第2話
俺、ルーカスとフランクは町に戻って工事現場のアルバイトを始めた。肉体を鍛えるためだ。
町に戻った俺たちを家族は批判した。
「あれだけの学費を払ってやったのに、フリーターか? 親を馬鹿にするなよ!」
俺の父は町で教師をしている。生徒に息子が魔法学校に入学したこと、ダンジョンへ潜入する勇者であることを誇っていたからだ。
俺とフランクは遺品お届け人をやりたいと話したが、親父も母親も反対した。
「そんな追いはぎをするために魔術師になったのか? お前の顔など見たくない。二度と帰ってくるな!」
フランクが肩を落とす俺を励ます。
「最初は誰だってそう思う。絶対に俺たちがやることはこの社会に必要だ。がんばろう、ルーカス」
「ああ、ありがとう」
俺たちの計画はアルバイトをしながら体を鍛え、その稼いだお金で逃避魔法を習得することだ。俺たちはダンジョンに潜入しても、魔物とも人間とも戦わない。遺品を拾ったあとは、逃げて逃げて逃げまくるだけだ。なぜなら、遺品を遺族に届けることが俺たちの仕事だからだ。
俺とフランクは実家を追い出されて、俺が幼少期から通っていた定食屋のマスターの計らいで、二階の空き部屋を格安で借りて住むことになった。
マスターの息子さんも、ダンジョンで亡くなった勇者だ。
「あいつが死んで20年だ。ルーカスを勝手に息子だと思って見てたよ。あんなところから生きて帰ってくるだけ、立派だよ」
「ありがとう、マスター。もしも、息子さんの遺品を見つけたら持ち帰るから」
「お前たちのビジネスは、俺みたいな遺族じゃねーとわからねぇよ。がんばれよ」
味方ができた。こんなにも心強いのかと、心の支えには十分だった。町に帰った俺を同級生は負け犬だと揶揄した。正直、悲しい。
だが、めげてはいけない。必ず俺たちはやらなければならない。誰かがやらなければいけないのだからと、今日も俺たちは工事現場で汗をかき、定食屋の皿を洗い、グラウンドで何度も全力疾走した。
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