第38話 作戦開始

 ということで、作戦決行の日となった。


 朝から、ダイニングで朝食をとっていた俺は、その旨をソフィアに告げる。

「それで、ソフィアはどうする?俺たちについてくるか」

「う~ん」

 思案顔のソフィア。


「まだ迷っているの?」

「うん、まあね・・・・・・あの人たちにもう一度対峙するのは、やっぱり恐いっていうかさ」

「その気持ちは当然よ。私とレイで行っても全然構わないからね」

「そうよねえ・・・・・・」

 腕を組み、五分ほど考え込むソフィア。それをじっと待つセレスティーヌと俺。


「・・・・・・よし決めた。わたしもあなたたちと一緒に行きます」

 意を決したように宣言するソフィア。


「本当に大丈夫?無理しなくていいのよ」

「ありがとう、セレスティーヌ。でもね、ホントに大丈夫なの。やっぱりあなたたちだけに任せておいたら、後々きっと後悔しそうだしさ」

「・・・・・・分かったわ。でもソフィア、やっぱりきつそうだったらすぐに私に伝えて。それが条件よ」

「了解」


 話がまとまったセレスティーヌとソフィアに俺は声をかける。

「おーし、そうと決まれば二人とも、準備開始だ」

「うん」

「おっけー」


 俺は二人に黒い仮面を渡す。

「二人とも、襲撃の際には、それで顔を隠してくれ」


 手にした仮面を見て、セレスティーヌは聞く。

「レイ、これって一体どこで手に入れたの?」


 ソフィアも興味津々といった感じで俺を見つめてくる。

「ああ、それか。【創造術】で作ったんだが、何か問題があったか?」

「いや、なんというか不格好だなー、て・・・・・・」

 ソフィアも賛意を示して頷く。


 確かに、お世辞にもカッコいいとは言えない仮面だ。左右のバランスも、目や鼻、口の位置も不自然でお世辞にも整っているとは言えない。


「仕方ないさ。俺、あまり想像力豊かじゃないからさ。それが精一杯。スラック商店とかで買うことも考えたが、万が一足がつくといけないからな」

「いや、責めているわけじゃないよ?よくよく見たら、不格好な中に愛嬌があるような、ないような・・・・・・?」


 手にした仮面をもてあそんだり、顔に試着したりしながらクスクスとおかしそうに笑うセレスティーヌとソフィア。


「うんうん、よく見たら可愛い?かな」

「二人とも、フォローしているようで、全然フォローになっていないぞ・・・・・・」

 ま、別にいいけどさ。


「とりあえず、それで顔はちゃんと隠せるだろ?」

「うん」

「まあね」


 俺は二人を見回して言う。

「それじゃ、出発するぞ」



 【瞬間移動】でリーティア王国内の王都スレミアの近郊へと移動した。


 都会の王都スレミアも、一歩出れば、長閑な緑の光景が広がっている。


 事前に決めておいた道路の脇に待機する。


 【千里眼】を起動して敵の位置を確認する。

「目標はあと十分程度でここを通過する予定だ。準備を開始しよう」


 俺たちは仮面を被る。

「それじゃ、行くか。【進入禁止の岩壁】」


 俺が魔法を発動させると、大地が盛り上がり、高さ五メートル近い壁が道の真ん中に出来上がる。


「セレスティーヌ、万が一奴らが馬車のスピードを緩めずに迂回しようとしたら、そのときは迎撃を頼む」

「分かったわ」

 セレスティーヌは壁の後ろ側へと行く。


「ソフィアはセレスティーヌのサポートに回ってくれ」

「はい」

 ソフィアは素直にセレスティーヌについていく。


「さて、俺も準備をするか」


 俺は魔聖大剣ディアボロスを装備する。漆黒の刀身が陽光を吸い込み、不敵に輝いていた。


 グッと柄を握りしめると、大剣は俺の魔力に反応するように薄紫のオーラを発散させる。


 まっすぐな道の続く地平線の彼方から、土煙が舞い上がり始めた。いよいよ奴らが来たようだ。


 俺は【透明化】で姿を隠し、道路脇に待機する。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る