31. 噛み合う歯車は勝利に向かって⑥

31. 噛み合う歯車は勝利に向かって⑥




 優勝者が告げられた。オレはその通信を聞いてほっと胸を撫で下ろす。良かった、カトレアとレオンのやつ、うまくやってくれたみたいだな。


 《準優勝は星の総数76個。ステラ=シルフィードさん、3位は星の総数72個エリス=アクアマリンさんです!》


「どういうことだステラ=シルフィード……お前……」


「まさか私が星を68個持っていると思ってましたの?そうでしょう。普通はそう思いますわよね?でも残念でしたわ、私たちはこの最後の時間が始まった時にカトレアに星を77個、レオンに19個、私とギルに1個ずつ分配しましたのよ」


「なんだと……」


「だからもし私が負けてもあなたの星は76個。カトレアには勝てない。だから言ったでしょ。初めから私とあなたの勝敗は関係ないと。これは仲間がいたからできた作戦。早々に自分だけ勝とうとしていたあなたたちにはそこまで考えが及ばなかったみたいですわね?」



 ◇◇◇



 同じく大木に向かう道中にいるギルフォードとエリスもその通信を聞いていた。


「……なるほど。星の分配ですか」


「これもステラの作戦だ。もしオレがお前を止められなくても、決着がつかないように立ち回っていたと思うぜ?」


「私はグレン=フレイザードを倒すしか勝つ方法がなかったのですね。それにしても良くステラさんの作戦に乗りましたね?あまりにも無謀な作戦です」


「まあ確かにな。でもあいつはなんか……貴族令嬢っぽくないんだよ。あの時あいつは自分の勝利よりも仲間の勝利を優先した。そんな普通の貴族令嬢がやらないような、面白いことをやるやつなんだよステラは。」


 エリスは少し驚いた表情をしていた。自分の知るステラ=シルフィードはもっと傲慢で高飛車なお嬢様だったはずだ。だがギルフォードの話を聞くとまるで別人のような印象を受ける。


「それより、オレの星をもらって良かっただろ?これでお前はオレのこと忘れないだろ?」


「本当に迷惑です。……でも名前くらい覚えときますよギルフォード=ファルス。ではまた。」


 エリスはそう言うとさっさと歩いていってしまった。


「ったく素直じゃねえんだから……。でも可愛いな、やっぱり惚れちまった。絶対オレの彼女にしてやるからなエリス=アクアマリン」


 ギルフォードも気合を入れ直し、何とか歩けるまで回復した身体でみんなのところに歩いていく。



 ◇◇◇



 高台にいるカトレアとレオンは喜びを分かち合っていた。


「やったなカトレアさん」


「はい!みんなのおかげで勝てました!」


 2人はお互いの健闘をたたえ合いながらハイタッチをする。そしてお互いに目を合わせて笑みを浮かべる。その様子を見ていたラスター=アースランドは呟く。


「これは……やられたよ……。まさか君が星を持っていたとはね?」


「お前は星を持っているのがステラだと思っていたんだろう。あの時点ではそれが一番あり得る話だからな。だが実際は違った。お前は最後までボクたちのことを甘く見過ぎていたようだな。まあお前にとってボクたちはただの落ちこぼれクラスのどうでもいい存在だったってことだろうけど」


「ふむ……それもそうだね。今回は完敗だよ。だが次は負けるつもりはない」


 そう言ってラスター=アースランドはその場から去って行った。


「レオン君。ありがとう。一緒に戦ってくれて。でもなぜ星を私に渡してくれたんですか?最初はステラ様もレオン君にって言ってたのに……」


「……ボクは貴族の中でも底辺貴族の生まれだ。だから実力を示して成り上がらないといけない。そう思っていた。」


「レオン君……」


「でも。ステラを見て思ったよ。彼女は公爵令嬢なんかの地位を振りかざすわけでもなく、純粋にみんなで勝利を掴みたいと思っていた。それはきっと彼女が強いからだ。……ステラの言葉を借りるならボクが勝つより平民のカトレアさんが勝ったほうが面白いんじゃないかなって思ってね」


 そう言うレオンはどこか吹っ切れた顔をしていた。そしてカトレアは微笑む。


「さぁレオン君。ステラ様とギル君のところに行きましょう!みんなでお祝いです!」


 カトレアはレオンの手を引いて、そのまま森の中央にある大木に向かう。こうして新入生魔法競技大会は幕を閉じるのだった。

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