第42話 余談

 ザザッ


 プツッ



『いいなあ、特装の船。あれに乗った3人は誰なんだ?特装には見えないけど』


『シキガミトウヤ君と、ウェスさん、リテルさんだよ。リテルさんとウェスさんは見たことあるだろ?』


『ああ!あの可愛い子達か!いいなあ、そのシキガミトウヤ君て何者さ?』


『今回の最大の功労者らしいぞ。悪しきものに取り憑かれた鬼を剣一本で止めたとかで。他にもアントルーやアントバリオンに襲われそうになっていた騎士団を助けたりしたとか。マルティア隊長が一目置いてて、セーマ副団長も信頼を置き始めたと聞いたな』


『うへえ、なんだそれ。どっちが化け物だよ!』


『そんな事言うものじゃない。彼がいなければ何人か特装でも死人が出ていたという算出だ。それほど、アレは恐ろしい力を持ってる』


『なるほどなぁ。って、あれの保管は結局どうすんだよ?』


『所持者が捕まっててどうなるかわからんし、これから暫くは王都で厳重に管理するそうだ』


『あんなもの人には持てねえだろうし、捨ててってもいいんじゃねえの?なんかこええよ、あの金棒』


『いや、そうでもないらしい。あくまでも所持者と認められればだが』


『へぇ、まるで物語な勇者の剣みたいだな』


『馬鹿、本当に勇者の剣なんだよ。あれは……』


『でもまあ、今は大量殺人犯の剣か?しかしなあ。色々事情があるとは聞いたし、まだ容疑だもんな?』


『……ああ。牢で咽び泣いたり、頭を床に打ちつけたりしてるらしいぞ。事情は込み入っているが、見た人は胸が

 締め付けられるとか、なんとか』


『やっぱ、まだ滅多なことは言えねえな……』


『ああ。それより、遺体安置所の様子はどうだった?』


『ん?別段問題はないよ。焼けた死体が沢山あって、まあ、臭うくらい。ん?いや、まてよ?』


『ん?』


『いや、なんか一つ遺体が足りないとか騒いでいたような』


『おい、この時間に怖い話はやめろよ。ただでさえ不気味な何かが暗躍してんのに』


『しかも、亜人の女性の遺体だとかで』


『余計に怖えよ!!やめろよ!』


『おい!』


『ぎゃあああ!』


『フォ、フォノス隊長!』


『私語は慎め。多くの犠牲者が居るんだぞ!』


『『はいっ!申し訳ありません!』』


『……とはいえ、お前たちももう休め。気を張り続けるのも疲れるだろう。代わりは手配するから、ご苦労だったな』


『『ありがとうございます!失礼いたします!』』


『……行ったか。ウェスタの子供達と遺体安置所の前の警戒は流石に新米2人には酷か。代わりも余裕なんてないし、今晩は私が代わりをするしかないか』


『ん?なんだこれは』


 ザザッ



 ブツッ








「ちぇ!気づかれた!勘がいいなぁ。流石特装か」


 王都の宿屋にて、指をパチンと鳴らして心底楽しそうに笑う一人の女性が居た。


「ううん、アレゾークは騎士団直下かあ。回収はできそうにないわね。消えた遺体とやらは気になるけど、まあ関係ないでしょう」


 壁面に貼り付けられた写真と、書類を見る女性は何やらあたりをつけたかのように机に叩きつける。


「シキガミトウヤ、ウェスタ、リテル、この3人の向かう先に、ウェスタの子供達がある!!」


「うるせえ!静かにしろ!」


「ひえ!ごめんなさい!!」



 まだ交差しない、新しい仲間のそんな一幕

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