34. 条件があります
34. 条件があります
なんか腑に落ちないが……とりあえずこの話題が終わって良かった。その後、オレ達は病院に着いた。受付の女性に面会したい旨を伝えるとすぐに案内してくれた。病室に入るとそこにはベッドの上で上半身を起こしているギルがいた。
「よう。来てくれたかステラ。それにエリスもありがとうな!オレの彼女になってくれる気になったか?」
「……なりません。あなたのしつこさは嫌いです」
「あちゃ~振られちまったぜ~」
本当に元気そうだなこいつ。というかエリスのこと本気だったんだな。
「あのギルフォード=ファルス。あなたの近くにはステラさんやカトレアさんもいます。なぜ私なのですか?他にもたくさんいると思います。」
「オレが一目惚れしたからだ。そう言っただろ?おいおい、照れるなって。可愛いところあるじゃねえか。」
「照れてません。気持ち悪いです。それと、あなたのことはまだ信用していません。私があなたの彼女になることはないです。」
「まぁいいさ。これから時間をかけて仲良くなるからな。オレは諦めが悪い男だぜ?覚悟しとけよ?」
なんだこの茶番劇……。早く終わらせてくれ……。オレはなんか蚊帳の外だし……。
「考えてみろよ?カトレアは平民のイモ娘だろ、ステラは……なんか色々足りねぇだろ?」
ギルはオレとエリスの身体を交互に見ながら話す。こいつ……足りねぇだろってそういうことかよ。ステラの代わりにぶっ飛ばすぞ?あとカトレアの悪口を言うんじゃねぇ。
「つまり、オレはお前がいいんだよ。貴族のお嬢様で、容姿もスタイルも良くて、そして何より四大で強い。オレにとって理想の女だ。」
「……そうですか。とりあえず元気そうで何よりです。もう少し頭にも衝撃を加えておけば良かったと今、後悔しています」
なんか、なんだかんだ仲良さそうなんだが……この二人。オレなんかお邪魔じゃねぇかこれ?
「あの、私飲み物を買ってきますわ。エリスはギルと話しててくださいまし」
オレはそう言ってギルの病室を出る。はぁ……こんな居心地悪くなるならカトレアも一緒だったら良かったのにな。なんて思いながらオレは飲み物を買いに向かうことにした。
◇◇◇
ステラが飲み物を買いに出ていったあとの病室。ギルフォードとエリスだけが残され
「なんか気を遣わせちまったかな?ステラに」
「私とあなたは気を遣われるような仲じゃありませんけど」
「まぁそう言うなよ」
「本当にしつこいですね……でも丁度良かったです」
エリスはそう呟くと真面目な顔をしてギルフォードを見る。そして口を開く。
「ギルフォード=ファルス。本気で私と付き合いたいのですか?」
「何回もそう言ってんだろ?」
「……いいですよ。お付き合いしても」
「は?」
ギルフォードは一瞬何を言われたかわからなかったが、すぐに我を取り戻しそのままエリスの話を聞く。
「ただし条件があります。ステラ=シルフィードさんを探っていただけませんか?」
「どういうことだ?オレにステラを裏切れって言いたいのか?」
「裏切る?なぜですか?別に今は何かを競っているわけじゃありませんよ?少し気になるだけです。彼女は私が知るステラ=シルフィードとは全く真逆と言えるほど変わった。それはもう別人であると疑えるほどに。」
エリスは真剣な表情でギルフォードに話しかける。その顔はいつものクールな表情。しかし目が本気だと語っていた。
「……だとしても。お前がオレと本当に付き合うとは限らないだろ?もしかしたら騙そうと……!?」
そう話していたギルフォードの口がエリスの口に塞がれ、ギルフォードは目を見開く。しばらくすると口を離し、エリスは微笑む。
「ふっ。これで信じてもらえましたか?この意味わかりますよね?」
「分かった……分かったよ!信じる!だからもう一回し……」
「ダメです。あなたは私にキスする価値はありません。そもそも好きでもない人とキスなどしたくありません」
「自分はしただろうが!?というかお前ってそういうのすぐにできるやつだったのか?」
「失礼ですね。私は初めてでしたよ。そんなに信用がないなら退院したら一回くらいデートしてあげますよ。それじゃ忘れずによろしくお願いいたします。」
その時丁度戻ってきたステラと入れ違いに部屋を出ていくエリス。そして残されたギルフォード。
「やっぱあいつ可愛いじゃねえか……。よし!絶対惚れさせてやる!」
ギルはそう意気込み、再びベッドへと潜った。何かあったのかテンション高いけどこいつ……?
ギルとエリスが密約を交わしていたことに、この時のオレは知る由もなかったのだった。
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