ダンジョン編

第61話 ダンジョンクエスト本格始動

 今日からグレートパーティは、ダンジョンクエストを受注することになった。


 ダンジョンクエストは、通常のクエストと少々異なる部分がある。


 例えば、モンスター記録のクエストというものがある。【解析術】でダンジョン内のモンスターを解析するだけのクエストだ。ダンジョン内には未発見のモンスターがまだいるので、その調査の一環としてのクエストらしい。


 あるいは、パトロールクエストというものもある。その名の通り、ダンジョン内のパトロールをするのだ。


 いかんせん、ダンジョンというのは閉鎖的空間である。悲しいことだが、人目が少ないのをいいことに、他人への追い剥ぎ等の犯罪に走る冒険者も一定数いる。そういう者どもを捕まえて、地上のしかるべき警察機関に引き渡すというのだ。


「最強の魔法使いのレイにうってつけじゃないの、パトロールって」

 とはセレスティーヌは言うのだが、どうだろうか。


 他にもダンジョン爆破解体クエストというものがある。これは、すでに捜索され尽くしたと判断された区画を、火属性魔法を使って爆破解体するクエストだ。そもそもダンジョンクエストの本質的な目的は、各国のダンジョンを完全に解体することにある。いってみれば、爆破解体クエストは一番メインなものと考えてもいい。


 とはいえ、今現在リーティア王国地下のダンジョンは、あまり探索が進んでいるとはいえない状態なので、このクエストを受けるのは当分先になるだろう。


 上記のダンジョン特有のクエスト以外にも、ごく普通のクエスト――モンスター討伐や宝探索、採集など――も沢山ある。どれでも好きなものを選べばいいとのことらしい。


 

 クエスト室の一角に設けられた、ダンジョンクエスト専用の掲示板を眺めながら、俺たちグレートパーティはああでもないこうでもないと議論する。


「だから、まず最初は慎重に、手堅くモンスター討伐のクエストがいいと思うの」

 とセレスティーヌが言えばミオは反論する。


「いやーだ。それより見てよ、この崩落寸前の区画でのお宝探しクエスト。発見した宝物の一割は、手数料としてギルドに取られるけれど、それ以外は全部私たちのものにしていいんだって」

「もう、ミオったら・・・・・・!そんなクエスト、他の荒くれ者の冒険者たちも殺到しているに決まっているでしょ。殺し合いになるわよ」

「いーじゃん、別に。レイがいるんだからさ。いざとなったら【瞬間移動】で逃げればいいんだし」

「うーん、それよりもわたしはダンジョン深奥部での採取クエストがいいかなあ。どんな食材が手には入るか楽しみ・・・・・・」

 じゅるりとよだれを垂らさんばかりのソフィア。


「で、レイはどのクエストがいいの?」

 とほぼ三人同時から問われる俺。


「お、俺?そうだなあ・・・・・・」

 掲示板に張られた無数の依頼用紙を前に、探してみる。


 どうしたものか。セレスティーヌの意見をくんで安全なのにするか。ミオの言うとおり、思い切って危険なのに挑戦してみるか。それともソフィアの食材探しに付き合うか。


 ふと、一つの依頼用紙がなんとなく目に止まる。別に大した意味はなかったが、なんとなくその用紙に惹かれた。


 俺はその用紙を指し示す。


「これとかどうだ?」

「どれどれ・・・・・・」

 一同、その用紙を読み始める。そこには次のような文章が並んでいた。


「依頼内容 魔神水の探索

 どなたか、リーティア王国地下に湧きだすといわれる“魔神水”を探してきて頂けないでしょうか。


 魔神水とは、地下水がダンジョンの様々な要因により、変質したものです。噂によれば、この世のものとは思えないほどの美味だとか。また、摂取すれば魔力の上限値も上昇してくれる、身体能力も飛躍的に向上する、など様々な効果があるとのことです。


 ほんの小瓶程度で結構ですので、誰か持ってきて頂ければありがたいです。それ以外の魔神水はすべて報酬として差し上げます。


報酬 十万リルド」


「へえ・・・・・・どんな味がするのかな?」

 とソフィア。


「魔力がもっと増えるということね」

 とセレスティーヌ。


「身体能力が向上したら、私の武術も更に向上するのよね」

 とミオ。


「それじゃ、これにするか」

「「「うん!」」」

 三人の声が一斉に重なる。


 ということで、このクエストを受けることになった。 


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