、ちゃんと払ってもらえるかなあ・・・・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る