第5話アイドルへの誘い

放課後…。

カナ・エールの道しるべを守り、愛はとなり街に1人でいた…。

(どこに行けば良いんだ?…とりあえず歩くか。)

街の中をぶらぶら歩く愛…。

周りの人達からの目線が気になる。

(なんか嫌だな。)

しゃがんでこっちを見る男性。

「ヤッホーエヘヘ。」

愛は目を逸らして歩く。

交差点の信号機の前につっ立ってる男性。

「手を合わせましょう。」

愛は無視して歩く。

「ラーメン屋はこっちにあるよ!」

探してもいないラーメン屋の呼び掛け。

(はぁ…街の中歩くの好きじゃないな…あんな事もあったしなぁ。)

それは…。

ひろしがアイリのグッズを買いに来た時の事…。

(アイリのポスター…カレンダーも買っちゃお…よし帰るか。)

お会計を済まし、お店の外へでたひろし。

リュックサックからはみ出る、ポスターとカレンダーを背負いながら歩いていた。

(これはとっておく用だな。)

目の前から、2人の男が近づく。

1人が足を滑らせたようにコケた。

「痛っ。」

もう1人がひろしに声をかける。

「おい!お前の油のせいでダチけがしたわ。」

もがくふりするコケた男。

「いてててててぇ骨砕けたぁ~。」

心配するふりをする男。

「あー砕けてるわ、サーベル君、治療費だわ。」

ひろしは怖くてどうして良いかわからない。

その時、

「お前達、なにをしている?」

お巡りさんが来てくれた。

事なきを得たひろし…。

(あぁ、助かった。)

愛は思い出しながら両手を胸に当て歩く…。

(うぅ…怖い…やっぱ苦手だな。)

身を縮め、周りを警戒する愛。

「ちょっと待って、君可愛いね…良かったら話ししない?」

突然後ろから声をかけられた…。

身体をビクつかせながら振り向く愛。

(な…なに…セールス?)

「は、話しってなんですか?」

スーツ姿の男…愛に名刺を差し出す。

「こういう者です。」

愛は名刺を見て驚いた…。

(相田プロダクション!?タレント発掘事業部…渡瀬明生…アイリの所属してる…。)

渡瀬は近くにある喫茶店を指差す。

「あそこの店で話ししようか…さぁ行きましょう。」

愛の肩を優しく掴み、歩かせる…。

「え?ちょ、ちょっ…。」

愛は半ば強引に喫茶店に入らされた。

カラン

コロ~ン。

「いらっしゃいませ、お好きな席どうぞ。」

笑顔の店員さん…。

愛と渡瀬は4人掛けのテーブル席に座る。

渡瀬はメニュー表を愛に差し出す…。

「好きなの頼んで良いよ…僕がおごるから。」

愛はオレンジジュースを指差す。

「すいません…アイスコーヒーとオレンジジュースください。」

水を持ってきた店員に注文をする渡瀬。

「はいかしこまりました。」

水を一気に飲んで渡瀬は、話し始める。

「いや~遠くから見た時はビックリしたよ…君みたいな可愛い女性は初めてだ…確信したよ、君なら必ず人気がでる…名前聞いても良いかい?」

愛はうつむきながら答える。

「平間…愛です。」

渡瀬は笑顔で愛の顔を覗く…。

「愛ちゃんか…名前も可愛いね!間違いなく売れるよ…アイドルやってみない?」

愛は顔を上げ、目を見開き渡瀬を見る…。

(なんだって?)

「あ、アイドル?」

渡瀬は少し興奮気味に話す。

「スカウト人生の中で、君ほどの女性を見た事がない。」

アイスコーヒーとオレンジジュースを店員が持ってきた。

「お待たせ致しました。」

テーブルに置かれたアイスコーヒーを一気に飲む渡瀬…。

愛もオレンジジュースをストローで飲む。

「愛ちゃん…ぜひやってみてほしい!君なら絶対、人気アイドルになれる!」

愛はカナ・エールの言葉を思い出す…。

(断る事は許さぬ…スカウトの事だったんだ…。)

「わかりました…やってみます。」

愛は決意した表情で渡瀬に言った。

喜ぶ渡瀬…。

「良かった…ではさっそく、明日支社に行こう…君なら必ず特別待遇してくれる、ここで待ち合わせをしよう…できれば保護者の方にも来てほしいんだが?」

母が賛成するか少し心配だった愛だが…。

「必ずきます…オレンジジュースごちそうさまでした。」

愛は立ち上がり喫茶店を出ようとする…。

渡瀬は残りのアイスコーヒーを飲み、お会計を済ませに行く。

カラン

コロン

喫茶店を出た愛と渡瀬。

「君が来るまで待ってるからね…気をつけて帰るんだよ。」

そう言って渡瀬は歩いて行く。

愛は家に帰るため来た道を戻り、駅を目指す…。

(お母さん賛成してくれるかな?…あの魔道師に消されるのは嫌だ、頑張って説得しなきゃ。)

不安を抱いたまま、愛は電車に乗り歩いて家に帰った。

「ただいま。」

一目散に茶の間に向かい、母に名刺を渡す愛…。

「今日、スカウトされちゃった…私、アイドルになりたい。」

母は名刺を見ながら…愛の言葉に驚いた。

「あらぁ…相田プロって有名な所ね…愛ちゃんアイドルになるの?嬉しい!私もアイドルに憧れてたわぁ…うふふふ。」

母は喜び言葉を続ける。

「可愛い衣装姿かぁ…羨ましい!娘で良かったわ…息子じゃ着れないもんね?愛ちゃん頑張って…お父さんには言わなくて良いわね、出張中で良かった…あと10年はあっちにいて欲しいわ。」

肩透かしをくらった愛。

(あ、あっさりと…ごめんよ…息子で。)

次の日、愛と母は待ち合わせの喫茶店へ行く。

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