第3話ゾンビの指南

藤岡とゾンビ栗原さんは、テーブルでレッドアイを呑みながら、栗原さんの歴史を聴いた。

「それがし、出身は……」

「薩摩だろ?」

「な、なんと。それがしの出身をご存知とは神通力を持っているでごわすか?」

「……ごわすっていうの薩摩なんだよなぁ」

「これから、藤岡殿を殿と呼んで宜しいか?」

「うむ、苦しゅうない。栗原よ、私は明日、大口の営業があるんだ。成功するかな?」

「殿、殿のお役になにか立ちとうござる。それがし、実の母に毒を盛られ死にましたが故に」

栗原は5杯目のレッドアイを飲んだ。

「昔の人間はかわいそうだな~。同情するよ」

「それは、勿体無いお言葉でごわす。それがしが死んだ後、弟が家督を継ぎ野原に埋められましたでゲス」

「今日から、栗原はワシの側用人じゃ。明日の取り引きの成功の秘訣を教えてくれ」

栗原は、しばらく眼を閉じ、見開いた。

「何か、浮かんだか?」


「殿は葉山建設営業課でごさるな。明日の取り引き先の大東商事の若林営業本部長は、大の釣り好きでごわす。魚釣りの話しで盛り上がりワクワク動物ランド建設の仕事を取る事が見えておりもうす」

「釣りか~。何か釣りバカ日誌みたいな話だな」

「若林営業本部長はヘラブナ釣り名人じゃ。ゴルフより、ヘラブナ釣りで懇親を深めたらどうでごわす?」

「栗原、信じるぞ。ワシはもう寝る。トマトジュースはあの箱に何本も入っているし、牛肉も出しておくから、明日はそれで凌ぎな。外出は禁止」

「殿、それがし、日光を浴びると身体が燃えるのでゲス」

「じゃ、寝るね。後、緊急な時はこの電話機で、番号を押すとワシと喋れるから」

「でんわ?」

「うん、こうやって受話器を上げて、この1のボタンを押せばいいから。お休み」

「殿、今夜はお初に御目にかかりましたのに、ご親切に。かたじけない」


藤岡はベットで寝た。栗原は、トマトジュースを呑みながら深夜番組を見た。

そこに、水着姿の女の映像が映った。

「な、なんと破廉恥な。……よか、乳の大きさでゲス」


翌朝、藤岡は身支度をして、玄関で、

「では、行ってまいる。栗原」

「今日は首尾よく行けば、肉の塊をお願いシヤス」

「失敗したら、お前を太陽の下に連れて行くからな!」

「ヒィッ。それだけはご勘弁を」

「戯れ言よ。行って参る!」

「殿、後武運を!」

ゾンビは夜起きて、昼間寝るのだ。

栗原はソファーの上で、すやすや眠った。

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