33. 変化
33. 変化
オレは午後の授業が終わったあと、あの四大『蒼氷』エリス=アクアマリンと共にギルのいる病院に行くことになった。
そして今、学園から歩いて20分ほどの場所に位置する王都の中でも大きな総合病院に向かって歩いている。その総合病院は魔法学園と提携していて、治癒魔法のエキスパートが大勢在籍しているらしい。
正直、こいつと何を話せばいいんだ?魔法競技大会の時は、最初の転移魔法陣の前で見ただけで言葉を交わしたことないし、オレは本物のステラ=シルフィードじゃないから本来は『貴族令嬢』や『女子』という簡単な共通点もない。だから話題が皆無。それに、そもそもこいつがどんな奴かも知らないんだよな……。
「どうかしましたか?さっきから私を見ていますが?私の顔に何か付いています?」
「いえ、そういう訳では……」
まずい……あまりにも不自然な行動をとるとバレる。今はどうやって会話を繋げるべきかだ。そんなことを考えているとエリスが話し始める。
「あのステラさん。私はあなたのこと傍若無人、唯我独尊ワガママ放題の貴族令嬢だと思っていました。」
おいおい。いきなり喧嘩売られたんだが?まぁ……オレも実際そう思うから否定はできないけどさ。てか、この女、オレのことボロクソ言うじゃん!
「覚えていますか?昔一度私と王族のパーティーで会いましたよね。その時あなたは同じ色のドレスを着た私に『あなたのほうが身なりを気にしなくて良さそうな素材でしょ?今すぐ着替えなさい』と言い放ちましたね。あれにはさすがの私でもムカつきました。」
……そうか。オレじゃないんだけど、なんかすまんなエリス。
「そのイメージがずっとありました。でも違いました。魔法競技大会であなたは個人の勝ちより、クラスの勝ちを優先した……なぜですか?」
「え?」
なぜですかと聞かれても、『実はステラ=シルフィードではないから個の魔法能力で勝てないからあの方法しかない』とか言えないしな。どうするかな。とりあえず適当に答えとくか。
「それはクラス全体の士気を高めるためですわ。皆んなが頑張ればそれだけ勝利に近づくでしょう?」
「確かに一理ありますね。」
よし。これで誤魔化せたはず。
「しかし、私にはもう一つ気になる点があります。」
「なんでしょうか?」
まだなんかあんのかよ。
「あなたは風魔法ではなくて頭突きでグレンさんを倒したと聞きました。不思議です。身なりを気にする貴族令嬢のあなたがそんなことをするなんて。」
……あっ。ヤバい。完全に忘れてた。どうしよう。もう誤魔化しきれないぞこれ。こうなったら仕方がない。
「えっと……新しい風魔法を使いましたの。そしたら両手をグレンに止められてしまって。咄嗟に思いついたのがあの頭突きだったのですわ!人間追い詰められると咄嗟に判断できるものですわね?」
うーむ……苦しい言い訳だなこれは。流石に無理があったか?
「そうですか……まぁいいです。あなたは変わった、それがわかっただけでも収穫がありました。さて、病院が見えてきましたね」
「えっええ……」
なんか腑に落ちないが……とりあえずこの話題が終わって良かった。もしかしたら……『蒼氷』エリス=アクアマリンはオレのことを疑っているのかもしれない。警戒しておかないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます