10. 血筋
10. 血筋
今日も何も変わらずルーティ先生の授業を受けている。クラスの生徒はオレとカトレアしかいないが、その教える姿は一生懸命で、見ているだけでこちらもやる気が出てくるような気がする。
というより、オレにとってはすごく役にたつことばかりだし助かる。本物のステラ=シルフィードなら、やっぱり退屈なんだろうか……そんなことを考えていると、突然教室の入り口が開く。そこには赤髪の男。
「あの今授業中ですけど……?」
「あの人誰ですかねステラ様?」
オレは笑みを浮かべて言ってやることにした。
「初日から遅刻とはずいぶん偉くなったものね?」
「ああ?そんなことより、約束を守れよ。あと勘違いするなよ?お前の昨日の言葉にムカついたから来ただけだ。」
「はいはい。どうぞご勝手に」
するとギルフォードは空いてる席に座る。そして、そのままルーティ先生の話を聞く体勢に入った。
「あの?」
「ギルフォード=ファルスだ。今日からこのクラスに在籍させてもらう。いいよな先生?」
「えっ?もっもちろんです!一緒に頑張りましょう!」
「そうなんだ。あっ私はカトレア=セルディックです。よろしくギル君」
「おう」
なんだかんだ素直じゃねぇなこいつ。まぁこれで、少しはこの学園生活にも楽しみが増えたってもんだぜ。しかも同性の舎弟(?)までできるとは嬉しい誤算だった。
「ステラ様。さっきからニヤニヤしてますけど、もしかしてギル君のこと?」
「は?そんなわけ!……ないじゃない。嫌だわカトレアったら!おほほ」
やめろ。オレは男だ。こうして、ギルフォードという新しい仲間が加わった。これから何が起きるのか期待しかない。そう思うと、自然と笑みが溢れてしまうのだ。
そして授業が終わり、放課後。オレたちは週末の新入生魔法競技大会について話し合うことにする。やはり1人増えるだけでも違うよな。
「これで魔法競技大会もなんとかなりそうですね!」
「オレ1人増えたところで何も変わらないと思うがな」
「そんなことないですよ!ねっステラ様!」
「そうね。人数は多いに越したことないですわ。」
するとギルフォードがオレを見る。いや睨んでいる?なんだその目は。言いたいことがあるなら言ってくれればいいものを。
「……何かしら?」
「お前本当にあの『風神』ステラ=シルフィードだったんだな?」
「あなた今まで私のこと誰だと思っていましたの?」
「男を魔法じゃなくて、拳でのす変な女」
こいつ思ったことをすぐに口に出しすぎじゃないか?まあ間違っていないからなんとも言えないけど。
「そういえばステラ様はこの前も、食堂で相手の顔を掴んで床に叩きつけてましたよね?魔法じゃなくて」
「えっとぉ……あれは護身術ですわ。わざわざ魔法なんか使わなくても問題ないじゃない?しかも魔力が減るのも嫌ですし」
「護身術?昨日のはただの喧嘩に見えたが?頭突きしてただろお前」
うるせぇぞギル。揚げ足みたいなのを取るなよ。それは不馴れな魔法を使うより、拳のほうがはやいからだ。しかも万が一魔法を使って威力が弱すぎて話にならなかったらバレそうだしな。
「もうその話はいいでしょう?それより魔法競技大会の話をしましょう」
「構わないがどうやってもオレたちが勝てる可能性はほぼ0だぞ?他の新入生の半分以上はクラス単位、グループ単位で四大の派閥らしきものが出来上がっているからな」
「でもステラ様も四大ですよ!」
「……無能な教師のクラスに在籍する変人の『風神』ステラ=シルフィード。四大の落ちこぼれってお前は周りから噂されてる。好んでお前の仲間になるやつなんかいないのが現状だろ?」
酷い言われようだな……。別にオレは気にしないけどさ。
「私は別に気にしないわ。それよりなぜルーティ先生がそんな風に言われてるのかしら?授業を受けていてもわかるほど教え方が上手いし、優しい方だと思うのですけれど」
「平民出身だからだろ。この国は血筋が絶対だ。貴族の連中が平民を見下しているせいで、差別意識が強いんだよ。あの先生は普通だ。でも平民出身。それが余計に拍車をかけてるんじゃないか?」
なるほどそういうことか。それならルーティ先生への当たりの強さも納得できる。貴族にとって平民は奴隷のような存在。自分よりも下に見ているからこその扱いだろう。
「私も平民出身ですけど……。私はステラ様のおかげで自分に自信がもてたんです!」
「へ?私?」
「覚えてませんか?ステラ様があの時私に言ってくれた言葉。私は忘れません」
そう言ってカトレアは嬉しそうに話し始める。そういえばカトレアと初めて会った時に、「またお会いできましたね!」とか言ってたよな。あのワガママ貴族令嬢が何を言ったのかは少しは興味あるな。
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