第54話 ミオの怒り

「もうっ!なんなのよ!」


 アルカディア荘に着いたなり、ミオは怒りで顔を赤くして、俺に悪口痛罵を浴びせたいだけ浴びせると、自分の部屋へと去って行った。


「ったく、もうちょっと落ち着けよ・・・・・・あのままダンジョン内にいたら、命に関わっていたぞ」

 俺はその背中を見ながら、ひとり呟く。


 どうもミオの様子がおかしい。知り合って十日くらいしか経っていないとはいえ、この数日は感情の起伏がちょっと激しすぎるのではないか。


 しばらくして、ソフィアとセレスティーヌが帰ってきた。


「ただいま~、あれ、レイ。ミオちゃんと一緒じゃなかったの?」

「いや、ちょっとあいつと喧嘩してな・・・・・・」

 俺はダンジョン内での出来事を説明する。


「うーん。確かに、ミオちゃんのここ数日の様子ってちょっとおかしいかもね」

 セレスティーヌは賛同してくれる。


「昨日私が料理の手伝い頼んだときも、うっかりミスが多かったしね」

 ソフィアも同様に感じたらしい。


「なんか悩みとかあるんじゃないか?」

「そうかもねえ」

「じゃあさ、今日の夕飯のときにでも一度それとなく尋ねてみない?」

「俺たちに正直に話してくれるかな?」

「それは分かんないけど・・・・・・でも、パーティの仲間として、あんま隠して欲しくないっていうか・・・・・・」

 セレスティーヌの言葉に、俺はただ黙って頷いて返す。いずれにせよ、このまま放置しておいて良い種類のことでもなかろう。


 なし崩し的に俺たちグレートパーティに参入する羽目になったミオだが、ひょっとしたら俺たちと気が合わなかったのかな。ふとそう思った。



 その日の夕方。結局俺もセレスティーヌも、それからクエストには行かなかった。ということで、ソフィアの指示の下、俺は夕飯の仕度をしていた。


 配膳も終わり、そろそろ部屋にミオを呼びに行こうかと考えていたとき、ミオがキッチンにやってきた。


 ミオはパジャマ姿で、髪もぼさぼさ、一目で寝起きだと分かる恰好をしていた。


「おはよ・・・・・・」

 眠そうな目で俺たちを見ながら、ミオはそう言う。


「あら、おはようミオちゃん。寝ていたの?」

「うん・・・・・・ちょっと不貞寝・・・・・・」

 それから椅子に腰掛けるミオ。ふと彼女の方を見ると、目が合った。


「レイ、今日はごめんね・・・・・・」

 唐突にそう言い、頭を下げてくるミオ。


「いや、俺もちょっと考え無しな行動だったかもしれないって反省しているよ」


 その言葉に、ミオはゆっくりと首を振る。


「ううん。違うよ。レイは何も悪くないよ。私、ちょっとどうかしてた・・・・・・」

 ミオは覇気の無い声でぽつぽつと語る。


 そんな俺たちの会話に、ソフィアが強引に割り込んでくる。


「さあさあ、ミオちゃんもレイも。とにかく、ご飯にしましょう。話はそれからよ」


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