第10話愛の歌

有岡スタジオに着いた、愛と大道マネージャー…。

「礼儀正しくな。」

大道は愛にそう言って扉を開ける。

「はい。」

返事をする愛。

受け付けの女性に声をかける大道…。

「いつもお世話になっております大道です…有岡先生は?」

受け付けの女性は笑顔で答える。

「こちらこそお世話になっております…トレーニングルームでお待ちです。」

大道と愛は、

1階にあるボイストレーニングルームへ向かう。

「失礼します…先生今日からよろしくお願い致します。」

大道が先に入り、有岡に挨拶をした。

大道に続いて入る愛…。

「失礼しま…ふ…す。」

(前と同じ格好…。)

部屋にはスタンドマイクやキーボードなどがあった。

有岡はキーボードに向かって、座って待っていた。

愛を見て、両手を上げて笑顔になる。

「オー、イエーイ、愛素敵なレディ…さっそく、トレーニングカモン。」

愛は頭を深々下げる。

(ほんと変わった人だなこの人…。)

「よろしくお願いします。」

マイクの前に立つ愛。

(人前で歌った事ないからなぁ…緊張する。)

大道は有岡に訪ねる。

「愛の歌を聞いた事ないので、ここに居てもよろしいですか?」

有岡はうなずく。

「オーケーノープロブレム…ミス愛…イージーに歌ってみてよ。」

愛は少し考える。

(そうくるよな…ちくしょー!アイリの曲しかしらないからなぁ…ちっ!しかたない…。)

アイリの曲をアカペラで歌う愛…。

♪「こーのーおーもーいぃー。」

カーン♪

愛は音痴だった…。

ズッコケる有岡…。

(お…おう?クレイジーだ…)

「ナ、ナイス…グッドだよ愛、妖精の…ハーモニーだ。」

誉めて伸ばすタイプの有岡。

大道は頭を抱える…。

(聴いたことあるような気もするが、下手すぎて誰の歌かわからない…先生…サングラスずれたままですよ大丈夫か?先行き不安だ。)

有岡の言葉を真に受ける愛…。

(俺って歌うまいのか…よし!頑張ろ。)

「ありがとうございますちぢ…あ?有岡先生。」

やる気に満ち溢れる愛。

有岡はサングラスを直す…。

「オーケー基本からトライ。」

(ちぢってホアイ?)

音階に合わせる練習を始める…。

キーボードで音を出す有岡。

♪ー

「まー。」

発声する愛。

「まぁあー。」

有岡はチッ、チッ、チッをする。

「ノンノンノン…まぁあーじゃないまー。」

愛はまねをする。

「まー。」

有岡は拍手をする。

パチ!

パチ!

パチ!

「ナイスグッド。」

有岡の誉め伸ばしは、愛に合っていた。

歌う事がどんどん好きになっていく。

有岡のぉ、レッスンは楽しみにしながら通った愛。

そして、

数週間後…。

いつものように有岡スタジオにレッスンを受けに来た愛。

すっかり歌が大好きになり、

上達して自信満々。

「よろしくお願いします。」

(もっと上手くなってやる。)

マイクの前に立つ。

有岡はグーサインで、愛に伝える。

「サプライズ愛…デビュー曲…完成したよ。」

愛はマイクに向かっている…。

「え?ぇぇぇほんとですかぁ?ぁぁぁやったぁ!」

キーン!

興奮して大きい声を出す愛。

有岡は驚く…。

「おぉーう!あ、あとは愛が歌を入れるだけ…。」

それから愛は、歌詞を覚え…、

数日かけてレコーディングに挑む。

レコーディングスタジオは、

有岡スタジオの2階にある。

レコーディング本番中の愛。

有岡から指示がある。

「へい愛サビいくよ!色っぽくカモンレッツトライ。」

ヘッドホンを手で押さえ、マイクに向かい、

サビを歌う…。

♪「抱ぁきしぃめてー」♪「狂おしい程に…」

♪「激しぃくぅ…ミ…ツ…メ…テ…」

♪「あ~ン…。」

有岡はうなずく…。

「パーフェクト…オーケー。」

数日間のレコーディングは無事に終わった…。

愛のデビュー曲、

激しくミツメテ…は、

完成した。

それから愛は、振り付けをまり子に教わり…。

「だから!なんでカクツクんだお前わー!私は甘やかさなーい!」

金棒を振り回されながら振り付けを身に付け…。

ネット動画で売り込む。

あまり反響はなかったが…。

更新を続けた…。

大道マネージャーはテレビ局に売り込みに行き、

やっとの思いで仕事をとった。

深夜番組に出演する事が決まる。

会社の小会議室で、愛に説明する大道…。

「愛、深夜だが決まったぞ!10分枠だ…全国を回ってくれ…曲売り移動ライブだ。」

愛はよくわからない…。

「全国?なんですかそれ…。」

新人アイドルが行く!

ステージトラックライブツアー!

と、いう深夜番組で、

番組ディレクターとカメラマンが、ワゴン車に乗り、ステージトラックを追いかける。

愛は、ステージトラックに乗り、全国各地のショピングセンターなど、大きめの駐車場がある所でデビュー曲を歌い、CDを直接売る…。

トラック運転手は田中五郎…。

という内容だった…。

愛は母の事と学校の事が気になる。

「母の了承が無いと…なんとも…。」

その日の夜…。

母に相談する愛。

「お母さん、全国回る仕事が入ったんだけど…学校もあるしダメだよね?」

(ダメって言って。)

母は笑顔で答える。

「凄いじゃない!お母さんは応援するわ学校なんてどうでも良いわよ、いってらっしゃい。」

(…いってきます。)

愛は北の大地を目指すためフェリー乗り場へ行く。

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