第77話 VS自動式鎧武者軍団

「おお・・・・・・」

 目的地となっている部屋に入った途端、思わず声が漏れる。


 だだっ広い空間に、数百体はいるだろうか、自動式鎧武者たちが兵馬俑のように整然と並べられている。


「これね・・・・・・」

 セレスティーヌも思わずその威容に圧倒されている。


 歩みを進める俺をミオが手で制す。


「ストップ、レイ。むやみに近づいたら一斉に起動するわよ。ちょっとは作戦を練りましょうよ」

「んー、大丈夫だろ」

「レイ、ミオちゃんの言うとおりよ。油断は禁物よ」

「分かったよ」

 セレスティーヌからの援護もあったので、俺は黙って言われたとおりにする。


「ねえ、アリスちゃんの魔法銃の攻撃って、今どれくらい使えるの?」

「ちょっと待ってね・・・・・・」

 アリスは、ポケットから弾丸を取り出す。


「大体10発ってところかな。弾丸の数が少ないし、私の魔力もそこまで残っていないし」

「そうか・・・・・・」


 俺はふと、アリスの掌にのる弾丸を一つ手に取りしげしげと眺める。


 ・・・・・・そうだ。ひょっとしたら、いけるかもしれない。 


「なあ、ひとつ考えがあるんだが・・・・・・」

 俺は皆に、今思いついたことを話す。



 鎧武者たちが整列している部屋の戸口に立つアリス。その手には、彼女の愛銃が一丁握られている。


 アリスは不安げにこちらを見てくる。


「あの、本当にいいの?」

「ああ、多分大丈夫なはずだ。もしダメだったら、俺たちが全力で援護に回るから、遠慮無くやってくれ」

「・・・・・・分かった」

 アリスは半信半疑の様子で、銃を構える。


「それじゃ、行くね。銃魔法【爆炎弾】」

 ドォンッ!という炸裂音を伴い、アリスの銃口から巨大な火炎が噴き上がる。空気をつんざく音が辺りをとどろかせる。


 無事に銃口から発射された爆炎弾は、目にもとまらぬスピードで、鎧武者軍団の一角に命中する。鮮やかな火炎を噴き上げて、鎧武者たちが何体か爆散した。


「ギギギギギ・・・・・・」

 自動式鎧武者たちは“覚醒”した。鎧の身体が発する軋みの音が不気味に室内に反響する。


 鎧武者たちは、一斉にこちらを振り向く。攻撃を受けたことを確認したのち、その攻撃の元を排除する。プログラム通りだ。


「ひっ・・・・・・!」

 自動式鎧武者たちの青白い眼光に睨まれて、アリスは怯んでしまう。


「アリスっ!攻撃を止めるな!」

 俺はアリスを叱咤激励する。


「ふぁ、はい・・・・・・」

 アリスは再び発砲を始める。


 俺は魔法を発動させる。


「喰らえっ、超上級銃魔法【インフィニトゥス・バリスタ】!」


 ドドドドド、という連射音が俺の耳朶を打つ。アリスの銃口からは、先ほどの【爆炎弾】が、マシンガンの如く怒濤の勢いで放たれる。


 次々と雪崩のように【爆炎弾】は自動式鎧武者に襲いかかる。奴らの鋼鉄製の身体は、【爆炎弾】が命中すると、その輪郭はぐにゃりと溶けて、爆発する。


 爆発が連鎖する。自動式鎧武者たちの爆発による、花火の洪水のような壮大な光景が繰り広げられる。


 鮮やかな光と爆音のパレードは、ものの10分ほどで終わる。


 跡には、最早原型をとどめていない自動式鎧武者たちの溶けた残骸が、熱を放ちながらさらされるだけだ。


「すごっ・・・・・・」


 セレスティーヌもミオもソフィアも、もちろんアリスも俺も、予想をはるかに上回る戦果に開いた口が塞がらない。


「レイの力って、やっぱすごいんだよね・・・・・・」

「そうだな・・・・・・」

 俺も呆然とした気分のまま答える。


 アリスの銃と弾を見ていて俺が思いついたアイデア。それは銃の攻撃と同時進行で【創造術】で、弾丸を作り続けて銃に装填し続けるというものだった。これで弾丸は無限に供給される。更に【ディミディア】でアリスの魔力を無限にして、【爆炎弾】を際限なく打ち続けるというもくろみだったのだが・・・・・・。


「まさかここまでの成功をおさめるとはね・・・・・・」

 ミオも言う。


「【創造術】、使い方ではめっちゃ役にたつじゃん」

 セレスティーヌは感心したように言う。


「ああ、そうだな。それじゃ、自動式鎧武者たちから何か使えそうな素材を探すか」

「りょーかい」


 俺たちは部屋に入り、探索を続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る