26. 噛み合う歯車は勝利に向かって①
26. 噛み合う歯車は勝利に向かって①
オレは森の中央にある大木の前で四大の『破炎』グレン=フレイザードと対峙をする。とりあえず、あの挑発的な通信でこいつがここに来て良かった。まずは1つ目の条件はクリアだな。
オレたちが勝つ方法はグレン=フレイザードより星を多く集めるかつ他の四大同士で戦い、勝敗がつかないこと。だからあの通信をおこなったのだ。
「さて、始めるか。焼き焦がしてやるよステラ=シルフィード!」
グレンはそう言うと右手で赤い魔法陣を描き、炎属性魔法のファイアボールを発動する。そして左手には違う赤色の魔法陣を描いて炎属性魔法のフレアボムを同時に発動させた。
2つの異なる色の魔法陣から放たれた巨大な火の玉は一直線にオレに向かってくる。2つの魔法を同時に発動することはなかなかに難しいことだ。それを平然とやってのけるあたりやはり強い。
「燃えな!」
「くっ……」
オレは迫り来る2つの火の玉を冷静に見極め避ける。着弾と同時に爆発し轟音が鳴り響く。なんて威力だよ……そんなことを考えているのも束の間、爆煙の中からグレンが現れる。
「へっ!かかったな!オラァッ!!」
「なっ!?」
突如目の前に現れたグレンは拳を振りかぶって殴りかかってきた。咄嵯の出来事だったが何とかガードできた。
「おいおいどうした?防戦一方じゃねぇか?もっと楽しませてくれよ!」
「この野郎……」
グレンは魔法は使わず、攻撃の手を止めずに連続で蹴りやパンチを放ってくる。その動きは非常に速く目で追うことすら困難だった。なんとか攻撃を捌きつつ反撃の機会を探る。
「ほらほらほらぁ!!逃げてるだけじゃオレ様は倒せねえぞ!!」
「……女を痛ぶるのが趣味なのあなた?性格悪いわよ?」
「どんなに強がっても最後には泣きながらオレにひれ伏すんだよ。最高だろう?特にお前みたいな女がなぁ!!!」
「本当に気持ち悪いわね……あんまり調子に乗るんじゃないわよ……」
オレは一瞬の隙を見てカウンター気味に回し蹴りを放つ。しかし、グレンはその蹴りを腕で受け止め、ニヤリと笑みを浮かべる。
「ハッ!こんなもん効かねぇよバーカ!」
そしてそのままオレを投げ飛ばす。
「あばよ、フレイムストライク!」
グレンは魔法陣を描き炎魔法で巨大な火の玉を造りだし発動する。さすがにこの体勢じゃ避けられない。直撃は免れないだろう。
そのままその巨大な火の玉はオレを飲み込みながら、大木に激突する。大木に叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が全て吐き出される。息ができない。さらに火球の熱により身体中が焼けるように熱い。
「ぐぅ……ゴリラめ……」
痛ぇ……これが魔法かよ……。どうにか立ち上がりダメージを確認する。制服の一部が少し焦げているが、戦闘に支障が出るほどのものじゃない。これならまだいけそうだな。
「ちぃ……しぶてぇヤツだ。四元の法則でもさすがにお前は一撃では倒せんか」
「ちょっと……この制服弁償しなさい。あとクリーニング代も請求させて貰うわ」
「この状況でよく口がきけるなお前……まあいい、次の一撃で終わりにしてやるぜ!」
グレンは再び魔法陣を描き始める。先ほどよりも多くの魔力が込められている。そして大量の炎玉を造りだしそれをオレに向かって放つ。
「これで終わりだステラ=シルフィード!」
それはまさに炎の嵐と呼べるものだった。広範囲に広がった無数の炎の塊は全てを燃やし尽くすかのように襲いかかってくる。そしてオレをも飲み込み焼き尽くしていく。
「やりすぎたか?まぁ治療費くらいは出してやるよ」
そんなことをグレンは言いながら勝利を確信していた。
しかし噛み合った歯車は勝利に向かってゆっくり回り動きだす……。
本物のステラ=シルフィードはリリスにこう言っていた。『でも1つだけ勝機があるなら、あのステラ=シルフィードはカラスさんと言うことですわ』と。
爆炎が晴れていくとグレンは恐ろしい光景を目の当たりにする。そこには静かに佇むステラ=シルフィードの姿があったのだ。
「バカな!?あれだけの炎を受けて無事だと!?ありえん……何なんだコイツ……」
「この程度の炎なの?四大が聞いて呆れるわ。でも少し火傷したわよ?本当に治療費も出しなさいな。次は私の番ですわよ?」
何とか風魔法でバリアを張れて良かった。これは少し賭けだったが、どうやら思った通りだった。オレの適性は……『風属性』じゃないんだ。もちろん風魔法がうまくコントロールできないのはオレの魔力が低いのもあるけどな……。
オレは目の前のゴリラを見る。すごく顔を歪めてやがる。ざまぁみろ。さぁここから反撃開始だ。『破炎』グレン=フレイザードを倒してオレたちが必ず勝つ!
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