ミオ編

第42話 アリエスさんとの会話

 迷子になったペットの猫を探すというクエストをこなして、俺とセレスティーヌはクエスト室に帰還する。


「ていうか、六才の男の子からの依頼なんて、初めてだよな」

「よねー。でも良いじゃない、たまにはこういうほのぼのしたクエストも」

「報酬はたった六百リルドだがな」

「なにいってんの。【千里眼】で一瞬で発見したくせに。それに、あの子の笑顔見た?あんな嬉しそうなこどもの顔が拝めただけで、した甲斐があるってものよ」

「うーん、そうかあ?」

 俺、幼いこどもってあまり好きじゃねえんだよな。ま、それはさておき。

 

 報酬を頂こうと、アリエスさんのところへ向かう俺。だが先客がいた。


 歳の頃合いは俺よりすこしばかり下ぐらいか。童顔の少女が、そのちっこい身体に似合わない長い刀を背負って、アリエスさんとなにやら口論していた。


 しばしの間、それを遠巻きに眺めながら待つ俺。「だから、定員が・・・・・・」「どうにかならないんですか・・・・・・」などという言葉が断片的に聞こえてきた。


 結局、話はまとまらなかったのか、少女は腑に落ちないといった顔でアリエスさんの所を後にした。


 俺はクエスト達成の報告をしにいく。


「あら、ご苦労様・・・・・・あ、そっか。その手があったのか」

 ポンと手を叩き、頷くアリエスさん。


「いったいなんですか、アリエスさん?」

「いえ、ちょっとね・・・・・・あ、これは報酬の六百リルドです、お疲れ様でした。それでさ、たった今、私と言い争っていた女の子がいたでしょ?」

「はい、いましたね」

「あの子ね、ちょっとしたワケがあってつい最近ギルドメンバーになったのだけれど、住む場所が欲しいっていうのよ。でも、ご存じの通り現在ギルド寮はどこも定員がいっぱい。だから無理です、そこをなんとか、てな感じでずっと押し問答していたのよ」 

「はあ・・・・・・」

「で、私も今あなたを見て思い出したのだけれど、アルカディア荘があるじゃないの。あそこ、まだ空き室はあるわよね?」

「ええ、俺とセレスティーヌ、ソフィアの三人しか住んでいませんから」

「それはなにより。ねえ、良かったらあの子を見つけたら、アルカディア荘のこと教えてくれない?」

「えー、どうしてですか」  

 不満を漏らす俺。


「だって、可哀想でしょ?そう思わない?こちらとしても、こうしょっちゅうギルド寮の入寮を断ってばかりだと、沽券に関わるのよ。ま、別にあの子を見かけたらでいいからさ、よろしくね」

 と半ば強制的に頼まれた俺だった。


 セレスティーヌのところに戻る。


「ちょっと遅かったね。アリエスさんと何か話してたの?」

「うん、ちょっとな」

 俺はアリエスさんから聞いたことを、セレスティーヌに伝える。


「ふーん。いいんじゃない、別に」

「いいのかよ」  

「うん、だってアルカディア荘の仲間が増えるのは、基本的に嬉しいし」

「どんな奴かもまだ分かってないんだぞ」

「それはまあ、一度直に会ってみれば、大体把握できるでしょ」

 そんなもんかなあ。まあ、そもそもソフィアだって、俺たちをすぐに受け入れてくれたしな。


「で、午後からのクエストは?」

「うーん、ちょっと決め手に欠ける感じかな。それより、とりあえず昼食にしねえか?」

「そうね」

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