第59話 見合い相手

 部屋を出た俺たちは、長い廊下を歩きながら会話をする。


「で、どうするつもり?」

 これまで沈黙を通してきたソフィアが口を開く。


「どうするって、そりゃ見合い相手のところに行って謝る以外ないだろ」

「うーん、でもミオちゃんの見合い相手って、すごく格式高い家柄なんでしょ。謝って済むかな?」

 とセレスティーヌ。


「だからといって、このまま逃亡というのは最悪だろう。なーに、任せておけ。万が一ミオに危害でも加えようとするなら、超上級魔法でこの家ごと吹っ飛ばしてさ・・・・・・」

「そっちの方がもっと最悪でしょう!」

 やべ、ミオに本気で怒られた。


「実際、レイは学校一つ破壊した前科があるからねえ」

 セレスティーヌがため息混じりに呟く。なんだよ、お前を助けるためにしたっていうのに・・・・・・。


「いい、レイ?とにかく魔法は極力使わないこと。分かったわね」

「はーい・・・・・・」

 拗ねたこどものように返事をする俺。


 程なくして合流した先ほどのメイドさんの案内で、俺たちは見合い相手がいるという部屋にまで行く。


 これまた高級そうなドアの前に立つ俺たち。 室内に入ると、応接室と思しき場所がそこにはあった。


 部屋の中央には、一人の青年がソファに座っていた。


 茶色の髪の、がっしりとした体格の青年。年の頃は、二十代前半といったところか。


「あれ、ミオさんじゃないですか?初めまして、僕はガイウス・スローディンっていいます」

 むかつくほど爽やかな笑みを浮かべ、自己紹介をしてくる青年。


 だが、ミオはそんな彼の所作などお構いなしに、スライディング土下座をする。


「スローディンさん、本っ当に申し訳ありませんでした!!!!」


 俺も慌てて、同様に床に土下座して謝罪をする。


「俺からもです、というかぜんぶ俺のせいです。本気で本当にすみませんでした!!!!」

 三十六計あやまるに如かず。いや、違ったか。


「う、うん・・・・・・え?」

 ミオと俺のダブル土下座を目にして、ガイウス・スローディン氏は呆気にとられる。


 いや、そうですよねー・・・・・・。お見合いに来たはずなのに、いきなり相手から土下座される。おまけに、よく分からない男まで参入してくる。誰であろうと、困惑するに決まっている。


 俺たちはその姿勢のまま、ひたすら謝り続けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る