第82話 隠されし世界


 今日もダンジョンクエストをこなす。


「いや~、でもアリスの魔法銃の力って、予想外の強さよね」

 ミオが満足そうにアリスに声をかける。アリスも満更でもなさそうなご様子。


 実際、俺の【創造術】&【ディミディア】による弾丸・魔力無限供給の威力は、中々のものだった。迫り来る敵の大群を吹き飛ばしていき、向かうところ敵無しのグレートパーティだった。


「でも、私の銃の威力は、レイの力あってこそだよ~」

 アリスは謙遜する。


「いいじゃん、細かいことはさ。それより早く、報酬受け取ろ」

 セレスティーヌに促されて、俺たちは受付へと行く。


 アリエスさんは俺たちを視認すると、口を開く。


「あら、グレートパーティの皆さん。丁度よかった、お話したいことが・・・・・・あ、これは本日分のクエスト報酬ですね。お疲れ様」

 ひとまずアリエスさんから報酬袋を受け取る。


「アリエスさん、話って何ですか?」

「そうそう。それです。実は、ノーンチップについて新たな情報がありまして・・・・・・」

 なんだろう?俺たちは、身を乗り出す。


「あなたたちの見つけたノーンチップを、解析したのですが・・・・・・ちょっと驚くことがありまして」

「え、そんな貴重なものだったんですか?」

 俺たちは期待するが、アリエスさんはやんわりと否定する。


「いえ、あなたたちのチップがどうという話ではないのですが・・・・・・」

 アリエスさんは語り始める。

  


 俺たちが発見したノーンチップが送られた頃、国際ダンジョン研究機構(ダンジョンについての学術研究を行う組織らしい)に保管されていた百個あまりのノーンチップに異変が起きたらしい。


 ノーンチップは、前にも話した通り大魔導師ラ・ノーンの言行等を記録した媒体だ。


 だが、不可解なことにその記録が、一斉に変化してすべてのノーンチップが同じ文章になったという。


 その、変化した文章というのが「隠されし世界への道。その扉はすでに開いた。選ぶも選ばぬもそなたの意思の自由」――つまり、俺たちが発見したノーンチップに記されていた文章だ。


「一千年あまりのダンジョン研究で、こんな現象は未だ確認されていません。一体これはどういうことか、各国のダンジョン研究者は頭を抱えているそうですよ」


 アリエスさんは話を続ける。


「ただ一方で、これは新しい隠しダンジョンが開かれたということのメッセージだと、各国のギルドメンバーたちの間ではもっぱらの噂になっています。で、その隠しダンジョンの中には、金銀財宝や、不老不死の薬などが山のようにあるのだ、と。まあこれは単なる噂についた尾ひれに過ぎませんが」

「へえ・・・・・・」

 何か、面白いことになってきたな。


「でも、隠しダンジョンなんてまだ発見されていないんでしょ?」

 セレスティーヌの冷静な問いかけに、アリエスさんは頷く。


「ええ。各国の調査団――といってもギルド所属の冒険者たちですが――が今探しているのですが、今のところ何の手がかりもなし、です」

「ふーん。そうか・・・・・・」

 まだ発見されていないのは、ちょっと残念だな。


「でもまあ、グレートパーティの皆さんが発見なさるかもしれませんしね。ということで、明日からのダンジョンに行く際は、その隠しダンジョンとかのことを少しは意識しておいて下さいね、ということです」

「了解しました。まあ、私たちが発見出来るかは分かりませんが」

 ミオは言う。



 そういうわけで、俺たちはアリエスさんのところを後にする。

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