第46話 ミオの初クエスト

「えー、それ本当なの?」

「そうなのよ」

 俺の魔力無限他、諸々の能力を聞いたミオは心底驚いていた。


「じゃ、レイってどんな魔法でも使い放題なんだ。おまけに、武器も使いこなせる。なんか、ずるいな・・・・・・」

 ミオは羨ましそうに俺を見てくる。


「まあまあ、ミオちゃん。神様とやらがそうしたんだから、レイの突出した能力については仕方ないと考えてさ。それよりも、せっかくそんなのが仲間にいることをフルに利用して、クエストをこなしていきましょうよ」

 セレスティーヌはそう言って、ミオを宥める。


「そうそう。高難度のクエストも楽々行けるだろうから、とことんレイを利用するのよ」

 ソフィアも同調する。


「そんなものかなあ」

 ミオは腑に落ちないという顔をする。


 

 ということで、今日はミオの初クエスト、初陣だ。


 俺、セレスティーヌ、ミオの三人は、クエスト室へとやって来た。 


 掲示板の前でクエストを探す俺たち。


「うーん、どれがいいかな~。レイがいるから、いきなり高難度のクエストでも平気かもだけれど」

「でも、ここのところ、あまり高難度のがないよな」

「そうよねえ。あ、報酬一万リルドのがあるわね。これにしとく?」

「どれどれ・・・・・・」

 俺はクエスト内容を確認する。


「依頼内容 ペット探索

我が家のペット・マロンちゃんが、ここ数日行方不明です。デルソラ火山地帯の辺りを散歩させていた際、目を離した隙にいなくなりました。悪いモンスターに襲われないかと心配です。どなたか探していただけませんか?」


「またペット探索?」

 ちょっと不満な感じだな。


「いいじゃん、ミオちゃん初めてのクエストなんだし。ミオちゃんも、これでいい?」

「うーん、そうね。最初はこんなものがいいかもね」

「あれ、何か不満?」

「いや、そこまでじゃないけれどさ。ただ、私の愛剣“雷凰の太刀”がそこまで活躍できないかなー、て少し思っただけ」

 ミオは背中に装着した長い刀に触れる。


「いや、そんなことはないんじゃないかな。探索クエストだと侮っていたら、痛い目に遭うかもよ、ミオちゃん。このデルソラ火山地帯って、時間帯によっては結構モンスターが出現するみたいだし。 “雷凰の太刀”でモンスターを迎え撃つことになるかもしれないよ」

「うーん、じゃ、それで」


 こうして俺たちは、クエストを受ける。


 【瞬間移動】で、俺、セレスティーヌ、ミオの三人は目的地のデルソラ火山地帯へと向かう。


 火山地帯、といっても溶岩がごうごうと常に流れ出ているような場所、とは限らない。そもそも火山活動は、活発になったり穏やかになったりするものだろう。


 【瞬間移動】して最初に目に飛び込んできたのは、ゴツゴツとした岩肌が一面に広がる荒涼とした風景だった。


 生き物といえば、地味な色の地衣類が、岩の表面にところどころ張り付いているぐらい。それ以外は、無機質な岩石で構成されている風景だ。


「さーて、それじゃとっとと【千里眼】で見つけようかね。セレスティーヌ、それで今回の探索目標のマロンちゃん、てどんな外見なの?というか、そもそも何の種類の動物なの」

「はいはい、えーと、ね・・・・・・」


 セレスティーヌは依頼用紙を取り出し確認する。


 依頼用紙はただの紙ではない。ちょっとした魔法の力で、そこに【写映術】で撮った動画や画像などを掲載することもできる。不特定多数の人に見せたくない画像とかは、隠しておいて依頼を受注したメンバーにだけ見られるようにすることも可能だ。


 用紙を手にして、画像を確認していたセレスティーヌは怪訝な顔をする。


「・・・・・・あれ、おかしいな。依頼主さんのミスだろうけれど、画像もなにも載っていないよ」

「え?でも、何の動物かとかの情報はあるだろ」

「うーん、それもないみたいね・・・・・・」

「じゃ、どうするの?」

 ミオが言う。


 途方に暮れる俺たち。しばらくしてセレスティーヌが口を開く。


「うーん、とりあえずレイ、【千里眼】を発動してこの辺り一帯を調査してみて。ペットと思しき生き物がいたら、教えて」

「了解。しかし、何の生き物なんだろうな」

「多分、ワンちゃんとかでしょ。散歩の途中でいなくなったとかいっているし」

「そうかしらねえ・・・・・・」

 ミオが疑問だという風に首をかしげる。


「とりあえず探してみるか。それ、【千里眼・中】」

 俺はデルソラ火山地帯を探索する。


「どう、レイ。ペットと思われる生き物は何かいる?」

「いや、今のところは特に・・・・・・てか、ここってホントに何もないんだな。どこまでいっても岩、岩、岩だな」

「まさかすでにモンスターに捕まって食べられているわけじゃないでしょうね・・・・・・」

「うーん、そもそもモンスターすら見当たらないからなあ・・・・・・」

「レイ、ごめんね。なんか一人で探させちゃって・・・・・・」

 ミオが申し訳なさそうに言ってくる。


「いや、構わんよ。それより、装備品とかのチェックしておけよ」

「うん、分かった」

 ミオは俺の言葉を受けて“雷凰の太刀”を背中の鞘から抜き、メンテナンスを始める。


「素朴な疑問なんだけれど、今回の探索対象の“マロンちゃん”が見つかったとして、どうやってそれを“マロンちゃん”と判断するんだ」

 俺の疑問に、セレスティーヌはしばし考えたのち答えてくれる。


「えーと、さ。確か【解析術】使えば、そういうペットとかの固有名も出てくるんじゃなかったかな」

「そうなのか」

「ええ。そのはずよ。普段はそんな固有名がつけられた対象を相手に【解析術】なんて発動しないから、ピンとこないかもしれないけれど」 

「なるほどな」

 この前の子猫探索だって、依頼用紙にちゃんと子猫の画像が貼ってあったしな。それで【千里眼】で一発で発見できた。


 小一時間ほど探したが“マロンちゃん”と思しき存在は見つからなかった。

「うーん、本当に食べられちゃったのかな」

 俺は肩を落とす。


「いや、多分隠れているとかじゃないかな。気長にしていれば、きっと見つかるよ」

 ミオが励ましてくれる。


「とりあえず、お昼にでもしない?」

「そうだな。一旦休憩にした方がいいだろう」


 セレスティーヌの提案を受けて、俺は【千里眼】を停止して、休憩の準備に入る。


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