32. お見舞い

32. お見舞い




 新入生魔法競技大会が無事に終了して、3日がたった。学園内はまだ余韻が残っている。


 それにしてもまさかオレたちのような落ちこぼれクラスが優勝するなんて思っていなかっただろう。優勝したことで生徒たちのオレたちを見る目が変わった……ということは全くない。そしてクラスに編入してくる生徒もいなかった。


 まぁ……当然だな。


 オレは颯爽と魔法でグレン=フレイザードを倒した訳じゃないし。むしろ頭突きでしとめたからな……


 でも、そのおかげで気兼ねなく授業を受けることが出来るから助かっている。


「ステラ様。おでこ大丈夫ですか?」


「えぇ……もうすっかり」


 オレはおでこを見せてカトレアに微笑む。それを見たレオンが呆れて言ってくる。


「ステラ。君は貴族令嬢なんだから、おでこを広げて見せるのはどうかと思うぞ?もう少し慎みをもったらどうだい?」


「あら?別にいいじゃない。減るものでもないんだし……」


「そういう問題じゃないだろ……本当イメージと違ってガサツだな君は。」


 うるせぇ。オレは男なんだから仕方ねぇだろ。これでもかなり気をつけて生活してるぞ?ステラ=シルフィードになりすましてな?ちなみに今は昼食の時間なので食堂にいる。


「そう言えば、入院しているギル君も元気で良かったですね!」


「そうね。本当に私たちが勝てたのはギルが『蒼氷』エリス=アクアマリンと戦ってくれてたからだものね」


 四元の法則の劣性の相手、しかも四大を相手にしてくれた。そんな人と戦ってくれていたからこそ勝てたんだと思う。もちろんラスター=アースランドを心理戦で騙してくれたカトレアやレオンのおかげでもあるけどな。


 オレは昼食に頼んだシチューを一口すくって口に運ぶ。すると後ろの方で聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ごきげんよう。お食事中ごめんなさい。少しいいですか?」


「え!?エリス=アクアマリンさん!?」


 カトレアが驚きながら返事をする。その慌て具合がまた面白い。この子は見てて飽きないよな。まぁ無理もないか。まさかあの『蒼氷』がこんな所に現れるとは思ってもいないだろう。


「何か用かしら?」


「まずは新入生魔法競技大会おめでとうございます。カトレアさん、ステラさん」


「ええ。ありがとう。それで?」


「その……ギルフォード=ファルスは大丈夫ですか?」


 あ~やっぱり気にしてたか。まぁあんなに魔法でボコボコにして、病院送りにしたんだもんな。そりゃ気になるわな。


「元気だから安心してくださいまし。もうすぐ退院も出来そうらしいので」


「そう……ですか」


 エリスは少しほっとしたような顔をしている。本当は直接謝りたかったのかもしれない。すると空気を読んだカトレアがエリスに提案する。


「それならエリス様。ギル君のお見舞いに行ってみてはどうですか?ギル君喜びますよ」


「い、いえ!私はそんな……迷惑ですし」


「この前お見舞いに行ったときにエリス様の話してましたよ?『あいつはオレの女』『変なやつが近づかないように見張ってくれステラ!お前の仕事な』とか良くわからないこと言ってましたし。」


「あー。そんなこと言ってたましたわね。なぜ私に頼むのか理解不能でしたけど」


 そうだギルのやつ、なぜかオレに頼みやがって。エリスを見張るくらいならカトレアを見張るぞオレは。そんなことを考えているとオレの視線に気づいたのかカトレアが首を傾げながら不思議そうにしている。


「ステラ様?どうかしましたか?」


「なんでもありませんわ。それよりどうしますの?ギルのお見舞いに行きたいのでしょう?素直になってはいかがです?」


 エリスは観念して小さくため息をつく。そしてオレたちに向き合う。


「分かりました。出来れば一緒についてきていただきたいのですが?」


「ならステラ一緒に行ってあげたらどうだ?」


「は?私ですの?」


「朝ルーティ先生が言ってたけど、今日は放課後に魔力測定があるだろう?正直、ステラやエリスさんの四大には関係ないと思うから。どうせ時間が空くだろ?」


 魔力測定……マジか。話聞いてなかった。もし知らずにそのまま受けてたら、オレがステラ=シルフィードじゃないことがバレるところだったぞ。レオン、よくやった。


「そっそれもそうですわね!エリスがよければ一緒に行きますわ」


「それなら、お願いしますステラさん」


 こうしてオレは、四大『蒼氷』エリス=アクアマリンと共にギルのお見舞いに向かうことになるのだった。

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