第73話 セレスティーヌとの対話


 自分の部屋へと【瞬間移動】して帰宅する。こうすれば、俺が朝からひっそりとクエストをこなしていることは誰にも気付かれない。


 はずだったのだが。


【瞬間移動】した途端、なぜかセレスティーヌが俺の部屋の中にいた。畳敷きの部屋の中央で、正座しているセレスティーヌ。


「うわっ!?セレスティーヌ、いったいどうしてここにいるんだ?」

 だがセレスティーヌは、質問に質問で返してくる。


「そんなことよりレイ、最近朝からどこに行っているの?」

「え、なんのことかなあ・・・・・・?」

 精一杯しらばっくれる俺。


「隠しても無駄よ。四日前だったかしら。ちょっと頼みたいことがあって、朝からあなたの部屋をノックしても、反応なし。心配になって開けてみたら、もぬけの殻。トイレとかに行った気配もない。気になってそれから毎朝確認してみると、いつもいない」

「ひどい!不法侵入だ!他人の部屋を勝手に覗き込むなんて!」

「不法侵入って・・・・・・そんなに言うのだったら、部屋の鍵くらい掛けておきなさいよ」

「え?俺っていつも・・・・・・」

「掛けていないわよ、まったく。流石に私だって、鍵を破ったりはしないわ」


 ええっ・・・・・・俺ってそんなにいい加減だったのか。


「で、どこにいっていたの?」

「うーん・・・・・・つまりさ、クエストをやっていたんだよ」

「え」

 拍子抜けしたような表情になるセレスティーヌ。


「少しでもグレートパーティの稼ぎになればと思ってな」

「そうだったの・・・・・・ごめんね、私ったら変なことで疑っちゃった」


 まあ、嘘ではないよな。セレスティーヌのプレゼントのために金を稼いでるとは言えないが。


 しばしの間、セレスティーヌは何かに迷ったように視線をさまよわせたのち、俺をまっすぐに見てくる。


「でも、だったらさ・・・・・・私も連れていってよ」

「え?」

「だからさ、私も朝からのクエストに同行するって言ってるの。私、早起きだしさ・・・・・・ダメ?」


 そんな目で見られたら、断れないだろ。


 内心の動揺を悟られないように、俺は素っ気なく返す。


「別に、構わないぞ。でも、朝五時起きだけれど、大丈夫なのか?」

「うん!そこは任しといて。私、いつもそれくらいの時刻に起きるから、全然平気」

 そうだったのかよ・・・・・・。


「じゃ、明日からよろしくね」

 セレスティーヌは立ち上がり、俺の肩をポンと叩くと、ご機嫌で部屋から出て行った。


 うーむ。なんか事態が思わぬ方向へ向かったな。


 仕方あるまい。 “ザルノスのローブ&杖セット”の購入はちょっと考えよう。いや、セレスティーヌと一緒にクエストを受けても金は貯まるだろうから、諦める必要はないのかな。

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