第37話最終話まであと少しスペシャル

愛にメロメロな下心みえみえ音楽プロデューサーはラヴィスの曲をさっさと作り上げた。

愛と愛梨はレコーディングに望み、ついにラヴィスの曲が完成する。

しっかり者の愛梨が常に近くに居るので、縮れ麺は愛を茹で上げる事はできず、ただ麺を伸ばされただけの美味しくないインスタント哀れ麺になっていた。

そして…ここからラヴィスの飛躍は凄まじい。

GOUSEIの社長は愛と愛梨の大ファンになりCMはジョソークラブからラヴィスに変更され、さらに相田プロ本社の後押しもあり、相田記念会館でのライブも決まった。

愛と愛梨は大道に言われた通り、本社の小会議室で振り付けやパート分けを日々考える。

大道の思惑は当たったが、その分二人の負担は大きかった。

小会議室で話し合う二人…。

「ラブウェアーは?どこに入れる?トークの前が良いかな?」

真剣にライブの選曲をする愛梨。

「う~ん…この想いのほうが良いかなぁ?」

愛は愛梨と二人で居れる幸せを噛み締めていた。

ガチャ!

「あらぁ~?愛梨さ~ん!」

突然、暇な春木結衣が小会議室に入ってきた。

ラヴィスの二人がなにをしてるかあの手この手で情報を掴んできた結衣。

二人の邪魔をする。

「初めまして、愛梨さん、春木結衣です…あ~ん愛梨さんに憧れてたのぉ~ん!」

愛梨の横にべったり座る結衣。

きょとんとする愛梨。

「はいはいごめんね…今いろいろ打ち合わせしてるのさよなら~。」

(なにしにきた?この固い尻…邪魔すんなこの!)

首根っこを掴んで出そうとする愛。

「いや~ん!愛こわ~い!愛梨さん助けてぇ~ん!」

愛梨にしがみつく結衣。

あたふたする愛梨。

「ち、ちょっと愛!乱暴はだめだよ。」

ほんわか優しい愛梨は結衣を小会議室から出すのを止める。

愛は二人の空間の邪魔をされ腹が立つ。

(早く帰れよ…固乳女…。)

結衣は愛梨にべったり仲良くしていた。

「結衣わぁ~愛梨さんを見て勉強していきたいなぁ…ふふ…また来ても良いですか?」

腹立つほどぶリッコ結衣。

「うん、良いよ…またおいで…。」

ほんわか愛梨は断われない。

と、言いつつ帰らない結衣…。

「愛梨さん…結衣のお胸…最近張ってるんですぅ~愛梨さんは大丈夫ですかぁ?」

チェック中…。

(な、なんて羨ましい事を…そうか…良くある女同士のジャレ合い…この手があったか!…いや…だめだ…愛梨をそんな目で見るのはだめだぁ!愛梨を汚すんじゃねぇ俺よ!…いや…でも羨ましい…いやだめだ…優しくしてくれる愛梨を…そんな目で…うぉー!)

ヨダレを垂らし葛藤するファン。

「あら?凄ーい!柔らかぁ~いぃ!」

(愛梨さんとじゃれあってるわよ!どんな反応なの…愛!)

チラ見する結衣。

(なんて顔してるの?こいつヨダレ垂らしてるわ…愛梨さんの事が好きなの?…愛はリリーフラワー…ふふ。)

「愛梨さんのお家に泊まりにいって良いですか?…背中流しあっこしましょ?」

猛攻撃の結衣。

(背中流しあっこだと…その後…あんな事や…こんな…。)

「だ、だめだよ!泊まりなんて迷惑でしょ!」

わけがわからなくなってきた。

「結衣ちゃん…ごめんね…落ちついたら遊びに来てね…。」

冷静な愛梨はやんわり断わる。

その後も結衣は居座り続けその日は打ち合わせにならなかった。


その後日…。

「やっほー!勉強しにきましたぁ!」

結衣が現れる。

また次の日も、次の日も、次も次も次の日も。

「はぁ~い!結衣ちゃんでぇーす!」

結衣は邪魔をしに来ては愛を嫉妬させる。

全然進まない打ち合わせ。

愛梨に逆らえない愛は結衣を追い出す事もできなかった。

いい加減痺れを切らした愛梨…。

打ち合わせは終わりと言って結衣を帰らせた。

「会社じゃちょっと無理だね…愛の家近いでしょ?…いっても良い?」

「え?いやぁ~汚いよ…ボロいアパートだし…。」

アパートには変態が居る。

「私の家でも良いんだけど…愛はこの後、生星空でしょ…やっぱり愛の家に行こう。」

ほんわか愛梨はやんわり愛の家に行くことにして、肩掛けバッグをかけ、立ち上がる。

愛梨には逆らえない愛。

(おい!カナ様?聞こえてるんだろ?里帰りしたらどうですか?魔界の魔王様も心配してますよー!)

「そ、それじゃ…行こうか?」

居ない事を願う愛。

二人はボロいアパートへ向かった。

一方…その頃カナ様は…。

ボロいアパートの玄関の前に立っていた。

愛からの心の声を受けとったカナ様。

(魔王が人の心配なんかするわけないだろ!ばかたれ!我は魔界からなど来てないわ!)

心の中で愛にツッコミを入れていたカナ様のところにあの男が近づいていた。

暴行事件で逃走中の桜庭優真は窃盗や強盗を繰り返し警察から逃げ回っていた。

その日食う金の尽きた優真。

ボロいアパートの前を通りがかった優真は吸い寄せられるようにカナ様の待つアパートへ強盗に入る。

アパートの部屋のチャイムを鳴らす優真。

カナ様はドアを開けた。

優真は開いたと同時に隠し持っていたナイフをカナ様に突き付ける。

「おい!金と食い物よこせ!早くしろ!」

カナ様はナイフの先端を掴んだ。

ピッ!

優真は焦った様子でナイフを押したり引いたりしようとするがまったく動かない。

睨み合う優真とカナ様。

「悪運は尽きた…闇に迷うが良い。」

カナ様の言葉と恐ろしい目に優真は怖くなった。

「離せ!こら!」

焦って逃げようとする優真。

カナ様は手を離して逃がした。

優真が逃げて行く方向から歩いてくる愛と愛梨。

ボロいアパートへ向かっていた二人は優真と鉢合わせをしてしまった。

最初に気づいた愛梨は凍りつく。

「どうして…優真が…。」

罵声を浴びせられ傷つけられたあげくに捨てられた愛梨は身体が震えていた。

優真は震えている愛梨を冷たいゲスな顔をしてニヤける。

「これはラッキーだわ!愛梨…腹いせに誰か使って仕込んだだろ?…てめえしかいねぇんだよ!」 

愛梨に近づく優真。

愛は愛梨の前に立ち、優真に立ち向かう。

「近づくんじゃねぇ!警察に行けよ…」

優真は無言で容赦なく愛の腹に膝げりを入れた。

愛は息ができず、膝から崩れ落ちてしまう。

愛を見下ろしあざ笑う優真。

「誰だお前?邪魔するならヤってやっちまうぞ!」

「愛ぃ!」

愛梨は膝をつき崩れ落ちている愛の頭を抱きしめ優真から守る。

見上げながら優真を睨む愛梨。

「最低よ…愛は関係ないでしょ…なんの事か知らないけど…やるなら私をやりなさいよ!」

隠し持っていたナイフを愛梨に向かって振り上げる優真。

(くっ…させるか!)

愛は愛梨に覆い被ぶさり愛梨を守った。

「邪魔すんな!てめー!」

優真は愛の背中に勢いよくナイフを突き刺す。

「うっ…?」

背中に痛みを感じた愛。

「愛ぃ!嫌ぁ!」

愛が刺された事に泣き叫ぶ愛梨。

「我の仕業だよ~ん。」

突然現れて優真の手首を掴む黒マントのカナ様。

ボコォ!

魔道パンチを顔面に食らった優真はぶっ飛んでいく。

ギュー!

魔道ロープで優真の身体を縛り上げるカナ様。

ズルズル優真の身体を引きずりどこかへ歩いていく。

(オモチャのナイフだったのか…助かったぁ…どこにいくんだ?)

「大丈夫?愛梨。」

愛は愛梨を立ち上がらせ、カナ様の後を追い始めようとした。

「怪我…してないの…はぁ…良かったぁ…」

何度も愛の背中を確認する愛梨。

カナ様はさっさと近くの交番に優真をぶん投げて帰って来た。

「あの…助けて頂きありがとうございました。」

カナ様へお礼を言う愛梨。

「妹のためだ。」

(また母にされたらかなわん…さきに言っておくわ!)

引きずっているカナ様。

「あ、愛のお姉さん?」

戸惑う愛梨は愛を見る。

「そ、そうなの…家出してたんだけど、こないだ駅で寝ていたところを見つけて保護したの…浮浪してたおかげで強くなったみたい…。」

思いつきのごり押しで愛梨を納得させた愛。

この事件をきっかけに二人の絆は深まる。

愛梨は命懸けで守ってくれた愛をますます好きになった。

愛はもともと愛梨の事を大好きなので大好き大好き。

そして優真はカナ様の魔道パンチを食らったついでに闇の中に意識を閉じ込められもがき苦しむ。

さらに寒い牢獄と闇に迷う悲惨な結末をたどった。

そして違う別の日…。

仲良しこよしの愛と愛梨はラブプロ最初の10分宣伝コーナーの撮影にきていた。

安い予算で作られている為、スタッフの質問形式で声はカットされ字幕になっていた。

「皆さんこんばんは…ラヴィスの愛梨です。」

「愛でぇ~す!いぇい!」

よろしくお願いします…今回ラヴィスとしてのファーストシングル…ラブ・エンドについて愛梨さん思っている事をお願いします。

「はい、今までとは違う少しせつない曲ですが、新しいまた別の私達をお見せできると思っています。」

ありがとうございます…愛さんは大暴れアイドル、破壊女王、下ネタエキスパート、正統派アイドルの4冠を達成している訳ですが、股間で5冠を狙うつもりはないですか?

(なに言ってるんだ?こいつ…愛梨の前で変な事言ってくるなこの!)

「ラヴィスをもっと応援して貰えるようにがんばりま~す…みんなよろしくね!」

ありきたりでくそつまらないですね…ありがとうございました…それでは愛梨さん、次のコーナーふりお願いします。

「ラヴィスの応援よろしくお願いします…次は、面白企画です!愛ちゃ~ん。」

CM…

GOUSEI…。

愛の目元は淡い恋色ラブシャドウ…。

パチっ!

愛梨の口元キラぷるラブリップ…。

チュッ!

「ラヴィスを美しく…。」

ラヴィス限定モデル発売中…。

「あ~ん…そんなに激しくまわさないで…ブルブルロデオマシン対決ぅ!」

いぇ~い!

水着の愛…。

「はい!司会進行はもちろん私…ラヴィスの愛でぇ~す!」

「愛梨ちゃんはぁー?」

「居ないじゃん…。」

「愛梨ちゃんは、あなた達みたいな汚れた仕事はいたしません!」

「汚れじゃないよ。」

「綺麗だよ…お風呂だもん。」

「はいはい、ルール説明するよ…春夏秋冬はロデオマシン知ってますかぁ?」

「グルングルン。」

「暴れ牛…愛の事でしょ…ふふ。」

「も~ん。」

「いやだぁ~やらしい!」

「はい…マシンはこちらです。」

「大きいわね…ふふ。」

「このロデオマシンはただのロデオではございません…股がるところはバイブレーションしまーす!…手綱を片手で掴んで、一番長く振り落とされずに乗っていた人が優勝です!…さっそくいきましょ!」

「わ…わた…しは…仕上がってるからあ~ん!」

床上 寿代…15秒

「萎えてるからなぁ~…あふ。」

秋田 苗田…25秒

「強弱はっきりして…あん。」

夏 冬…20秒

「ゆ…ゆい…が…い…ち…あは~ん…。」

春木 結衣…30秒

「あ…もうだめ…。」

平間 愛…0.5秒

「優勝は結衣ちゃんでぇ~す…なに?またあるの?…罰ゲームはこちら…。」

くすぐりフェザー羽つき1分…。

「結衣ちゃん…だれ…」

「愛ちゃんです!」

「あはははは…ひぃ~…やめてぇ~あぁ!…はははははぁ…あ~ん…。」

「しゅうりょー!」

(あぁ…クセになりそう…。)

「はい!オッケー。」

「お疲れ様でした。」

(愛梨が待ってる…早く戻らなきゃ!)

愛は急いでスタジオを出ようとした。

「これから打ち合わせなの?愛…。」

話しかける結衣。

「そうだよ…ライブも近くて愛梨一生懸命だからさ…早く行かないと…。」

愛梨は本社の小会議室で愛の収録終わりを待っていた。

「結衣もついて行こうかなぁ…ふふ。」

「別に良いよ…また俺を妬かせるか?」

「なに俺って?あんたわかってたの…良いよだなんてずいぶんな自信ね…ふふ。」

「自信はあるよ…愛梨は必死なんだ…お前なんかにもう好きにはさせねぇ。」

「な…なによ…それ…どうしようて言うの?結衣に暴力でもふるうつもり?」

「そんな事しねぇよ…お前、くだらないと思わないのか?…俺はもう妬かねぇぞ?」

(どうしてこんなに強気なの…今までの愛じゃない。)

「あんた…どうしてそんなに変わったの?」

「命懸けで守れたからだよ…本気で愛梨を好きなんだ…邪魔はさせない…くるならこいってことだよ。」

(本気…そんなに愛梨さんが好きなの…自分を貫き通しちゃって…ふふ…もうやぁめたぁ…。)

「わかったわよ…もう邪魔はしない…だけど愛!…あんたの事は大嫌いだから必ず落とす…こんなばかな春夏秋冬なんか辞めて…本気で結衣自身の力であんたをねじ伏せてやる!結衣も自分を貫き通す事にするわ…ふふ。」

「…好きにしろ…俺はもういくから…ばぁいばぁ~い!」

(うわぁ~やべ…ついカッとなっちゃった…。)

そそくさ逃げる愛。

大道マネージャーの車で愛梨の待つ本社へ向かう。

「さっきは女同士の話しだから首は突っ込まなかったが喧嘩は良くない…愛梨を大切にしてくれてるのは嬉しい事だが…お前口悪いなぁ。」

ドキドキしていた大道マネージャー。

(女同士じゃないんだよ…俺は男なんだ…。)

「すいません…気をつけます。」

そして愛梨の待つ小会議室…。

「お疲れ様…お腹空いてない?…愛にも買ってきたよ…一緒に食べよ?」

そう言って愛を笑顔で迎えてくれる愛梨。

(あんなカッコつけた事言っても今の俺は愛だもんなぁ…こうして愛梨と居れるのも…愛…だから…本当の姿なら一緒に居れない…俺は良いのかこれで?…自分自身じゃないのに…愛梨…俺どうしたら良い?…なんて聞けないし…はぁ…結衣と喧嘩しなきゃ良かったなぁ。)

結衣と大道の言葉に考えさせられ始める。

本当は女の愛じゃない男のひろし。

自身の力ではなく偽りの力で愛梨のそばにいる事に思い悩む…。

大好きな愛梨を騙している罪悪感にも駆られる。

大好きな愛梨と一緒に居たい欲にも駆られる。

偽りの愛で愛梨のそばにいるか?

本物ひろしで愛梨の追っかけに戻るか?

そして…苦しんだ末に覚悟を決める。

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