第38話大好きだから…

愛梨の前では明るく振る舞う姿を見せていた愛だったが、ボロいアパートへ帰ればカナ様とにらめっこの日々が続いていた。

ラヴィス相田記念会館ライブの前日の夜もにらめっこする愛。

(俺はどうしたら良いんだ…愛梨と一緒に居たい…でも…このまま騙していくのも嫌だ…一体どうすれば…。)

そう考えては、ぼぉ~とカナ様の顔を眺めていた。

ちゃぶ台に向かってせんべいぼりぼりカナ様は毎日ぼぉ~と眺めてくる愛に痺れを切らした。

(もう良いっての…しょうがない奴だ!まったく!)

「本物として生きるが良い。」

カナ様は愛にそう伝えた。

(本物としてか…)

そして愛は決断した。

ラヴィス相田記念会館ライブ当日。

愛はいつもの格好でいつも通り仕事へ向かう。

リハーサルも愛梨と仲良く無事に終わらせた。

相田記念会館に詰め寄るラヴィスのファン達。

人気アイドルに返り咲いた愛梨は心が弾んでいた。

愛はいつも以上にテンションをあげる。

ラヴィスの二人がステージに現れると狂気じみた大声援がファン達から飛んできた。

可愛い衣装に身を包み、歌って踊る愛と愛梨。

愛梨は苦しい日々を思い出し、今またこうしてたくさんのファンの前で歌える事に喜びを噛みしめていた。

愛はファン達に感謝の思いと愛梨への想いを胸にパフォーマンスで魅せるように努力をし続ける。

このライブはラヴィスにとって最高の思い出になった。

そして最後の曲。

ライブラストはラブ・エンドで終わる。

♪~

♪「あいしていたのよ…」

♪「りょう手を振る君の笑顔…」

♪「がまんしている私…。」

♪「とおくに消えていくあなた…」

♪「うしろ姿をただ見つめるの…」

♪「さよならはいや…」

♪「よびかけてももう遅い…」

♪「ないてる私の心は…」

♪「ラブエンド」

ライブが終わったラヴィスの二人は控え室に戻る。

大道マネージャーは控え室で成功を喜んでいた。

「大道さん…愛梨と二人で話したいなぁ…。」

笑顔で言う愛。

大道は控え室からでていった。

二人だけの控え室。

「愛梨…そばにいっても良い?」

「どうしたの?愛…。」

少し雰囲気の違う愛を心配した愛梨。

愛は愛梨を抱きしめた…。

「ねぇ…ほんとにどうしたの?愛?」

「愛梨…ラヴィス解散しよう…。」

「え?…どうして?」

「私はラヴィスの愛梨じゃなくて…加藤アイリが好き…ずっと大好きでいるから…いつまでも追いかけるから…それにね…私は私自身でどこまでいけるかやってみたいの…だめ?」

愛梨は愛に抱かれたまま少し考えていた。

そして…。

「…わかったよ…そうだね…私も自分の力を信じてやってみるよ…今までありがとね…愛…。」

愛梨は大好きな愛の言葉を尊重して受け入れた。

愛は最後に精一杯の笑顔で別れを告げる。

「ありがとう…愛梨…元気でね…。」

そして愛はボロいアパートへと帰る。

迷いのない笑顔を見せる愛。

「帰ろう!カナ様…。」

カナ様は愛の手を握り、二人はボロいアパートから消えた。

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