第53話 ダンジョンクエスト

 ちょっと早いが、食堂へ行く俺たち。そこで先ほどのダンジョンクエストについて会議をする。


 最初に口火を切ったのは、セレスティーヌだった。


「で、どう思う?ミオちゃんも、レイも。あのダンジョンクエストについて」

「私は賛成!」

 ミオが勢いよく手を挙げて、身を乗り出す。


「ミオちゃん、随分乗り気みたいね・・・・・・」

「だって、面白そうじゃん!それに、ダンジョン内に特殊な魔物とかいて、レアなアイテムとかも落としてくれるかもだし・・・・・・」


 興奮冷めやらぬミオを落ち着かせて、セレスティーヌは俺に話題を振ってくる。


「で、レイの方はどうかしら?」

「そうだなあ。俺は消極的だけれど賛成、てところかな」

「へえ、どうして?」

 意外だといった表情のセレスティーヌ。


「なんつーかさ、そこまで危険に見合うだけの見返りが得られるかなー、て思うんだよ。アリエスさんも言っていたけれど、ダンジョンって一千年前から存在しているんだろ?そんなところに今更、大したものが見つかるかなーてさ。セレスティーヌはどうなんだ?」

「うーん、私は正直反対ね。理由はレイのと似ているけれど、普通のクエストでコツコツお金貯めた方が、結局割に合うんじゃない?てことね」


 セレスティーヌの言葉を受けて、ミオが返答する。


「えーっ、なによ二人とも!そんな臆病でどうするわけ?」

「いや、臆病っていうわけじゃ・・・・・・」

 ミオはキッと俺をにらむ。


「特にレイ。魔力無限なのに、なんなのその及び腰は?ガツンと挑戦しなさいよ!」


 そんなに叱られてもなあ・・・・・・。


 冷静さを失っているミオを、セレスティーヌは宥める。

「まあまあ、ミオちゃん・・・・・・とりあえず、ソフィアにも意見を聞いてみれば?グレートパーティは何か決めごとがある場合、全会一致が基本よ」

「むー、分かったわよ・・・・・・」

 ということで、その場は何とか収まった。



「えー、ダンジョンクエスト?賛成賛成、大賛成!!」

 話を聞いたソフィアは、諸手をあげて賛意を示す。


「やった、やったー!これでダンジョンクエスト参加決定よ!」

 喜びのあまり、ミオはソフィアに抱きつく。


「・・・・・・ソフィア、ひとつお尋ねしてもいいかな?いったいどうして、そんなにダンジョンクエストに参加したいのかな?」

「えー、だってダンジョンだったら、まだ見ぬ珍味な食材が手に入るかもしれないじゃない」


 ・・・・・・やはりそれか。


「とにかく!これで決まりよ!ダンジョンクエストに行こう行こう!」

 やたらとハイテンションなミオに、セレスティーヌはもう諦めムードだ。


「・・・・・・ミオちゃん、あなたの熱意には負けたわよ。ダンジョンクエスト、いいかもね」

「ほーらね、セレスティーヌもオーケーしてくれた」


 すっかり上機嫌になっているミオは放っておいて、俺はセレスティーヌに訊く。

「セレスティーヌ、本当にいいのか?」

「うん、まあね。なんというか、あそこまで期待しているミオちゃん見ていたら、私も少しはその気になってきたというか・・・・・・」

「そうか。ま、気楽にいけばいいんじゃないのか?」

「うん、そうね。レイもいるから、多分大丈夫でしょう」

 ミオはソフィアと共に小躍りしている。そんなに嬉しいのか。 



「・・・・・・あんなに喜んでいたはずだったのにな」

 またしてもトラップに引っかかり、一時的に麻痺して動きを停止して、ダンジョンの床に転がっているミオを見ながら思う。ここまで不注意が重なるとな。


「【ヒール】」

 俺はミオを回復させる。


「あ、ありがとう~レイ。また助けられちゃったね」

 起き上がってお礼を述べるや否や、またしても先を進もうとするミオ。だが、俺はその肩をがしりと掴む。


「え、ちょっとレイ、何?動けないんですけれど」

 不満そうなミオをよそに、俺は魔法を発動させる。


「ミオ、今日はもう帰るぞ。【瞬間移動】」

「待ってよ!いきなりなによそれ?」

 俺たちは【瞬間移動】でアルカディア荘へと帰還する。

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