11. 邂逅 ~カトレア視点~
11. 邂逅 ~カトレア視点~
花が咲き誇る季節。私は今日から王立魔法学園の新入生になる。新しい制服を身にまとい、身だしなみを整えて部屋を出た。
私の名前はカトレア=セルディック。特別なことは何もないただの平民だ。でも小さい頃から周りの子たちより、魔法の才能があった。そしてこの日の為にたくさん勉強もしたし魔法の練習も欠かさなかった。だから本来貴族や王族の血筋の者しか入学できない王立魔法学園に平民でありながら合格することができたのだ。
「おはようございます」
「あら、おはようカトレアちゃん。いよいよ今日ね」
家を出ると近所のおばさんに声をかけられた。
「はい!やっとです!」
「ふふっ、そんなにはりきってるとすぐに疲れちゃうわよ?」
「大丈夫ですよ。体力だけは自信があるんです」
「そうだったわね。それじゃあ頑張ってね」
「ありがとうございます!」
私は笑顔でお礼を言うと学園に向けて歩き出した。しばらく歩くと見慣れた風景の中に大きな建物が見えてきた。あれこそが王立魔法学園だ。私の他にもたくさんの生徒たちが同じ方向に向かって歩いていた。
「ここが王立魔法学園……大きいなぁ」
学園の敷地はかなり広くて迷子になりそうだ。私は地図を見ながらなんとか学園の中に入った。中に入るとそこはまるで別世界のように感じた。綺麗に整備された芝生に大きな噴水、美しい花々などが目に映った。
そして私は新入生のクラスが掲示されている掲示板の前にたどり着いた。掲示板には多くの生徒が群がっていた。
(えっと……私の名前……あった)
私が探していた名前はすぐに見つかった。今年はあの有名な公爵家の四大が全員入学しているらしい。もちろんそんな人とお近づきになれたら嬉しいけど、あまり期待しない方がいいかもしれない。
私みたいな平民なんか相手してくれるわけないし、それに友達を作るためにここに来たわけじゃない。
「よし……」
気合いを入れて自分の名前が書かれた紙を持って教室に向かった。その途中もたくさんの視線を感じたけど気にしないようにして目的の場所についた。
「ここだよね」
私は扉の前で深呼吸をした。これから私の新しい生活が始まるんだ。そう考えるだけで緊張してきた。そんな時、後ろから声をかけられた。
「あなた邪魔よ?さっさと入りなさいな」
振り向くとそこには一人の美少女がいた。腰まで伸びた金色の髪に翡翠色の瞳が特徴の少女。その気品溢れる姿はどこかのお姫様のような雰囲気を漂わせていた。
「あっごめんなさい」
私は慌てて道を譲った。すると彼女はそのまま教室に入っていった。
「なんだろう今の人……すごく可愛かったな」
私は彼女が入っていった教室を見つめながら思った。彼女もこの学校に入学するということは貴族ということだろうか。まあ貴族の令嬢なんて平民の私にとっては雲の上の存在だし……。
「私も早く行かないと」
そう思い直して私も急いで教室に入り席に着いた。それから少し時間が経つとなぜかクラスから生徒がどんどんいなくなっていく。このクラスの担任の先生は能力が低いと言われているかららしい。
私だって平民じゃなければ……
そして最後に教室に残ったのが私と先ほど入り口であったあの美少女だけだった。
「ちょっといいかしら?」
「はい!?」
突然美少女が話しかけてきて私はびっくりした。
「今日は顔合わせだけでしたわよね?」
「あっはい。正式な入学は1ヶ月後です」
「そう。ありがとう。それにしても、この『風神』ステラ=シルフィードを待たせるなんて万死に値するわよ。まったく」
えぇ!?今さらっと凄いこと言ってなかった!?っていうか、やっぱり本物の公爵令嬢だったんだ。
『風神』ステラ=シルフィード。四大の『風』を司る大貴族であり、風の魔法に関しては他の追随を許さない実力者。しかもまだ十六歳という若さでありながら既に学園ではトップの成績で入学したという噂が広まっている。
そんなすごい人と同じクラスに!?でもなんでこのクラスに残ってるんだろう?
「あの……クラス移らないんですか?ステラ様」
「は?なぜ私が移る必要があるのかしら?意味わからないわねあなた。それにしても本当これから3年間も退屈だと思うと憂鬱ですわ。」
「あのあの!このクラスの先生はあまり指導力がないって噂ですよ?その……ステラ様くらい優秀なら他のクラスのほうが……」
「うるさいわねあなた。平民のくせにいちいち指図するんじゃないわよ」
「ごめんなさい……。でも、せっかく頑張って魔法学園に入学したのに……こんなんじゃ誰も認めてくれないし、あんまりです。もし私が貴族や王族ならクラス移れたのかな……」
「……ふぅん。あなたってバカなのかしら?」
いきなりバカと言われてしまった……。いくら四大の『風神』とはいえ、初対面の人にバカ呼ばわりなんて失礼です。そんな私のことはお構いなしにステラ様は続けて話す。
「だってそうでしょう?あなたはすでにこのクラスのナンバー2なのよ?有名になりたいのならこんなに楽なことないと思いますわよ」
「えっ?」
「もちろんこの私『風神』ステラ=シルフィードがいる限りトップにはなれないですけど。それに先生なんて誰でも構わないわ。この魔法学園の教師の時点でそこそこの能力がある。まぁこの私には関係ないけど?」
その言葉を聞いて私はそんな考えのできるステラ様を羨ましく思った。そして同時に憧れの存在になったのだ。この人と一緒に頑張りたいと思った。だからこそ、平民出身だからと卑下していた自分をステラ様に否定され、初めて認められた気がした。
「そっか……そうですよね!私も今2番手。ありがとうございますステラ様!」
「おかしな子ねあなた。別に礼を言うほどのことでもないでしょう?」
「あのあの私をステラ様の弟子にしてください!一緒に頑張りたいんです!」
「お断りよ。なんでそんな面倒なこと、それにあなたみたいな平民と私は釣り合わないわ。……でも少しは役にたちそうなら考えてあげなくもないけどね?」
そう言って少し微笑みを浮かべて話すステラ様。こうして私の新たな目標ができたのである。いつかこの人と一緒に強くなって立派な魔法使いになるんだ!
残り1ヶ月しかないけど絶対に諦めたりしない!今までだっていっぱい頑張ってきたんだから。そう。これが私とステラ様の最初の出会いだった。
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