第78話 発見

 熱でひしゃげ、原形をとどめていない鉄の残骸を検分する俺たち。


 といっても、大した収穫はなさそうだった。まあ仕方あるまい。この残骸の山をまとめて【保管庫】で運び、屑鉄として売れば少々の稼ぎにはなるだろう。


「だけれど、何かレアアイテムとかひとつくらいあればいいんだけれどな」


 視界の端に、キラリと光るものがあった。


「ん?なんだあれは」

 俺はキラキラと明滅するその方向へと向かう。


 それは金属の光沢とは違う、まるでそれ自体が意思を持っているかのような輝きだった。


 えーと、これかな。残骸の中から、その光源を取り出す。


 約2センチほどの、小さな破片だった。材質は不明だが、この自動式鎧武者の破片ではないことは確かだ。


「んー、レイ。それなに?」

 ミオが俺が手にしている破片に気付く。


「うーん、なんだろうな?」

「レイにも分からないわけ?」

「ああ。セレスティーヌに聞いてみるか」

 才女セレスティーヌなら、何か知っているかもな。


 少し離れた地点で捜し物をしているセレスティーヌを呼ぶ。


「レイ、何か発見したの?」

 すぐさま俺たちの所にやってきたセレスティーヌは、訊いてくる。


「ああ。セレスティーヌ、これ何か分かるか?」

 手にした小さなかけらを俺はセレスティーヌに手渡す。 セレスティーヌはしげしげと破片を眺める。


「ふうん・・・・・・見たこともないような物質ね。金属の一種だとは思うけれど・・・・・・これ、なにかしら?」

 どうやらセレスティーヌでも知らないものらしい。こりゃ難儀なものだな。


「あれ、うわっ!?」

 セレスティーヌが突然声をあげる。


「どうした、セレスティーヌ?」

「なんかいきなり文字が浮かび上がってきたんだけれど・・・・・・」

 セレスティーヌに握られた破片は、光を発し、空中に投影していた。さながらホログラムのごとく映し出されたその映像の中には、こんな文章が記されていた。



「隠されし世界への道。その扉はすでに開いた。選ぶも選ばぬもそなたの意思の自由」



「なんだこれは?」

 意味深な言葉の羅列を前にして、疑問を口にする俺。


「あれー、なになに?」

 いつの間にかソフィアとアリスも、俺たちのところへと集まっていた。


 一同、謎のホログラム文章を読む。


「うーん、隠されし世界って何かしらね?」

 ソフィアは首をかしげる。 


「多分、ダンジョン内の隠し部屋のことじゃないかな?」

 とセレスティーヌ。


「アリス、これに思い当たるようなことを知らないか?」

 俺の問いにアリスは無言で首を振る。


 しばらく頭を突き合わせて、文章の解読を試みていた俺たちだが、大した成果は得られなかった。ミオが言う。


「ねえ、このままここでこうしていても埒があかないし、一旦ギルドに戻ってみたらどう?アリエスさんなら何か知っているかも」


 そうするか。多分、考えていてもどうしようもないしな。


「しゃあねえな、それじゃ一時帰還するか。それ【瞬間移動】っと」

「あ、ちょっと待ってよレイ。鎧武者たちの残骸を【保管庫】で持っていってよ。少しはお金になるかもよ」

「はいはい、了解」


 俺は部屋中に散らばっていた残骸を【保管庫】に収納する。そして【瞬間移動】でギルドへと向かう。

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