第35話 入室・片づけ
食後。俺とセレスティーヌはソフィアさんに連れられて、部屋へと向かう。
階段を登り、二階の一角にある部屋へと案内される。
「はい、ここが今日からあなたたちが使う部屋です」
畳敷きの、お世辞にも広いとは言えない部屋だった。
「とりあえず頑張って片付けておいたわ。狭くて申し訳ないけれど、ひとまずここで我慢してちょうだい」
「分かった。それで、ここが俺の部屋ってことでいいんだな?」
「うん、まあそうね。セレスティーヌの部屋は、一階のわたしの部屋の隣になるけれど、いいかしら?」
「全然おっけーよ」
セレスティーヌの言葉に、俺も続ける。
「正直、屋根があるだけでもありがたいよ。今まで、テント生活だったからな」
「ところで、ここの家賃って具体的にはどれくらいなの?格安とはいうけれど、よく考えたら実際の値段は聞いていないのよね」
セレスティーヌが当然の質問をする。
「あ、それね。確か、一ヶ月で二百リルドくらいだったかな」
「やっす・・・・・・」
セレスティーヌと俺は、予想以上の低価格を告げられて驚く。
「それ、ギルドの食堂での一食分にもならないじゃん」
「ま、どうせ取り壊しの予定だったからね。別に文句はないでしょう?」
もちろんだ。
「ふぁぁぁぁぁ・・・・・・」
そのとき、思わず俺は大きなあくびをした。
「よく考えたら、一晩中食材探しに奔走していたから、眠気がすごいな・・・・・・」
「じゃ、早速部屋の中で寝ていく?布団はもう用意しているけれど」
ソフィアが言う。
「ああ、お言葉に甘えて休ませてもらうよ。セレスティーヌも休まなくて大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫みたい」
「そうか。じゃあ、また夕方にでもな。俺は一眠りする」
「うん、じゃあまたね」
そういうことで、セレスティーヌとソフィアは去る。
俺は晴れて自分のものになった部屋へと入る。
室内を改めて見回す。古びているが、ソフィアの手入れが行き届いているのか、汚れている感じは一切しない。
「さーてと、布団は・・・・・・お、あったあった」
部屋の片隅に綺麗にたたまれていた布団を取り出し、俺は床に敷く。
布団の上にごろんと仰向けになり古びた天井を眺めながら、屋根のある家に住めるようになったありがたさを感じる。
だが、それ以上のことを考える暇もなく、睡魔に襲われて瞬く間に俺は眠りに落ちた。
目が覚めた。窓から夕陽が差し込んでいた。
「もう夕方なんだな・・・・・・」
俺はのそのそと起き上がり、着替えて外に出る。セレスティーヌとソフィアは何をしているんだろう。
キッチンを覗いても二人の姿はなかったので、とりあえず外に出る。
庭と呼ぶべきかは分からないが、アルカディア荘の前にある開けた空間で、何かの用具を手にして忙しなく動き回る二人がいた。
セレスティーヌが俺に気づき、手を振ってくる。
「あ、レイおはよ~」
ソフィアもそれに続く。
「ようやくレイくん起きたのね。よかった。レイくんに手伝って欲しいことがあるんだけれどね」
ソフィアは俺に近づいてくる。
「手伝い?なんでしょうか」
「大したことじゃないんだけれど、片付けの手伝いをしてくれないかしら」
「お安い御用です」
「よかった~。ほら、レイくんって魔力無限なんでしょ?だから、アルカディア荘の他の部屋に詰め込んだ不要品を【瞬間移動】で、外に出してくれないかな、て」
「全然大丈夫だけれど・・・・・・てか、他の部屋ってどんな状態なわけ?」
「そうねえ。ま、来てくれたら分かるわよ」
ソフィアに連れられて、アルカディア荘の仲へと再び入る俺。
「うわあ・・・・・・」
思わずそんな声が漏れる俺。
若干ひき気味の俺の様子を見て、ソフィアは手を合わせて謝罪する。
「ごめんねえ。このアパートを一人で占拠していたものだから、いらない物を空いた部屋にこうやって突っ込んでいたりしたのよ。だから、こういう状態の部屋ばっかり・・・・・・」
「にしては、俺の部屋は綺麗になっていたな」
「うん、あなたたちが住むために、【瞬間移動】で大急ぎで他の部屋に移して、掃除したの。でも、その【瞬間移動】で今日の私の魔力はすっからかんよ・・・・・・」
「分かった分かった。それで、どこへ移動させればいいんだ?」
「近所にゴミ捨て場があるからそこにお願い。あ、ゴミ捨て場の場所はね・・・・・・」
ソフィアはゴミ捨て場の場所を教えてくれる。
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