第45話 ミオとの会話

 とんとんとん、という包丁がまな板を打つ音が聞こえる。


「ミオちゃん、結構料理上手ね」

「はい、まあ。武芸学院で色々とさせられてきましたからね」

「魔法学院と違って、武芸学院はもっと学ぶことが総合的って聞くわよね」

 セレスティーヌが食器を取り出しながら、付け加える。


「そうなのか?ミオ」

「はい、確かにそういう側面はありますね。私は剣術科でしたが、それでも料理やら乗馬とか、一通りやりましたしね」

「その点、うちの魔法学院なんかとは大違いよね。こっちはひたすら魔法についての勉強勉強、て感じだし」  

「うーん、どっちがいいかは分かりませんよ。器用貧乏というか、多芸は無芸な感じもしますしね」

「ちょっと話は変わるけれどさ、ミオちゃん。その敬語、やめたら?私たち、同級生だし。というか、よく考えたら私たちの中で一番年上じゃん」

 セレスティーヌがミオに言う。


「そう・・・・・・ですかね?・・・・・・そうかな・・・・・・?」

「そうよ。別に外見が幼く見えるとか、気にしなくていいんだからさ」

 ソフィアも援護する。


「了解しました。いや、分かったよ。セレスティーヌちゃんにソフィアちゃん、それにレイもね」

 ミオがたどたどしく言葉を修正していく。


「やっぱ、慣れないものだけれどね。私、どうしても実年齢より年下な外見と、武芸学院飛び級ってのがあって、敬語で話すのが習慣になっているみたいね」

「じゃ、今日からその習慣やめるようにすればいいじゃん」 

 セレスティーヌはこともなげに言う。


「そうそう、ここじゃ最年長なわけだし、遠慮しなくていいだろ」

「おっと、そろそろお夕飯が出来上がりそうね」

 ソフィアがぐつぐつと煮立つ鍋の中を確認しながら、そう告げる。



 ということで、ミオの歓迎会も兼ねた夕食もつつがなく行われた。


 食事が一段落したところで、セレスティーヌがミオに尋ねる。 

「そういえば、ギルドメンバーとなったからには、ミオちゃんもクエストに参加しようと考えていたりする?」

「もちろん!」

 ミオは自信満々で答える。


「ふーん、どんなクエストに興味があるのかな?」

「そうねえ、やっぱりモンスター討伐とかが、一番憧れるよね」

「そんなものかな?」

「ちなみに、セレスティーヌやレイは、普段どんなクエスト受けているの」

「うーん、例えばね・・・・・・」

 セレスティーヌと俺は、今日こなした迷子の子猫探索のクエストのことなどを話す。


「へえ、結構ほのぼのした内容のもあるのね。私、そういうのやりたいな」

「いや、そんなしょっちゅうあるかな?」

「どうでしょうねえ」


 セレスティーヌが話題を変える。

「ところでさ、ミオちゃんはクエストソロで受ける予定?それとも、誰かパーティを組む予定の人がいたりする?」

「いや、何も考えていないなあ」

「だったらさ、うちのパーティに入らない?」

「え、うちのパーティ、ていうと誰がいるのかな?」

「私、レイ、ソフィアの三人だけれど」

 ミオは意外そうに目を丸くする。


「へえ、三人はパーティを組んでいたんだね」

「うん、そうよ。ごめんね、なんか言いそびれちゃったみたいで」

「うんうん、別に構わないけれど」


 ミオは首を振る。それから、俺たちの顔を見回す。


「そうだなあ。今日会ったばかりだけれど、三人とも信用してよさそうみたいだし・・・・・・分かった、三人のパーティに参加します。よろしくお願いします」

 ミオは頭を下げる。


「こちらこそよろしく~!ミオちゃん、歓迎するわよ」

「わたしもね。しばらくはあまりクエストには出ないで、アルカディア荘にいるつもりだけれど・・・・・・これでも、パーティの立派なメンバーなんだからね」

 ソフィアも挨拶を返す。

「俺からもよろしくだよ、ミオ」

 そういうことで、ミオのパーティ加入が決まった。





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