25. 誇らしく

25. 誇らしく




 ここは王立魔法学園の来賓ホール。新入生魔法競技大会を観戦しようと、王族や有力貴族たちが続々と集まってきて巨大な魔法液晶スクリーンで観戦をしている。


 そこに映る少し長くなった金髪、翡翠色の瞳の少女。今その少女はとてつもなく馬鹿げたことを発言していた。


 《指名しますわ!グレン=フレイザード。この森の中心にある大木まで来なさい、私が直々に相手をしてあげますわ!わざわざ風属性の私が炎属性のあなたを相手にする意味分かりますわよね?それでは待ってますわ》


 それを聞いた周りの者は全員呆気に取られていた。


「なっ……」


「え?何を言っているんだ?わざわざ四元の法則を破るだと?」


「この方は一体何を仰っているのかしら?勝てるわけないですわよね?」


「もしかしてシルフィード家の令嬢はご乱心なのか!?」


 会場にいる全ての者が困惑している中、一人の女性だけはいつも通りニコニコしながら、自分が仕えるその令嬢が映る魔法液晶スクリーンを見ていた。


「ふふ。ずいぶん楽しそうですねエリック様」


 そんな時、通信魔法具に通信が入る。その女性は席を立ち、少し離れた場所で通信を受ける。もしかしたら心配なさっているのかも?とかほんの少しは期待する。


 《ごきげんようリリス。カラスさんはバレて死んだかしら?》


「ステラ様。エリック様は最後までクラスメートの方と共に残っておりますよ。今は3位ですね」


 《あら?つまらないわね。というか3位とかダサすぎですわ。まったく。もっと上を目指しなさいと言ったはずなのに。まぁいいですわ。》


「エリック様はステラ様じゃありませんから。」


 リリスは思うことがある。ステラ様はエリック様を気にいっていると。長年仕えているから分かる。ステラ様は唯我独尊でワガママだ。そんなステラ様が自分のことじゃなく、他人のことで頻繁に連絡をしてくるのは初めてのことだからだ。


 《今どんな状況ですの?》


「エリック様が四大の……」


 《あーあのゴリラを相手にしようとしていますのね?まぁ誰が相手でもカラスさんが勝てるとは思いませんけど》


「え?どうして分かったのですか?エリック様が『破炎』グレン=フレイザードを相手にしようとしていると?」


 リリスが不思議に思って聞くと、ステラからの返答は意外なものだった。


 《そんなのカラスさんが仲間と戦っているからですわ。なんとなく勝つ方法が分かりましたわ……やり方に文句は言わない約束でしたものね。いいですわ。リリスこれだけあのカラスさんに言っておいてくださいまし『次は私の顔に泥を塗るのはやめなさい』とね》


「……わかりました。ステラ様。エリック様は勝てますか?」


 《さあ?でも1つだけ勝機があるなら、あのステラ=シルフィードはカラスさんと言うことですわ。あっ高級魔法船が来ましたわ。それではまた》


 通信が切れた瞬間、リリスはニコッと微笑んだ。そして再び魔法液晶スクリーンを見つめる。


「なるほど。確かに。そうかもしれませんね」


 リリスは自分が仕える2人のステラ=シルフィードを誇らしく思ったのだった。

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