第71話 魔神水の真相
ちょびひげとスキンヘッドをロープでぐるぐる巻きにして拘束して、座らせる。
「・・・・・・どういうことか、説明してもらいましょうか」
セレスティーヌが問いただす。
「は、はい。実はこういうわけで・・・・・・」
俺たちに抵抗しても無駄だと悟ったのか、ちょびひげは小さくなり、説明を始める。
簡単に説明すれば、はじめからすべてグルだったのだ。
まず、ギルドに魔神水探索の依頼を出す。それを受け取るギルドのパーティがいる。
しかし、そもそも魔神水など噂だけの存在で、実在は確認されていない。よって、魔神水探索に来たパーティは、その探索で不毛な時間を過ごすことになる。
で、探索に疲れた所を、とどめを刺すように幻影魔法で追い詰める。疲れて正常な判断が出来ないところに、ただの水を魔神水と称して法外な値段で売りつける。というわけだ。
「ったく、典型的な詐欺ね。それに引っかかるわたしたちもわたしたちだけれど・・・・・・」
ソフィアが呆れたようにため息を吐く。
「で、レイ。こいつらどうする?」
ミオは太刀をブンブンと振り回す。詐欺商人たちは「ヒィィィッ!命だけはご勘弁を!」と縮こまる。
「ミオ、騙された恨みは分からんでもないが、そんな簡単に人を殺めたらいけないぞ」
「・・・・・・別に危害を加えようとか、そういうのじゃないし」
少し怒ったような顔になるミオ。
「金は返してもらって、それからスレミア警備隊に引き渡せば?ダンジョン内で犯罪行為に該当する行為があったと確認された場合は、それが正規の方法だったはずよ」
セレスティーヌが言う。ソフィアもミオも、それに賛成する。
「じゃ、そうするか。だいぶ遅くなっているし、今日のダンジョン探索はこれで終了ってことでいいかな?」
一同、頷く。
「おっけー。それ【瞬間移動】」
こうして、今日のダンジョン探索は終わる。
ちょびひげとスキンヘッドの野郎をスレミア警備隊に引き渡し、諸々の手続きを経てアルカディア荘へと帰宅したときは、午後九時を回っていた。
「今日は散々な目にあったわね。なんか、無駄に疲れた~」
ミオは大きなあくびをする。
「というか、ちょっとダンジョンをなめてかかっていたかもしれないわね、私たち。これからは対幻影魔法の防御策等をして、ダンジョンには臨みましょう」
セレスティーヌは、反省点を述べる。
「うう・・・・・・美味しい魔神水・・・・・・」
ソフィアは魔神水の存在がインチキだったことが、余程ショックだったみたいだ。
「まあまあ、ソフィア。今回が嘘っぱちだったというだけで、魔神水の存在そのものが否定されたわけじゃないだろ?」
「そう・・・・・・かな?」
ソフィアは腑に落ちない感じながらも、少しは気分を回復させる。
「さあ、みんな、気を取り直して食事でもしようぜ」
俺は【保管庫】から、帰宅途中で買ってきたものをテーブルの上に並べる。
ドーナッツを始めとした焼き菓子、ケーキ、チョコレート、その他諸々の甘い物が山の如く並べられる。
「レイ、本当にいいの?」
「ああ。好きなだけ食べてくれ」
あまりにもパーティ内の士気が低下していたので、俺の奢りで甘い物を沢山買ったのだ。精神的に疲れたときは、バカ食いでもするに限る。
「えーと、それじゃ遠慮なくいただきます」
「んー、これ美味しい!」
「ソフィア、これも食べなよ~」
沢山のスイーツに対する健啖ぶりを発揮するパーティメンバーを眺めながら、俺もドーナッツを一つ、口にしてみた。ほどよい甘さだった。
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