第69話 戦闘、また戦闘

「ていっ!【聖雷刃】!」

「やあっ!【魔石弾・改】!」

「はっ!【凍てつく水刃】」

「とうっ!【鬼神の息吹】」


 俺たちは、各々好き勝手な攻撃魔法で、スカルズを倒す。


 奴らの残骸が床に散らばる。


「うーん、スカルズの遭遇は、今日これで三度目ね」

 セレスティーヌがふう、とため息交じりに言う。


「何かさっきから、やたら多くない?」

 そこまで手こずる相手というわけではないが、ミオも疲れたご様子だ。


「変な感じねえ。ダンジョンにおいて、ここまで頻繁に同じモンスターに遭遇するものかしらねえ」

 ソフィアも首をかしげる。


 悩んでいても仕方ないので、ダンジョン内を進む俺たち。


 ものの五分ほどで、またスカルズ登場。


「また~」

「もううんざり~」

「なんなのよ~」


 流石にパーティ内からも愚痴も噴出し始めたので、俺は

「超上級魔法【鬼焔神の閃撃】」

 と、容赦ない攻撃魔法で、奴らを瞬時に灰燼と化す。


「さあ、次行くぞー」

 俺は空元気の声で、皆を奮い立たせる。かくいう俺も、ちょっと参っている。いくら何でも、スカルズ多すぎやしないか?


「ちょっと待って、レイ」

 唐突に、セレスティーヌから裾を掴まれて、動きを止められる。


「どうした」

「なんか、おかしいと思わない?」

「そうかな」

 ミオとソフィアを見ると、頷いてセレスティーヌに賛意を示している。


 セレスティーヌは懐から地図を出し、広げる。


「ええ。ちょっとこれ見てよ。この地図通りだったら、とっくに次の目的地の部屋に到着しているはずなの」

「でも、未だ到達していないわけよね」

 ソフィアが横から地図を確認する。


「地図が間違っているって可能性は?」

 セレスティーヌは首を振る。


「その可能性は低いわよ。そもそもこの地図はギルドの集合知が生み出したものだし。それに、今回のダンジョンクエストが始まってから、レイの【千里眼】で地形を逐一確認しながら、地図はアップデートしているのよ」

「うーん。それじゃ、どうしてこんなことになっているのかな?」

「そうよねえ・・・・・・」

 頭を抱えるグレートパーティの面々。


 肉体的な疲労感よりも、同じようなシチュエーションが繰り返されることによる精神的な疲労感が大きかった。


 少しの間の後、セレスティーヌが気付いたように顔を上げる。

「レイ、解除魔法ってないかしら?攻撃魔法やトラップ魔法を解除するの」

「ん?ちょっと待ってくれ」

 俺は魔法一覧を見る。


 これかな?超上級魔法【智慧の女神の解魔】


「それでいいわよ。レイ、その魔法、発動出来るかしら?」

「お、おう。じゃ、やってみようか。【智慧の女神の解魔】」

 発動した途端、周囲の景色がぐにゃりと歪む。ほんの一瞬、景色が消失したのち、また元に戻る。


「・・・・・・どうやら、正解だったみたいね」

「セレスティーヌ、どういうことだ?」

 セレスティーヌは、ソフィア、ミオ、俺をぐるっと見回して説明する。


「いつの間にか、幻影魔法をかけられていたのよ、私たち」

「え!?そうなの・・・・・・」

「そうよ。誰かに意図的に仕掛けられたのか、それとも自動で発動するようなトラップがあったのか、それはよく分からないけれど・・・・・・。同じ場所を何度も行ったり来たりするようになって、ありもしない敵が見えるようになっていたのよ」

「なんと・・・・・・」

 そういうことだったのか。


「でも、レイがいなかったらこうあっさりと幻影魔法を突破出来なかったはずよ。レイのおかげね、ありがと」

 セレスティーヌはにっこりと微笑んでそう言う。


「ただのトラップだったらいいけれど、もし誰かが故意にかけてきたのだとしたら、ちょっと注意しておいた方がいいんじゃない?」

 ミオの至極当然の意見。


「そうだな」


 俺は【千里眼】を発動させて付近一帯を捜査する。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る