第6話アイドルへの道

愛を迎えに母は、学校の校門前にいた。

「あ!愛ちゃーん」

手を振って愛を呼ぶ。

母の姿が目に入った愛。

(あれ?駅で待ち合わせじゃなかったっけ…。)

母に駆けよる愛。

「どうしたの…駅じゃなかった?」

母は周りを見ながら笑顔でいる…。

「愛ちゃんのお友達にご挨拶しないとね…みんなに応援、してもらいたいじゃない。」

愛は肩を落とす…。

「はぁ…べつにいいよ~そんな事しなくても…もう行こ?」

ひなたとえみこが母と話しをしている愛を見つけ、駆けよってくる…。

ひなたは愛に質問をする。

「愛、お母さん?」

愛は首を縦に動かしうなずく。

「こんにちは。」

えみこが母に挨拶をした。

母は2人にお辞儀を繰り返しながら挨拶をする。

「いつも娘がお世話になっております…このたび愛は、アイドルになりますので、なにとぞ応援よろしくお願いいたします。」

ひなたは驚いて愛を見る…。

「愛、アイドルになるの?うへぇ~知らなかったぁ…アイドル目指してたんだぁ…。」

えみこも驚いて愛を見ていた。

「良いなぁ~アイドルになったら美味しいものたくさんおごってもらえるね…うらやましいなぁ焼き肉。」

愛は焦るふりをして、ついていない腕時計を見る。

「あー!お母さんもう行かないと…じ、じゃあねぇ~。」

母の腕を引っ張りその場から逃げた…。

駅に着いた愛と母…。

(べつに言わなくて良いのに…。)

「お母さん!あんな挨拶しなくていいよ、まだアイドルになった訳じゃないでしょ!」

母は眉間にシワを寄せ口を尖らす…。

「なに怒ってるのよ?別に言ったって良いじゃない嬉しい事なんだから。」

娘がアイドルになる事を本当に喜んでいる母。

周りに言いふらしたくてしかたがなかった…。

そして…。

愛と母は電車に乗り、となり街の駅前に着いた…。

母は少し急ぎ足で歩く…。

「あーそわそわしちゃう、愛ちゃん早く早くぅ。」

ゆっくり歩く愛を母は急かす。

「急がなくても居るって…待ってるって言ってたよ。」

愛の言葉を聞いて怒る母…。

「待ってるなら早く行かないと…人を待たせちゃだめ。」

母はさらに早く歩く。

愛は仕方なく母に合わせて歩いた…。

「あそこの喫茶店だよ。」

愛は母に教える。

喫茶店に入る母と愛。

カラン

コロン

渡瀬はカウンターに座り、愛と保護者を待っていた。

喫茶店に入ってきた、愛と母を見る。

渡瀬は立ち上がり、笑顔で迎える。

「いやー良かったぁ…来てくれて嬉しいよ愛ちゃん!…お母さんですか?来て頂きありがとうございます…本当良かったぁ~。」

母は深々とお辞儀をしながら挨拶をする。

「愛の母でございます…この度は本当にありがとうございます…娘ならきっとやってくれると…。」

渡瀬は苦笑いに変わる…。

「お、お母さんまず支社へ行きましょう、お話しはそこで…。」

渡瀬はお会計をする。

「ありがとうございました。」

カラン

コロン

渡瀬はキョロキョロしながらタクシーを探し、手を上げタクシーを停める。

「乗ってください。」

愛と母は後ろに乗り、渡瀬は助手席に乗る。

「相田プロダクション支社までお願いします。」

タクシーは支社へ向かう。

愛は外の景色を無言で眺めていた…。

(相田プロか…アイリと一緒の事務所…俺を裏切ったアイリ…男に走りやがって…絶対に許さない。)

アイリへの憎しみが、心の中で沸き上がっていた。

相田プロダクション支社へ着いたタクシー…。

「ありがとうございました。」

タクシーから降りた渡瀬と愛、そして母…。

大きな建物で立派な相田プロ支社に母は感動していた。

(すごいわ!娘が所属するのね…ドキドキしてきた。)

渡瀬の案内で支社の中を歩く愛と母。

たどり着いたのは支社長室の前だった…。

コン!

コン!

コン!

「失礼します。」

渡瀬が支社長室のドアを開ける。

「支社長、昨日お話しした愛さんと保護者の方です…

さぁどうぞ。」

渡瀬は愛と母に支社長室に入るよう促す。

「失礼致します。」

まず母が入った。

続いて愛も入る…。

「失礼しま…ふす…」

(…ゴリラ男だ。)

愛の目にはゴリラにしか見えない人が立派な椅子に座っていた。

(や…やばい笑いそう…。)

郷本鉄男…相田プロ支社長は、椅子から立ち上がり愛と母に挨拶をする。

(渡瀬の言ってた通りだ。)

「よく来てくれました郷本です…ささ、お座り下さい。」

ふかふかの応接椅子に座る愛と母。

「では、私はこれで失礼致します。」

渡瀬は支社長室から退室する。

郷本は契約書を手に持ち応接椅子に座った。

契約書をテーブルの上に置き、愛と母の前に差し出す…。

「愛さん、お母さん、よく決心してくれました…契約書をまず読んで、サインをお願いします。」

愛と母は契約書を読む。

郷本は愛をじっと見ている。

(この娘なら間違いなく稼いでくれるな…本社に送って成功すれば、わしは取締役だ!うほぉほぉほぉほぉ。)

契約書を読み終わり、サインをする愛と母。

「娘をよろしくお願い致します。」

母は契約書を郷本に渡す。

渡された契約書を郷本は手元に置き、話し始める。

「いや~それにしても可愛いお嬢さんだ…支社にいるのはもったいない…そこでどうです?本社でやってみませんか?愛さんなら間違いなく売れますよ…うほぉほぉほぉほぉ。」

愛はつられそうになり顔を叛ける。

(ぷ…やめてくれ…ゴリラじゃん。)

母は真剣な顔付きで質問する。

「本社でということは、都内に暮らさなければいけないのでしょうか?」

郷本は考えていたプランを話す。

「いやいや、大丈夫です…愛さんが学校終わったら特急か新幹線にでも乗って、本社に行ってレッスンを受けてもらいます…まぁ、帰るのは遅くなりますが、我が社で運転手と車用意します、それで帰って頂く…まぁ、ハードかもしれませんがグレーな業界ですからなぁ…うほぉほぉほぉほぉ。」

愛は笑いをこらえながら質問する。

「そ、そっれ、って…毎日ですか?」

(その笑いかたやめてーゴリラ。)

ゴリラは笑う。

「うほぉほぉほぉほぉ毎日です!ムリですか?」

母は真剣な顔で郷本ゴリラに言う。

「大丈夫です!愛なら必ずやってくれます。」

そして愛を見る母。

「頑張ってね、愛ちゃん。」

「はい…。」

アイドルへの第一歩を踏み出した愛。

学校とレッスンの過酷な日々が始まる…。

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