第28話これで

数日後の歌番組本番の日…。

愛は大道マネージャーとテレビ局に来ていた。

本番前のリハーサルをチンドンヤーズと一緒に行い口裏合わせをした愛…。

愛は楽屋に用意されていたフリフリピンク色の衣装は着ないで、カナ様に用意してもらったパンクゴシックロリータを着たまま本番を待つ。

暴走する愛のマネージャー、大道は精神的に崩壊してあごも痛くて声をだせない…。

愛の事はどうでも良いただの運転手のようになってしまっていた。

生放送の歌番組本番が始まる。

愛は一度出演しているのでこの番組の流れはもう掴んでいる。

他の出演者達が終わるのを長い椅子に座り待っている愛…。

チンドンヤーズの出番が終わり…

そして愛の出番が来た。

色メガネマンからのしょうもない話しを聞き、セットで歌い始める流れになった愛。

愛は自分のセットには行かず、チンドンヤーズが待つセットに向かった…。

チンドンヤーズリーダードンのスティック合図が響き渡り曲が始まる…。

激しくミツメテヘビメタバージョン…。

番組のスタッフ達は驚いたが生放送…。

カメラマンは急いで愛の方にカメラを向ける。

オリジナルがまだ世に浸透していないのにヘビメタバージョンをぶっかます愛…。

立ち見をしている大道マネージャーは驚いて腰が砕けた。

奇声をあげながらヘビメタ調に歌う愛…。

(一回やってみたかったんだぁ…おりゃ!)

愛は歌い終わった瞬間マイクスタンドを振り回しドラムセットを壊す…。

ガッシャーン!

ドン!

バーン!

ガン!

バキッ!

キーン!

メンバー達も暴れていた…。

そして本番が終わり…

くそみそにバーコードから怒られる大道マネージャー。

だが、大道マネージャーの長年の感が働いていた…。

(これで…愛は…売れる!)

あごの痛みも引き…腰の砕けも直った。

魅力を壊してはいけないと思った大道は、愛を叱る事はせず、ボロいアパート近くまで愛を送り、気分良く愛を帰らせた。

生放送を見た人達は、可愛い女の娘が大暴れしているギャップに魅力を感じた。

激しくミツメテヘビメタバージョンを求めて買う人達…。

当然そんなのは無いのでオリジナルCDを買う。

オリジナルはアイドル調なので驚いたがそれもそれで良しとしていた。

バラエティ番組のプロデューサー達も愛を気に入る。

最近、味けなくなったテレビに革命を起こしてくれるのではと期待した。

そしてある日…。

有名にはなったが仕事はしていなかった愛は、

ボロいアパートでゴロゴロだらだら小説を読むのが日課になっていた。

最初はただの暇潰しに近くのコンビニで買った小説。

凡人、魔王を破す!

というファンタジー小説にどっぷりハマってしまっていた…。

夢中になって小説を読んでいる愛は、ふと時計をみた。

(あっ!仕事だった…はぁ…帰ってきたらまた読ぉもおっ!)

「カナ様服ぷりぃ。」

ピっ!

「早くいけ、しっし。」

闇の情報誌…世間の人々に夢中になるカナ様。

(またいつもの服か…なにがしっしだ!野良猫扱いすんなっての。)

「…それじゃいってきますよ!」

いつもの服を着て愛は相田プロ本社へ歩いて向かう。

ボロいアパートは本社から近いという事もあり、大道と本社で待ち合わせをしていた愛。

大道が運転する車で愛はロケ現場に向かった。

ゲームセンター…ゴラック本店。

ロケ現場に着いた愛はスタッフや出演者達と軽く打ち合わせをする。

芸人米麹のタイトルコールから始まった、今は年配多いよ!ゲームセンターであそぼぉーという、いろいろなゲーム機を視聴者に紹介する番組。

米麹の隣にアシスタントとして由美アナウンサーがいた。

「私も現場で唖然としながら見ていました…大暴れアイドル平間 愛さんです。」

由実アナウンサーの紹介でカメラ枠に入る愛…。

「いぇ~い!よろしくぅ!」

ギャルな衣装とメイクだったのでギャルっぽくいく愛…。

パチンコ台を紹介する米麹…。

「新台がありますよ皆さん…説明して貰いましょう川町店長ぉー!」

カメラ枠に入る細くて気弱そうな川町店長…。

「はい、こちらはゲームセンターではあり得ない明日発売の新台CR村村です…いゃあ~大変だったぁメーカーの人にお小遣いとキャバクラ接待、それにソ…」

「そ、それでは愛ちゃん!打って下さい。」

米麹に促され愛が足を組みながら座り、小指を立ててハンドルを回す。

パチンコ台の液晶を眺める愛…。

(やった事ないからわからないけど…数字が揃えば良いんだよな?…お?7…7…6…う~ん…0…7…2…あ~ん…1…9…1…9…1…9…1…9…1…9…1…9…1…9…1…9…1…9…1…9…1くぅぅ…)

「いつまですんどめしてんだこの!」

ガン!

ぱり~ん。

パチンコ台のガラスを割った愛…。

唖然とする一同…。

(これぞ愛!)

大道マネージャーは思っていた。

大道の期待に応えるかのように愛は次々物を壊して行く。

クレーンゲーム機に入っていたノーライセンス海賊版フィギュア愛隣…。

(アイリに似てるなこれ?…ほしい!)

番組の流れを無視してひたすら狙う愛…。

(なんだこれ?全然持ち上げてくれないじゃん…くぅぅ…)

「ねぇ?気をつけしてるよ?この爪。」

ガン!

ピキ!

ドーム型機械のお菓子タワーを狙う愛。

「え?動いてる?」

ユッサユッサ…

ガタガタ!

ブー!

オミセノヒトヲヨンデクダサイ!

番組プロデューサーは思う…。

(請求書は相田プロだな。)

愛は出禁になった。

その他の仕事でもやらかす愛…。

ある日のバラエティお宝自慢番組…。

大御所、星空明子自慢の壺を見る愛…。

(傘立て?安そう…あ!)

ガシャーン!

「マネージャーさん…ちょっとこちらへ…。」

請求額が増える愛…。

「借金完済まで頑張ろう!」

大道マネージャーは前と同じように仕事をさせるようになった。

そして愛は、壊し屋アイドル平間 愛としてその名を一気に上げた。

その様子をカナ様はずっと御覧になっていた。

人々の心の声を聞くカナ様…。

(これで良い。)

カナ様のおちゃめなお遊びが始まる。

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