第3話可愛い愛は人気者

平間ひろし改め平間 愛…。

カナ・エールに一方的に話しを進められる。

「愛よ…お前に道しるべを与える。」

道しるべとは、愛のこれからの行動を指示するものだった。

「明日、学校へ行くのだ…話しの流れに身を任せれば良い。」

そう言い残し、カナ・エールは消えた…。

緊張が解れ、力が抜けた愛はその場に座る。

(なんて勝手な魔道師なんだ…だけど、あの目は恐ろしかった…もし逆らったりしたら…消されてしまうかも…。)

カナ・エールを思い出すと身体が震える。

(言う事聞くしかないか…。)

愛は、カナ・エールに従っていくことにした。

「ご飯だよー。」

1階から母の声が聞こえた。

愛は焦る…。

(どうしよー?どんな顔して行けば良いんだよ…あ!友達のふりしていくか。)

腹を決めて1階の茶の間へ向かう。

笑顔で母に挨拶をする。

「こんばんは~。」

呆気にとられる母…。

「なにが、こんばんは~よ…寝ぼけてるの?早く食べちゃって、愛ちゃん。」

衝撃を受ける愛…。

(愛ちゃん?普通に接してくるのかよ…どうなってるんだ?)

「は、はい~いただきますぅ。」

母は笑いだした。

「なによ?それ、あはは…それより、ちゃんと勉強してる?遊んでばかりじゃだめよ。」

完全に親として接してくる母。

(俺は、娘って事になってるのか?…とりあえず話しを合わせるか。)

「し、してるよ…遊んでばっかりなんかいないわよ…あははぁ。」

(どんな娘なのかわからん…。)

適当にやり過ごして行く愛。

ご飯をちゃちゃっと食べた愛は、自分の部屋へそそくさ逃げた。

(学校に行けって言ってたよな…男物しかないぞ。)

クローゼットを開けて見る愛。

(ぜ、ぜんぶ女物になってる…。)

可愛い服がたくさん並ぶクローゼット。

制服、下着なども揃っていた。

(ま、まぁこれならなんとか。)

クローゼットを閉め、ベッドに横になって考え込む。

(女としてか…どんな感じになるんだろう?はぁ…なんか疲れたなぁ。)

愛はそのまま眠ってしまう。


次の日の朝…。


「愛ちゃーん、起きてー遅刻するよー!」

母の起こす声で、目を覚ます愛。

(はああ~聞き慣れないなぁ…本当に女になったんだな…ん?)

いつの間にか部屋に化粧台があった。

鏡に映る自分を見る愛。

(やっぱ可愛いな…どれどれ…むふふ。)


パサァ~。


鏡に映る自分に夢中になる愛。

(へぇ~あら~あそう…こうなってるの…あはぁ~むふふ…いやぁ~。)

なかなか起きて来ない愛を心配して母が部屋に来た。

ガチャ。

「なにしてんの?」

母は娘の姿に呆れかえる。

「い、いやこれはその、あの…。」

言葉が浮かんでこない愛。

「早く着替えなさい!」

母はクローゼットを開け、制服や下着を愛に渡してくる。

服を着ようとした愛は思った…。

(着かたがわからん…。)

「あ、あの、お母さん?着かたがわからないんだけど…。」

困った顔をして母に助けを求めた。

母は呆れ顔をしながら服を着させてくれる。

「めんどくさがってもう…困った娘だわ。」

愛は女物の着かたを覚えた。

「いってきまぁーす。」

愛はカバンを持ち、学校へ向かう。

歩き慣れた通学路を、慣れない女物の制服で歩く…。

スカートの中を優しく通り過ぎる風…。

(あ~なんか変な感じぃ~。)

ちょっと気持ち良くなっていた。

そんな1人遊びをしながら歩く愛。

校門の前に、男の教師が立っている。

その教師は校門を通り過ぎる生徒達に挨拶をしていく。

だが、

ひろしに挨拶をしてくる事は、なかった…。

いつも通り無言で通り過ぎようとした愛に、教師は挨拶をしてくる。

「おはよう、スカート短くないか…ん?」

丈を見るふりして太ももを見る教師。

愛は初めての経験に戸惑う。

(ちょ…なにしてるんだ…なんかぞわぞわする…。)

「お、おはようございます…だ、大丈夫ですよ…はは。」

愛は走って校舎の中に入った。

(ふぅ~。)

次は、女子達からの挨拶ラッシュが待っていた。

「おはよ~。」

「あ?おはよ~。」

「おはよう。」

「おはよう。」

「おはぁ~。」

「お、おはぁ~ははぁ…。」

(教室つくまで長い…。)

ひろしの時は、無言のストレートで自分の席まで行けた。

挨拶を返しまくっていた愛は、自分の席まで遠く感じた。

席に座る愛に追い撃ちをかけてくる3人のクラスメイト。

挨拶をしながら、愛を囲む。

「おはよう、愛…昨日かずくんでてる番組見た?」

最初に声をかけてきたのは、メガネっ子黒瀬はるかだった。

(まさか、こいつらが話しかけてくるとは…。)

「み、見てないわ…ははぁ。」

次に話しかけてきたのは、だいぶ太めの大原えみこ。

「おはよ、腹減ったぁ~。」

愛は苦笑いをする。

(そんな事言われても…。)

「朝ご飯食べなかったの?」

えみこは腹をさする。

「食べたけど…。」

次に話しかけてきたのは、朝野ひなた…。

「おはよ愛…私、彼氏できちゃった。」

愛は冷や汗をかいていた。

(こいつに彼氏…男可哀想。)

「そ、そうなの良かったね。」

(どうでも良いけど。)

その後も授業が始まるまで、いろいろ話す女子達。

愛には興味の無い話しばかりだったが、

とりあえず合わせていた。

お昼の休み時間もこの3人は集まってくる。

可愛い女の娘の愛は、みんなに好かれていた…。

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