=3 =3 =3 =3 =3

 それでも少しだけ気がかりになった俺は、一部で「気持ち悪い」と噂される、彼の修行風景をこっそり覗いてみた。

 奇声を上げていたり、アクロバティックな鍛錬をして怪我でもされたら、仕事にも支障が出るからな。

 休憩中の彼は、半地下の資料室にいた。

 そして、まさにかめはめ波か、波動拳かと思うような動作を、声も発さずに繰り広げている。

 腰の辺りで両手を構え、溜めた力を放つかのようにその手を前に突き出す。

 ただそれだけの行動を飽きもせず続けている。目つきがやけに真剣だ。

 最初は声を殺して笑ってしまったが、五分も見ていると俺が飽きてきた。

 十分くらい、彼の挙動を見守り続け、特に危険がない事を確認して俺は仕事に戻った。

 そんな日が何日か続いた。

 サボり常連は田中くんの修行場所を避けてサボるようにしたのか、その後は特にトラブルもない。

 俺はたまに彼の様子を覗きに行ったが、破っとやらが出た雰囲気はなかった。

 人目を気にしてか、資料室がメインの修行場所になったようだ。

 仕事が終わって会社を出ると、同じく定時で仕事を終えた田中くんが道端でアキレス腱を伸ばしている。

「走って帰ってるのか」

「はい、なにごとにもまずは体力ですから」

 こんなに頑張ってるんだから、いつかはきっと出る、俺もたまにそう思う。田中菌が伝染したかな。

「成功しても、会社の壁には穴を空けないでくれよ。改築したばっかりなんだ」

 応援のつもりで俺は言った。少しだけ驚いた表情をした田中くんは、

「気を付けます。では、お疲れ様でした。また明日」

 と告げて走り去った。すごく速くて驚く。

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