第50話 任務、完了

「マロンちゃん~」

 依頼主のアルスラ貴婦人は、ぐっすりと眠っているペットの猛岩魔竜の巨体に抱きつき、頬ずりする。


「見つかってなによりです」

 俺は精一杯の笑顔をつくり、マロンちゃんの飼い主である貴婦人に応対する。


「本当、あなたたちには感謝しかないわ。ありがとう~。マロンちゃんが悪いモンスターに襲われていたら、どうしようかと心配で夜も眠れなくて。」

 大丈夫な気しかしないがな。こんな強力なモンスター。


「それで、報酬の方は?」

「あ、それはこれからギルドで受け取る予定です」


 アルスラ貴婦人に返事をする俺。


 そのとき、ミオが俺にこっそりと耳打ちしてくる。


「レイ、これって確か報酬一万リルドだったよね?」

「うん、そうだったはずだが」

「いくら何でも安すぎない?これだけ苦労して、こんな巨大なモンスター連れ帰ったのにさ」

「うーん、そうかな」

「そうだよ。もっと要求しない?」

「いや、そういうのも何だか品がないというか・・・・・・」

「品もへったくれもないわよ。命がけだったのよ。それくらいの要求は当然」

 初クエストにしては随分と強気になっているな、ミオは。


 俺たちのそんなやりとりなど気にすることもなく、アルスラ貴婦人は言う。


「そうそう、あなたたちに特別にお礼をしておきたくってね。レイさん、セレスティーヌさん、ミオさん、これ、ほんの気持ちですが」


 貴婦人は、俺たちに綺麗な袋を渡してくれる。


「え、これはなんですか?」

「大した額じゃないのだけれどね。特別手当よ」

 その場でいきなり袋を開けようとしたミオを、セレスティーヌが慌てて止める。


「ありがとうございます。アルスラさん。それでは私たちはこの辺で失礼します」

「ええ。ありがとうね、素敵な何でも屋さん」

「こちらこそです」


 ミオが袋を開けたくて開けたくてたまらないという様子なので、いそいそと【瞬間移動】でギルドへと向かう。



 袋の中身は一万リルド金貨十枚だった。三人で合計三十万リルド。


「ひゃあ・・・・・・」

 高価な金額に驚きと感嘆の念を漏らす俺たち。


「あの口調だと、少ないのかなと思っていたんだけれど・・・・・・」

 セレスティーヌが言う。


「いや、多分あの人にとっては少額なんだろうよ」

「えー、そう?」

 ミオが疑問だという顔をする。


「そうだよ。あの邸宅といい、あんな巨大なドラゴンを飼っている点といい、ものすごい金持ちなんだよ。これくらい、はした金なんだろ」

「うーん・・・・・・世の中、あるところにはあるものなのね、お金」

 不服そうな視線を手の中の金貨に向けるミオ。


「まあ、仕方ないじゃん。それじゃ、アリエスさんとこ行って、クエスト完了の報告しよ」


 セレスティーヌに促され、俺たちはクエスト室へと向かう。

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