第14話余談

 目を開けた。



 開けたというより、開いたのか。


 なんて、この景色を見て思う。


 のそりと起き上がると、天蓋てんがいがついた豪奢ごうしゃなベッドに白亜はくあの壁。


 段々と頭がはっきりする。


 しっかりと起き上がり、壁をつたう。


 とはいえ、足に力が入らない。


 のそのそと歩き、窓から外を見た。



 あの時は抜けるような晴天と、絶海の海。

 差し込む光が心地よい、そんな日だった。


 今は、曇天。

 生憎の雨。

 海も心なしか荒れているように見えた。


 その時、立て付けの悪い扉を開くような音と共に、声が聞こえる。


「起きたかの」


 いつもほがらかな笑みを浮かべる、亜人のリテルだ。

 なんとなく、振り向く気になれない。

 なぜか、リテルの顔が見辛いのだ。



「うん、おはよう。ウェスは?」


 はあ、とため息をつく音が聞こえるも、すぐに教えてくれた。


「…部屋で塞ぎ込んでおる。お主が様子を見にいってやれ」


「そのあとは、作戦会議じゃ!」といつものリテルに戻ったかのように、明るくドタドタと階下に降りて行った。



「…」


 空を見上げる。


 去来するのは、ここに来てから怒涛の日々だったな、という思い。

 まだ5日、いやもう6日目か?でこんな事になるなんて。


 いや。


「ウェスの所に行こう」


 頭をふる。


 へこんでなんていられない。

 この世界で生きると決めた以上は、問題に立ち向かわないといけないのだから。


 そこで、はたと気がついた。


「俺、ウェスの部屋知らない…」


 前途は多難。

 俺はまずリテルの名を叫びながら、異世界生活って大変なんだな、と思い部屋を出る。


 静かな波の音が室内にこだましていたのだった。



 ハース・メモリア


 炎と氷 始まりの終わり 完

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