第26話ちゃちゃとデビュー

ボロいアパートに帰ってきた愛はコンビニで買ったイチゴのスイーツを美味しそうに頬張る…。

(あぁ美味しい!イチゴ大好きだなぁ~うぅ~ん!)

スプーンを持って笑顔で頬に手を当てる愛…。

冷めた目で見るカナ様…。

(うぅ~ん!じゃねえよ、今は愛の姿だから、どうせ彼氏いるんでしょ?最初の男、羨ましいなぁって感じだけど、お前はただのオタッキー野郎だろ!カッコつけんな!ったく…しまいに作戦なんか考えおって!どこまで楽しようとするんだこいつ…鬼にシバかれるのちょっと期待したのにぃ…。)

カナ様は苦しむ愛の顔がお好き…。

だが、嫌々やらされてる愛はめんどくさがる。

今までの流れをあーだのこーだの考えながら愛はゴスロリ服秋物でレッスンに向かった。

鬼ババまり子のペースをことごとくぶっ壊していく愛…。

「ここはね、色っぽくお尻を動かして…あ~良いね素敵だよ。」

横槍をぶっ刺されまくるまり子…。

(も…もう勘弁して…早く来て…。)

つの無し鬼ババは、レッスン場からさっさと愛を出したかった。

しばらくして、部長に命令された大道がレッスン場に顔を出す…。

大道は見た事の無い愛を探した。

(部長の言う凄い娘?…この娘はなんて格好なんだ?…まさかこの娘が平間 愛じゃないよなぁ…。)

まり子は大道の姿を見た瞬間、愛の手を掴み、ひっぱりつれて、大道の前にさし出す…。

「大道さん、この娘が愛よ!ささっどうぞどうぞ!」

ググググ…!

まり子は愛の背中をおもいっきり押しながら、大道とともにレッスン場から追い出した。

バタン!

廊下に放り出された愛と大道…。

大道はゴスロリ服秋物と状況がまったく掴めず唖然としながらも愛を会議室に誘う…。

「と、とりあえず…会議室に行こうか?」

大道と再会の愛…。

(この流れ…まずい…早すぎる。)

「は、はい行きます。」

会議室で対面で座る愛と大道…。

大道が話しを切り出す。

「あ、あの…正直言っていろいろ戸惑っているんだが…今日から君のマネージャーをする大道 昇です…君のデビュー決まったから…。」

シーン…。

愛は考え込む…。

(やっぱりかぁ…縮れ麺の前に大道さんが来るとはなぁ…だけどデビュー曲ないのにどうするんだ?まさか他の人が作ったのか?そんな訳ないと思うんだけどなぁ…縮れ麺が良いんだよなぁ。)

しぶしぶな顔をして大道を見る愛…。

「あ、そうですか…はい。」

愛のリアクションが不思議な大道…。

(あれ?喜ばないの?ため息?なんで?どうして?やりたくないの?なにしにきたの?ちょっと意味わからないよ?その服も意味わからないよ?…あ!突然でびっくりしたんだな…。)

無理矢理話しを進める…。

「だけど急な事でなにも無いんだよ…これから売り込みに…」

「すと~っぷ!」

愛は大道の話しを止める。

シーン…。

愛はまた考える。

(よし!まだなにも無いんだな?助かったぁ…この人変な仕事ばかり取ってくる危ない人だからな…どうせやるしかないなら、とことん楽にいきたいし、激甘縮れ麺に早く会いに行かないと。)

「あの…大道さん、有岡さんに会わせて下さい。」

腕を組み考える大道…。

(知り合いなのか?まぁ挨拶ついでに連れて行くのは良いが…曲をお願いするつもりなら?)

「もし曲を作ってもらうと考えているならそれは無理だと思うぞ…あの先生は自分の気に入った娘にしか作らない…そういう人だ。」

自信を持って笑顔で宣言する愛…。

「大丈夫です!行きましょ。」

大道はどこからくる自信なのかわからなかったが、愛の熱意に負け、有岡にアポをとった。

数日後…。

有岡スタジオに向かった愛と大道…。

有岡は作詞や作曲をするための仕事部屋にいた。

両手を広げ、二人に近づき迎え入れるいつもの格好の有岡。

大道は有岡に愛を紹介する。

愛の容姿がドストライクな有岡はルンルンごきげんになった。

大道と有岡が立ち話しを始めた…。

有岡の容姿に慣れている愛は笑う事なく作戦を実行する。

仕事部屋に飾ってあった西洋レトロな看板を眺めながら、有岡に聞こえるように鼻歌を歌い始める愛。

♪「あなたの才能フッフッふ~ん…」

有岡の頭の中に浮かんでくる歌詞と曲…。

(おぉ…エクセレント…おぉ。)

愛はベストアルバム12曲を有岡の頭に叩き入れる。

♪「ふっふふ~…」

次々浮かんでくる有岡…。

(おぉ!おぉ~、おぉ!おーーーーーうぉ!)

シュ~!

有岡の頭の中が煙を吹く…。

動かなくなった有岡…。

心配する大道…。

「せ、先生?」

有岡は突然動きだし、デスクに向かって曲を書き始めた。

「ミスター大道…今日はこれで。」

訳がわからない大道に、はにかみ笑顔を見せる愛…。

「帰りましょ!」

二人は有岡スタジオを去っていった…。

有岡はひたすらに書きまくる…。

そして…

レコーディングも激甘な有岡と歌い慣れている愛でちゃちゃか終わり…

デビュー曲は完成した。

ついでに次の分もその次の分も…。

有岡スタジオからの帰り道…

大道の運転する車の中で愛は考える…。

(これでしばらくレコーディングしなくて良いな!あとはこの人に売り込まれないようにしないと…うーん…自分で売り込みに行くしかないか?…人気でたら忙しくて嫌だし…アイリには逢いたいけどなぁ…う~んやっぱりめんどくさい…困った…。)

大道はデビュー曲が完成したので売り込みに行く気満々…。

(ごめんよ愛…他の娘のマネジメントで送り迎えしかしてやれなかったな…こんなにやる気がある娘だったなんて…俺…感動したよ…よし!必死に売り込んであげるからな!)

「愛!絶対人気アイドルにしてやる!俺は感動した…君ならなれる!」

気合いが入った大道…。

(うわ!なんでそうなるかな?ヤバい…あれだけは絶対に嫌だ…どうする…あ!そうだ。)

珍道中は避けたい愛…。

「大道さん…生放送の歌番組あるでしょ?あのプロデューサーに会ってみたいんだけど…。」

大道は熱血状態…。

「よし!わかった。」

熱血大道は、やる気のある愛の為に、あの手この手を使いプロデューサーにアポをとった。

わかったの言葉に安心してボロいアパートに帰ってきた愛…。

(あの歌番組にでる事ができれば多少名前は売れるはず…こうやって変な番組を回避していくしかない。)

カナ様は相変わらずちゃぶ台の前に座ってせんべいをボリボリボリボリ食べている。

お茶をお飲みになるカナ様…。

(熱っ!…愚かなすけべオタクよ…もがくが良い…結局は人気アイドルになってしまうのだからな…じゃないと我の話しが進まないんだよね…いろいろと…。)

カナ様の掌で踊る愛は、あの歌番組のプロデューサーに会いに行く…。


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