22. 威力が違いすぎる

22. 威力が違いすぎる




 オレたちはレオンの指示通り、地図を見ながら高台を目指して歩いている。あれからどんどん時間は過ぎていったが、特に大きな戦闘をすることはなかった。そのまま歩き続けていると森全体に通信が入る。


 《現在のトップはグレン=フレイザード!星の総数62。次点、エリス=アクアマリン星の総数39。残り時間6時間!》


 あのゴリラが1位なのか……。まぁまだ時間はあるから問題はないのだが。ちなみにオレたちは星を分配している。途中で新たに手に入れたものを含めると今は各個人12個持っている。


「もう62個も集めてるんですね……やっぱり四大はすごいです」


「そりゃそうだろう。この新入生魔法競技大会はほぼ四大の戦いと言っても過言じゃないからな。」


「それよりトップがあのグレン=フレイザードか。厳しい戦いになりそうだなステラ?」


 厳しい戦い。それは初めから分かっている。そもそもオレたちは人数が少ないし、オレはステラ=シルフィードじゃないしな。とりあえず今のところはまだ問題はない。早く高台に向かわないと。


 そしてまた歩きだし、高台の近くまでくると突然3人組の男子生徒たちが前を立ちふさがる。


「ここは通さん!」


「ステラ=シルフィード!星を渡せ!ボクたちはエリス令嬢親衛隊だ!」


「本当に美しいのはエリス=アクアマリン様だ!」


 なんだこいつら?あのイケすかない女『蒼氷』エリス=アクアマリンについてるやつらか。それより美しいのはって目的変わってるぞ?まぁどうでもいいけどな。そんなことを思っていると、すでに戦闘が始まっていた。


「まぁステラはそこで見てな。こんな奴らにお前の魔法を使う必要はないだろ?」


「ですです!美しいのもステラ様ですからね!」


 ギルとカトレアは前に出て、魔法陣を展開していた。ギルとカトレアの手には炎が集まっている。


「行くぜ?ヒートバレット!」


「行きますよ?カトレアフレイム!」


 2人の放った攻撃は、それぞれ相手に向かって飛んでいき、着弾すると同時に爆発した。そして煙が晴れるとそこには、相手の3人が倒れていた。


 強っ!あれが本物の魔法か……オレのやつなんかオモチャみてぇじゃねぇかよ……。


「ん?どうしたステラ?顔が青いが」


「え。いやなんでもありませんわ。心配してくれてありがとうレオン」


 ヤバイヤバイヤバイ……これは予想以上だ。こんなんじゃみんなの前で魔法なんて使えねぇ!


「まぁこんなもんだな?さて星を回収しようぜ!」


「あのあのステラ様!どうでした私のカトレアフレイム!まだまだステラ様には遠く及びませんけど……」


「そっそんなことないわ?素晴らしい魔法ねカトレア。ははっ」


「ホントですか!?嬉しいです!」


 カトレアは跳び跳ねて喜んでいる。それを見たオレは苦笑いをするしかなかった。だってあんな威力のある攻撃魔法をオレは使えないしな……。


 それからしばらく歩いていくと、目的の高台にたどり着く。周りには誰もいないようだ。


「ここで一度休憩にしませんか?」


「そうね」


「これからの作戦も話し合おう。ここからは本格的に四大との戦いが始まるだろうからな」


 オレたちは木陰に座って、一息つくことにした。


「まずは情報を整理しましょう。私たちが勝つにはその少ない情報を有効活用しなければなりませんから」


「少しいいか?1つ分かったことがある。」


 レオンが何か思いついたらしい。一体何だろうか?


「さっきの通信を聞いて思ったんだが、『破炎』グレン=フレイザードは仲間の星を自分に集めていて、『重岩』ラスター=アースランドはボクたちと同じく分配していると予想される。『蒼氷』エリス=アクアマリンはその辺りは自由にしていそうだな。」


「星の数を考えるとそうかもしれないですね。ステラ様は実際は30個ですもんね。あの62個は異常ですよね」


「そうなると、人数が一番多いのはラスター=アースランドのところって訳だよな?」


「そうなるな。でもラスター=アースランドは土属性だ。おそらくステラがいる以上まだボクたちを襲ってくることはない。そしてトップのグレン=フレイザードも動く必要がない。だから『蒼氷』エリス=アクアマリンについては一番気を付けるべきだ。」


 なるほど。確かに言われてみるとその通りかもしれない。『蒼氷』エリス=アクアマリンはほぼ単独で行動していて、かつ強い。そして四元の法則にも唯一優劣がつかない『水属性』だ。


「とりあえず今分かっているのはこのくらいかな。あとは実際に戦ってみないと分からないことも多い。だが今は魔力を少しでも回復したほうがいい。ボクが結界魔法を展開しておく」


「レオンって補助魔法が得意なのかしら?」


「どちらかと言えばだがな。ボクの属性は光。攻撃魔法より結界などの補助向きなんだ。」


 へぇ~知らなかった。まぁレオンのことだし嘘ではないと思う。こうしてオレたちは来るべき時まで、束の間の休息をとるのだった。


 新入生魔法競技大会終了まで残り4時間56分。

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