第57話 いざ、グランスタッド家へ

 ミオからの話を聞いてから三日。いよいよミオの実家グランスタッド家に馳せ参じる日が到来した。


 この三日間、ちょっとした準備で忙しかった。いくら偽りとはいえ、ミオの彼氏として実家に挨拶しに行くのだ。普段着で行くわけにもいかないので、色々と洋服の準備やらをしていた。ファッションセンス皆無の俺に代わって、セレスティーヌ、ソフィア、ミオの三人が俺の服装をコーディネートしてくれた。ありがたいことだ。代償に、俺の貯金は服代で吹っ飛んだが。


 さて、いよいよ出発だ。


 ミオの実家は、ゲンデート王国内の首都・ガルドリアの一角にあった。


「ひゃあ・・・・・・」


 グランスタッド邸の前に着いた俺、セレスティーヌ、ソフィアの三人はその威容に圧倒される。


 とにかく巨大な邸宅だった。何坪くらいなんだろう・・・・・・。


「これがミオちゃんの実家・・・・・・?」

「うん、まあね」

「ミオちゃん、生まれてからこんな所にずっと住んでいたのね・・・・・・。なんか、アルカディア荘に住まわせているのが、ものすごく申し訳なくなってきたわ・・・・・・」

 そう言うソフィアに、ミオは急いでフォローを入れる。


「いやいや、ソフィアちゃん。私、全然そんなこと気にしていないからね」

「そうかしら?」 

「そうだよ。アルカディア荘の今の部屋、少なくともアーセナル武芸学院の寮よりは広いしさ・・・・・・」

 あまりフォローになっていないフォローを入れるミオ。


「それに、なによりアルカディア荘はご飯が美味しいからね。グランスタッド家のシェフ以上だよあの味は、ほんと」

「え、そうなの?なら良かった」

 自分の料理を褒められ、ソフィアは機嫌をよくする。


「さーて、それじゃそろそろ行きますか。レイ、準備はいい?」

「ああ、いつでもオーケーだ」 

「りょーかい。それじゃ、セレスティーヌちゃんもソフィアちゃんも、お願いね」

「はいはーい」

 セレスティーヌとソフィアは【透明化】で姿を隠す。


 今回の件、当初は俺とミオの二人で行く予定だったのだが、セレスティーヌがどうしても自分もついていくと聞かなかったのだ。俺たちのことが心配だからなのだろうけれど、ちょっと過剰じゃないかな。


 そういうわけで、結局セレスティーヌもソフィアも着いてくることになった。ただ、ミオが実家に恋人を連れて行くというイベントに、他の女性が来るのも変なので、【透明化】で姿を隠してもらうことになった。何かあったら、すかさず姿を現して助けてもらうことになっている。


「じゃ、始めるよレイ」

「うん」


 俺が頷いたのを合図に、ミオは門の近くに設置されている呼び鈴を鳴らす。


「はいはーい」

 魔法の一種なのだろう、呼び鈴からインターフォンのように声がする。 


「ご無沙汰しております、ミオです」

「あら、お嬢様。これはこれはお久しゅうございます。今開けますね」

 ガラガラガラという音と共に、鉄製の門扉が開く。


 恐らく一流の庭師たちが作り上げたのだろう庭園。庭もひとつの芸術品たりえるのだな、とぼんやりと思ってしまう。


 そうして、俺たちは屋敷の方へと向かう。


 屋敷の玄関には、先ほど応対したと思われるメイドさんが、ピシッとした姿勢で俺たちを待っていた。


「お嬢様、お帰りなさいませ」

 彼女は優雅な仕草でお辞儀をする。


「旦那様が、お待ちですよ」

 俺たちはそのメイドさんの案内で屋敷の中を進む。


 屋敷の中を歩きながら、俺は隣のミオに話しかける。


「しかし、すごいお屋敷だなあ」 

「そうかな?」

「そうだよ。でも、やっぱ緊張してくるな。ミオのお父様と対面だなんて」

「落ち着いて。落ち着いていたら、なんとかなるからさ」


 そうこうするうちに、ミオのお父さんの部屋の前まで来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る