第20話夢…砕け散る
ゲスな週刊誌や、腐った芸能ニュースを垂れ流す番組は、心に傷を負った愛梨を更にえぐる…。
三流週刊誌は、他にネタがなければ、愛梨をぴっぱり出し、捏造記事を書き立てた…。
…
転落アイドル○○デビュー間近!?
撮影終わる!!
元人気アイドル自宅に男を連れ込みハーレム状態!?
…
などの根も葉も無い、事実無根の記事を載せては愛梨を苦しめた。
…
それに乗っかり、愛梨を悪く言う、得体の知れないコメンテーター。
「一部の情報によりますと、愛梨さんの男好きが原因で、優真さんと別れたとも言われております。」
…
まったくのデタラメだが、世間には真に受けてしまう人もいる。
愛梨の姿を見つけた輩が、冷たい言葉を浴びせたりもしていた。
…
「おい、愛梨じゃない?…そうだよ…おーい!いつ発売されるの?必ず買っていっぱい楽しんであげるねー!」
…
「なに?でるの…いいなぁ…男優さんになろうかな?」
…
「愛梨だ…優真にひどい事しないでよ!尻軽。」
…
営業先でも愛梨は下に見られたりしていた。
…
「なぁ、また営業に呼んであげるからさ…君も好きなんだろ?…あぁ!逃げるならもう呼ばないから。」
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柄物大好き図々しいケツデカおばさん達とは違い…。
若い女の娘の愛梨には耐えられない…。
…
自宅のベッドによし掛かり目はうつろ…もう限界だった。
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苦しめたのは、世間の冷たい声だけではなく、相田プロも落ちた愛梨に冷たい。
新人の池内をマネージャーにしたのも、その表れ…。
熱心に売り込む大道とは違い、池内はその場しのぎの取りやすい仕事しか取らなかった。
会社は別に愛梨の事を気にもとめない。
今は大人気で、稼いでくれる愛がいる。
…
それを肌で感じていた愛梨…。
(終わってたんだよね…ばかみたい…。)
「私の事なんか誰も応援してくれない…消えたい…もう嫌ぁ!」
…
愛梨の夢は砕け散る…。
…
頭を抱え泣き叫んでいた愛梨…。
そんな時に電話が鳴る…。
もうでたくなかったが、画面を見ると池内マネージャーからだった。
愛梨は辞める意思を伝えようと電話にでた。
…
電話の向こうで明るい声で話す池内…。
「あ、もしもしお疲れ様です…愛梨さん、仕事入りましたよ…平間 愛さん本人からのオファーです…単独ライブに来てほしいみたいですよ、愛梨さんが憧れの人なんですって…大道さん言ってましたよ。」
…
電話から聞こえる池内の言葉は愛梨を救った。
…
大好きな愛本人からのオファー。
そして自分を憧れていてくれたと知った…。
落ちてしまっても根はアイドルの愛梨…。
…
(愛ちゃんに逢えば…私…。)
「…わかりました。」
…
愛に逢える喜びが夢の欠片を光らせる…。
…
愛梨は愛に逢える日を楽しみにしていた。
…
そして…
打ち合わせの日。
…
久しぶりの相田プロ本社は、愛梨に優しかった。
愛が憧れてた人の愛梨…。
単独ライブのスタッフ達は、ゲストの愛梨に気を使う。
例え偽りの優しさでも、冷たい世間の風にさらされていた愛梨にとっては暖かく感じた…。
スタッフ達とくだらない話しをしながら愛梨は笑顔を取り戻す。
…
相田プロ本社の近くにできたラーメン屋の頑固おやじがラードでずっこけて頭に麺が乗っかり誰かに似てたとスタッフに笑わされていた時…愛が大道と会議室に入って来た…。
喜びと緊張で胸がドキドキしていた愛梨…。
(礼儀正しく挨拶しないと…。)
…
愛梨はイスから立ち上がり、笑顔で愛に近づき挨拶をするが、愛からの反応がない…。
(…あれ…愛ちゃん?)
…
愛は黙ったまま…。
…
どうしたら良いかわからない愛梨…。
…
愛は急に我に帰ったように愛梨に挨拶を返してきた。
…
愛の事を心配する愛梨…。
(疲れてるのかな?…きっとそうだよね。)
…
大道に座るように促され愛梨と愛はイスに座る。
…
打ち合わせが始まり単独ライブの流れを説明したりしているスタッフ…。
愛の単独ライブだが、愛梨はスタッフ達と真剣に打ち合わせに望む。
(流れをしっかり覚えないと…絶対失敗なんてできない…愛ちゃんに迷惑なんてかけられない!)
…
(どうしたのかなぁ…なにか付いてる?)
愛梨は愛の視線が気になり、さりげなく髪を触ったりする。
…
(同じ相田プロだし、仲良い感じのほうがきっと良いよね。)
愛に花束を渡す時、フレンドリーに行こうと思った愛梨…愛に話しかけるがまたしても反応がない。
(え?無視されちゃった…大丈夫かなぁ。)
…
愛梨はずっと黙ったままの愛に少し戸惑う…。
(どうしたら良いんだろう…もっとお話ししたいんだけどなぁ…話しかけにくい…。)
…
画面の中の愛を愛梨は期待してしまっていた。
ほんわかで優しい愛梨は黙ったままの愛をずっと心配していた。
…
相田記念会館でのリハーサル…。
愛梨は愛の事が心配で、早めに記念会館へ行く。
リハーサルに望む愛は、またしても黙ったまま愛梨を眺めてくる…。
(愛ちゃんって実は無口なのかな?…それに全然やる気なさそう…いったいどうしちゃったんだろう。)
…
愛梨はそう思いながら真剣にリハーサルに取り組んだ…。
…
ちらちら愛を見て気にする…。
…
愛は突然やる気をだしたようにリハーサルを真剣に取り組み始めた…。
…
(あ!よかったぁ…でもなぁ。)
…
愛の雰囲気は、愛梨にとって話しかけずらい…どうにかしてその雰囲気を壊したかった愛梨…。
トーク内容を決める事をきっかけに話しかけた…。
…
「ねぇ?愛さん…まり子先生の話しとかはどうかな?…私、まり子先生に教わったの…愛さんもよね?」
…
愛は、ばつが悪いような顔をして返事をするだけ…。
「え…そ、それで良いと思う…。」
…
困ってしまう愛梨…。
(参ったな…愛ちゃんってオフの時は本当に無口だったんだ…はぁ。)
…
愛梨は本番では楽しく話ししてくれるように願った。
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