第39話 攻撃
ドドド、ドドド、と大地を揺るがしながら馬車が近づいてきた。
猛スピードで走ってきたその車体が、突如現れた土と岩で出来た壁を前にして、急ブレーキをかけたみたいにギギッと急停車する。
「どうした?」
車内からの問いかけに、御者が答える。
「道の真ん中に、突然壁みたいなものが出現しています」
御者がそう答えるのとほぼ同時に、俺は攻撃を開始する。
大剣を大きく振りかぶる。
「魔聖大剣ディアボロス秘技・【魔神の旋風刃】」
ディアボロスから放たれた衝撃波が、馬車片側の車輪を二つとも破壊する。
車輪を破壊されて馬車はバランスを崩し、傾く。
「くそ、敵襲だ!迎え撃て!」
上部で護衛任務に当たっていたボウガン射手と魔法使いは、臨戦態勢に入る。
「どこから襲ってくるか分からないぞ、気をつけろ!!」
俺は【透明化】を解除して、奴らの前に姿を現す。
魔法使いはすぐに俺の姿に気付く。
「あ、いたぞ!喰らえ、【ライトニング・スピリット】!」
輝く無数の雷が束になって俺に向かってくる。
俺はディアボロスを掲げる。
「【神魔鏡】」
俺の前方の空中に、一枚の巨大な鏡面が出現した。
ドンガラガッシャーンッ!!!敵の魔法使いが放った【ライトニング・スピリット】は、【神魔鏡】に反射されて、その攻撃はそっくりそのままにお返しされる。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
己の放った攻撃がまさか自分の方に返ってくるとは思わなかったのだろう。魔法使いは驚愕していた。
【ライトニング・スピリット】は、見事に馬車の上部を吹き飛ばしてしまった。そこに陣取っていたボウガン射手と魔法使いも、衝撃波で同様に飛ばされ、その身体は地面にごろんと転がる。
半壊した馬車の前方部に対して、軽く剣を振るう。
「【魔神のそよ風】」
ガチャン、という音と共に馬たちをつなぎ止めていた留め具が壊れる。この攻撃には、かけられていた魔法を解除する効果もある。物理的にも魔力的にも自由になった馬たちは、解放されて颯爽とその場から離れ去ってしまった。
「畜生、どういうことだ?スタン、ディール、大丈夫か?」
半壊の馬車から茶髪の剣士が出てきた。どうやらこいつがリーダーと思われる。ソフィアから聞いたところ、確か名前はアスラとかいったかな。
茶髪剣士アスラは俺の方を見ると、怒りで顔を紅潮させる。
「貴様がやったのか・・・・・・喰らえ、【ウィンド・ボム】!」
疾風が俺の周囲で炸裂する。風属性の爆発魔法とでもいうべきか。
だが、そんな程度の攻撃、俺には効かない。
「ちょいとごめんよ、【底なし沼の呪縛】」
アスラの足下に、突然沼が出現する。ドロドロとしたぬかるみに彼は足をとられ、身動き出来なくなる。さらに、ぬかるみは生き物のように彼の腕にもまとわりつき、動きは完全に封じられる。
「くっ・・・・・・!!」
レベル違いの攻撃に、アスラは悔しそうに歯がみして、ものすごい形相で睨みつけてくる。
俺は彼を宥めながら話を開始する。
「まあまあ、落ち着きたまえ。我々は君たちの命までを取ろうなどとは考えちゃいない。ただ、少しばかり金目の物をおいて頂きたいのでね」
魔法【ボイスチェンジ】で、俺の声は壊れたロボットのようなものになっている。身元がバレるのを用心するため、俺たち三人ともにこの魔法をかけている。というか、こんな魔法あったんだな・・・・・・。
俺は岩壁の陰に待機していたセレスティーヌとソフィアに聞こえるように呼びかける。
「 “真紅”と“群青”、出てきていいぞ」
本当の名前で呼び合うわけにはいかないので、俺たち三人は事前にコードネームを決めておいた。それぞれ羽織っているマントの色をコードネームにしていて、セレスティーヌが“真紅”、ソフィアが“群青”、そして俺が“翡翠”だ。
仮面を被ったセレスティーヌとソフィアが姿を現し、俺の隣に立ってアスラを見る。ソフィアは仮面の下でどんな表情をしているのだろう、少しだけ思った。
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