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田中くんを採用しようと思った理由は、彼の応対が落ち着いて好印象だったこともある。
それに加えて、帰宅した俺に女房が言ったことが決定打となった。
「あなただって、私と付き合ってたころは金髪でギターを弾いてたじゃないの。あなたを親に紹介する時、すごく勇気がいったのよ」
俺も、女房の両親に会うときは少し緊張した。
だが、その後に義父となる人は俺に会ったとき、淡々とこう言ったのだ。
「人様に迷惑をかけてないなら、どんな趣味があったっていいじゃないか。わしは音楽はわからないが、夢中になれることがあるのはいいことだよ」
あのときは感動したな。惚れた女と一緒になれる上に、すばらしい親まで増えるんだから。
他人の趣味がなんであれ、それで人間性や資質を判断するのは野暮だ。偏見と言ってもいい。
そういった経緯があり、俺はその週のうちに田中くんに電話をかけ、採用を伝えた。彼は素直に喜んでくれた。
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