第39話Love is...

愛とカナ様はひろしの部屋へ帰ってきた。

カナ様の手を離す愛。

「ありがとう…カナ様…楽しかった。」

指先を愛に向けるカナ様…。

「本当に良いのだな?」

愛は目を閉じる…。

「良いよ。」

カナ様の指先から一瞬の閃光が走る。

「もう良いぞ…久しぶりの母の顔…見にいくが良い。」

「ちょっといってくるわ!」

愛から元の姿に戻ったひろしは母に会いに茶の間へ向かった。

バッチ~ン!

バチバチバチバチバチぃ~!

「ひろしぃ!あんた今までどこにいってたぁー!」

バチこ~ん!

母の愛情ビンタをくらい小一時間説教されたひろしはぼっこり頬っぺたで自分の部屋へ戻った。

「良い顔をしているではないか。」

カナ様はニヤニヤ。

「あのぅ~前回みたく愛の存在は?」

頬っぺたを擦るひろし。

「消えてないよ、姿を元に戻しただけぇ…愛は行方不明。」

(口に入れ!)

鼻くそを飛ばすカナ様。

(やめろこの!…そうかぁ…それならずっと家出していた事になるなぁ…。)

ビンタを食らった事に納得したひろし。

「ひろしぃく~ん…我の頭にたんこぶが!…缶…痛かったわ…うふん。」

ブォーン!

「てめー!今までの無礼な態度はなんだこらぁ!」

ドカバキドカバキドカぁ~!

チーン♪

しっかり覚えていたカナ様。

(ご…ごめんなさい…がく。)

男に戻った事を少し後悔したひろしだった…。

突然の愛の失踪に世間は騒いだ。

それからしばらくの月日が流れ、愛の失踪も話題にならなくなった頃。

「やったよ!カナ様…アイリのライブチケット手に入ったぁ~握手券付き。」

アイリのチケットを握りしめ、部屋に帰ってきたひろし。

カナ様はまだ部屋に同居していた。

ベッドに寝転がるカナ様はチケットを召還する。

「我もあるよ!握手券付き!」

(きたねぇなぁ…)

「カナ様も行くんですか?まさかね。」

「行くよ。」

カナ様は一緒にアイリのライブに行く気満々だった。

ライブ当日

ひろしはいつもより綺麗な服を着てカッコつけていた。

(まさか黒マントじゃないだろうな…。)

カナ様の服装が気になるひろし。

カナ様は帽子とサングラスで顔を隠し、アイリTシャツで決める。

ひろしは引きながらも安心していた。

愛の姿でアイリのそばにずっといたが、ひろしの姿でアイリに会うのは初めての事。

浮き足ルンルンひろしとカナ様は小さなライブハウスに来ていた。

久しぶりのアイリの登場を待つひろし。

曲が流れスポットライトがステージにいるアイリを照らす。

「アイリぃー!」

ひろしは自分の声をアイリの鼓膜に焼き付けたい一心で叫ぶ。

(久しぶりだね…アイリ!やっぱり可愛いなぁ。)

ひたすらアイリの姿をまばたきせず脳裏に焼き付けたいひろし。

嬉しい楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

「皆さん…今日は来て頂きありがとうございます…最後に私の大切な愛の曲を歌わせて頂きます…愛は今もどこにいるかはわかりません…でも、きっとどこかで元気でいる…私は皆さんに愛を忘れてほしくない!…聴いて下さい…ラブウェアー。」

アイリはどこか遠くを見つめるように歌い、愛との楽しかった日々を思い出しては声が少し震えていた。

(アイリ…ごめんね。)

ひろしはアイリの歌う自分が歌っていたラブウェアーに聴き入り、楽しかった日々を思い出し目を潤わせる。

ライブは終わり…握手会が始まった。

握手券を持つ人達が列を作り並ぶ。

ひろしはカナ様の後ろに並んだ。

(アイリと握手かぁ…なんて言おうかな?)

ドキドキしながら待つひろし。

顔を隠すカナ様と握手するアイリはお姉さんとは思わなかった。

ひろしはアイリと握手をする。

「ずっとファンです…これからも頑張って下さい。」

アイリの手は細く、男のひろしが力を入れたら壊れそうだった。

「ありがとう…また…きて…ね…。」

アイリは不思議そうな顔をしていた。

握手会が終わったひろしとカナ様は家に帰るため駅に向かって歩く。

「いやぁ~やっぱり可愛いなぁ~カナ様だってそう思うでしょ?女好きだもんねぇ。」

無視をしていたカナ様。

ひろしは興奮しているのでお構い無しにしゃべり続ける。

(来たか…。)

カナ様は姿を消した。

「アイリの魅力はやっぱりあの可愛いお目めだよねぇ~いや…やっぱり全部かななんて…あれ?カナ様?お~い?…まぁいっか…。」

いない事に気づいたが、別に気にしないひろしは一人で歩く。

「あの…ちょっと待って!」

ひろしの後ろから突然聞こえた呼び止める声。

すぐに誰の声かひろしは気づいた。

「アイリ…どうしてここに?」

ひろしのもとへ駆けよるアイリ。

「あなた…本当は愛なんでしょ?…私…不思議だけどわかるの…どこにいってたのよ…心配したんだから…本当に…。」

アイリはひろしを抱きしめた。

アイリの肩を優しく抱き、そっと身体を離すひろし。

「俺は愛じゃないよ…ひろしって言うただの追っかけです。」

うつむいてしまうアイリ。

「そうですよね…あなたは愛じゃない…。」

だが、すぐにアイリはひろしの顔を力強い目で見つめる。

「だけどあなたは私のことずっと好きって言ってくれた…私を守ってくれた…あなたと居ると本当に楽しかった…もう離れたくない…ずっと一緒に居たいの…。」

初心者ひろしくんはすぐに理解できない。

心臓が飛び出しそうなひろしくんは聞き直す。

「お、俺と一緒に居てくれるって事かな?」

「私のそばにいて…。」

赤める顔で目をそらしながら言うアイリ。

最終確認したいひろしはもう一度聞く。

「お付き合いするってことで良いのかな?」

アイリは真っ赤な顔をして首を縦に動かした。

「や、やったぁーーーーー!」

ひろしの心は宇宙の果てまで飛んでいきそうなくらい喜び飛びあがる。

ひろしとアイリは恋人同士になった。

その様子を宙に浮かびご覧になっていたカナ様。

(声でけぇわ…アホ。)

黒マントを翻し闇の中へ消えたカナ様は二度とひろしの前に姿を現す事はなかった。

我は大道師


叶・えーる


なんちゃってー。


ちゃん♪


ちゃん♪


終わり。

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